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第2977号 2012年5月14日


東北発,ジェネラリスト育成プログラム始動

「みちのく総合診療医学センター」設立記念式典開催


 地方の医師不足が続くなか,家庭医・病院総合医など臓器横断的な診療を行えるジェネラリストが脚光を浴びつつある。特に東北地方は,高齢化・過疎化に加え,先の東日本大震災により医療資源に大きな打撃を受けた。地域医療復興の担い手としても,ジェネラリストに大きな期待が寄せられているのだ。

 そうした折,3月31日に「みちのく総合診療医学センター」設立記念式典がホテルメトロポリタン仙台(仙台市)にて開催され,"東北地域でジェネラリストを育てたい"という志に賛同する医療関係者が集った。


ジェネラリストになるための多様な研修コースを設定

 同センターは,宮城県民主医療機関連合会が母体となり,(1)診療所・小規模病院の家庭医療,総合病院の総合診療を担う医師育成,(2)ジェネラリストの教育・臨床研究の拠点,(3)東北地方の医療への貢献,を目的に設立された。中核を担う坂総合病院(塩釜市)は2010年,宮城県で唯一日本プライマリ・ケア連合学会の認定を受けた「宮城民医連家庭医療・総合診療後期研修プログラム」を立ち上げており,同学会の専門医資格取得をめざすコース(3年)のほか,日本救急医学会認定専門医をめざす「家庭医療に強いER研修コース」(4年),産休・育休明けの女性医師向けの「復職・再研修コース」(1年以上)も設け,多様な研修ニーズに応える。

 実際の研修では,坂総合病院を中心に中小病院や診療所とも連携し,ERから在宅まで,幅広い医療現場を体験できる()。総合診療重視型,訪問診療重視型など,希望する研修モデルを選べるほか,整形外科,精神科など専門科での研修も選択可能だ。

 研修施設の構成・研修フィールド

"みちのく"全体の医療をボトムアップする存在に

 式典では,センター長の小幡篤氏(坂総合病院)が「宮城県のみならず,被災地,ひいては"みちのく"全体のプライマリ・ケア発展の起爆剤となる存在をめざしたい」と語った。

 アドバイザーとして立ち上げからかかわり,今後も月1回「レジデントデイ」に指導を行う藤沼康樹氏(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)は「施設や自治体単位ではなく,地方全体とつながろうという設立趣旨に共感した。対話を重ねながら,東北の地域医療の底上げに結びつけてほしい」と期待を寄せた。外部講師として指導予定の伴信太郎氏(名大)も「総合診療には多様性・柔軟性・創造性が必要。組織ぐるみのサポートを受け,独自の総合診療プログラムの開拓を」と激励。

 記念講演を行った日本プライマリ・ケア連合学会理事長の前沢政次氏は,東北で求められるジェネラリスト像として「患者さんや家族の心と深く共感し,社会全体を見渡せる,先見性のある医師」を掲げ,エールを送った。

写真 左:式典会場のもよう/右:ワールドカフェでは,ざっくばらんな議論が続く

東北で求められるジェネラリスト像とは?

 第2部では,藤沼氏司会のもと「ワールド・カフェ」が開催された。

 テーマは「東北に必要なジェネラリストとはどんな医師か? そしてジェネラリストをどう育て,どう増やしたらいいのか?」。参加者は,4,5名の小グループに分かれて討議。医学生,研修医から来賓のベテラン医師までが,率直に意見を述べ合い,思いつくままに模造紙に書き込んでいく。

 参加者からは,求められているのは「高齢者を診られる」「話を聞く能力に長けた」医師であり,「過疎地域に入るほどやりがいが生まれる」「良好な医師-患者関係を築きやすい環境がある」のが東北での医療の魅力である,といった声が聞かれ「"体験留学"で東北の良さをアピールできるのでは」という提案も飛び出した。

 年齢や所属の垣根を越え,会場が一体となり"東北発のジェネラリスト育成"について考える機会となったようだ。

■第1期研修医に聞く「ここで研修する理由」

◆隅田英憲氏(写真左・2002年藤田保衛大卒)

 私は名古屋市立大学麻酔科に所属後,医局関連病院にて麻酔・集中治療を専攻し,2011年より坂総合病院救急・総合診療科に所属,現在は「みちのく総合診療医学センター」レジデントとして研修中です。

 同センターでの研修を選んだ理由は,さまざまな疾患を横断的に診療できる総合診療医の育成を目的としており,坂総合病院を中心に地域の診療所や小規模病院でも研修が可能で,地域医療にも重点を置いた研修プログラムがあるためです。プログラムでは,研修必須科以外にも選択可能な科が多く,幅広い知識や経験を得られます。将来は,診療所(クリニック)を中心とした地域医療ができる総合診療医をめざしています。

◆本郷舞依氏(2008年秋田大卒)

 私は疾患にこだわりなく何でも診ることを前提に,患者さん本人の生活背景にまでしっかり目を向けることが重要であると考えていました。そのため,それを実践している坂総合病院で初期研修を始めました。実際に研修を始めてみると,患者・家族の抱える多彩な問題を解決するために,医師,看護師,PT・OT,ソーシャルワーカーなど多職種が一丸となり対応していました。またいくつもの疾患を抱えている患者さんを診ていく上で,さまざまな診療科がそろっており,各科コンサルトしやすい雰囲気がありとてもすばらしい環境でした。

 「みちのく総合診療医学センター」では,総合病院のみならず,中小規模病院,診療所での研修もあり,なおかつ各施設では在宅診療も行っているため,それぞれの地域での特性,各施設における役割・機能の違いを体験しながら求められるニーズに合わせた医療を学ぶことが可能であり,非常に大きな魅力を感じています。この研修を通して,今後は"ジェネラルの専門医"として患者中心の医療を実践し,継続的に寄り添う診療をしていく医師になりたいと思います。