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第2939号 2011年8月1日


これからのキャンサーサバイバーシップ


 がん対策推進基本計画の策定から5年。来年度から始まる次期基本計画の策定へ向け,現在の進捗状況などの検証が進んでいる。がん対策推進基本計画を契機として注目されるようになったことの一つが,がん患者のQOL向上のための支援の在り方だ。中でも,1986年に米国で生まれた"キャンサーサバイバーシップ"という概念が,近年あらためて注目を集めている。

 7月9-10日,聖路加看護大(東京都中央区)にて開催されたLPC国際フォーラム2011「がん医療 The Next Step――自分らしく生きるためのキャンサーサバイバーシップの理解とわが国における展開」では,最新の動向を踏まえ,がん経験者とその家族が遭遇するさまざまな問題をいかに支援するか,議論された。


フォーラムのもよう
 本フォーラムのプランナーを務めた松岡順治氏(岡山大大学院)は,乳がん治療・再建センターにおける多角的な支援体制について報告した。同センターでは,外来患者の治療に当たり看護師が窓口となり,形成外科,精神腫瘍科など適切な診療科にコンサルテーションを行っている。一方,社会心理的な側面に関しては,医療者によるカウンセリングなどの機会を多く設けるほか,教育を受けたピアサポーターによる支援や患者会などを通し,長期的なコミュニケーションを継続できる体制をとっているという。

 また氏は,これまでほとんど扱われてこなかったセクシャリティの問題に関しても「不妊・不育とこころの相談室」を設け,挙児希望の患者の相談や治療に当たっていると述べた。さらに,患者の意思決定を支援するには適切で十分な情報提供が重要だと指摘。現在同院では患者およびかかりつけ医がカルテにアクセスできる仕組みを構築していると紹介した。

 石田也寸志氏(聖路加国際病院)は,小児がんサバイバーをめぐる課題について問題提起を行った。小児がんは治療の進歩に伴い5年生存率が7-8割を超えるようになってきた。しかし,成長期における化学療法や放射線療法などにより,小児がんと診断されてから20-30年を経て晩期合併症と呼ばれる慢性身体問題を抱えるサバイバーが5-7割に上るという。さらに,就労,結婚,出産などにおける社会心理的な問題も指摘されていることから,長期的なフォローアップの体制整備が急務となっている。

 しかし現状では,小児科医と成人診療科医の連携や,サバイバー自身の疾患・治療に関する認識などにおいて多くの課題が山積している。現在氏らはガイドラインの作成や長期フォローアップモデルの構築に取り組んでいるとし,参加者の関心を集めた。

 サバイバーシップにおける精神的サポートについて講演を行ったのは,米国メイヨー・クリニックで長年精神科医としてがん患者の精神的支援を行ってきた丸田俊彦氏(サイコセラピー・プロセス研究所)。氏は,サバイバーシップにおいて重要なのは,サバイバーとしての正しい生き方やそれを支援するテクニックを模索することではなく,その後の人生の"わからなさ"を耐える能力を共有することではないか,と説いた。さらに,近年"患者中心"の医療が叫ばれてきたが,今後は医療者と患者の関係性に焦点を当てた医療の在り方を見いだしていくべきと提言した。