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第2938号 2011年7月25日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


《看護ワンテーマBOOK》
退院支援実践ナビ

宇都宮 宏子 編著

《評 者》宗川 千恵子(NTT東日本関東病院 連携統括部看護長)

実践的でコンパクトな退院支援解説書

退院支援は病院全体で取り組むべき課題
 患者や家族は,病気を抱えながら,どう生きたいか,どう死にたいか,どう介護したいかを考え,共に人として家族として,成熟していく。退院支援は看護師という専門職の立場からその過程をサポートする,奥の深い看護である。

 最近では,病院に退院支援部署を設置し専属の看護師やソーシャルワーカーを配置することで診療報酬にも反映されるようになったため,ますます注目されてきており,退院支援に関連した書籍や雑誌特集も多く見受けられるようになってきた。しかし,この『退院支援実践ナビ』ほど,実践的でかつコンパクトにまとまった本を手にしたのは初めてであった。

 なぜ今,退院支援が必要になってきているのか,その社会背景からわかりやすく解説してあり,その理由や根拠が理解できるとともに,患者が生活の場に戻るときに私たち看護師が具体的に何をしたらよいのか,プロセスに沿ってわかりやすく説明してある。そのため,読み進めていくだけで自然に頭の整理もでき,自らのアクションプランも立てやすい構成になっている。

 長年,退院支援の現場で働いてきた私にとって,退院支援は退院支援部署だけが頑張ってもうまくいかないものであり,外来看護師,病棟看護師ひいては病院全体で積極的にかかわることが重要であることを痛感している。本書では,そのことが見事なまでにわかりやすく,納得いくように書かれてある。

退院支援に必要な情報をコンパクトに網羅
 退院困難事例のスクリーニングにおいては,その意義や運用上の注意,患者への聞き方まで懇切丁寧に書かれてあり,これから退院支援部署を設置しようとしている病院管理者,もしくは退院支援の経験が浅い看護師にとっても「退院支援の実践書」として大いに活用できる本であると感じた。

 頻度の高い在宅医療管理については病院での看護から生活の場に戻る在宅看護への具体的なアレンジの方法やポイント,観察項目,在宅医や訪問看護師との連携や引継ぎ事項まで丁寧に教えてくれている。また,写真やスライド,事例などがふんだんに盛り込まれているため非常にわかりやすく実用的に書かれている。

 さらに在宅療養を行う上で,利用できる介護保険制度やその他の社会保障制度についての知識や情報を得ることができるため,現場での退院支援実践において,非常に役に立つ一冊である。

 急性期病院で行われている安全かつ治療重視の看護には,退院阻害因子が数多くある。そして,急性期病院での治療は終わっても患者の人生は続いている。急性期病院の現場で働いているとどうしてもこうした「当たり前のこと」に気づきにくくなってしまう。

 本書を読んで,「患者が日常の生活へ戻るための看護の重要性」を再び気付くことができ,自身の行ってきた退院支援の振り返りにもなった。この一冊から退院支援への「やる気」と「ヒント」を多くもらうことができ,退院支援がますます好きになってしまった。

B5変・頁144 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01321-5


《看護ワンテーマBOOK》
見てできる褥瘡のラップ療法

水原 章浩 編著

《評 者》岡田 晋吾(北美原クリニック理事長)

ラップ療法の安全で正しいやり方とさまざまな褥瘡に対する応用例がわかる実践書

 わが国の褥瘡管理は日本褥瘡学会を中心に目覚ましい発展を遂げてきました。褥瘡予防・管理ガイドラインをはじめ,世界に誇れる成果が示されています。多くの病院では多職種からなる褥瘡対策チームが活動しており,その結果病院での褥瘡発生率は低下しています。

 その一方で,社会の高齢化に伴い療養場所が多様化しており,介護施設や在宅などで医療を受けている患者さんが増えてきています。そのような場所で療養生活を続けている患者さんは,低栄養や活動性の低下など褥瘡発生のリスクが高い方が多く,褥瘡の予防や早期の治療が必要です。そして褥瘡が発生した場合には病院とは違って高価なドレッシング材は手に入らず,たとえ得られたとしても長期に使用することは不可能です。

 鳥谷部俊一氏らが開発したラップ療法は,安価かつ簡便なため,患者さんや介護者にやさしい方法として主に在宅や介護施設から急速に広まりました。確かにほとんどの褥瘡はラップ療法をうまく使うことで治ってしまいます。私も開業してから今まで以上に在宅や施設で褥瘡を診るようになり,ラップ療法は患者さんにとっては経済的負担も少なく,体にもやさしい方法であり,介護者にとっても負担が少ない優れた方法であると感じるようになりました。

 2010年3月には,条件付きではありますが,ラップ療法を一つの治療法として認める初めての見解が日本褥瘡学会から出されました。本書の編著者である水原章浩氏はラップ療法が学会で認められるために大きな役割を果たされました。ラップ療法の優れた点を講演で紹介するとともに,しかしその一方で,安易なラップ療法の選択はとても危険であるということを必ず話されています。

 ラップ療法は簡便,安価なことが強調されていますが,実はラップ療法の先駆者の方々は,しっかりと創の状態を評価して対応しています。これから褥瘡の治療にラップ療法を行おうとする方は,褥瘡治療の基本について学ぶとともに,創の状態を正しく評価できる必要があります。そして患者さんや介護者の負担を減らすためには,創の状態だけでなく,患者さんの療養環境に応じた治療法を選択することも必要になってきます。

 本書はラップ療法の正しいやり方を丁寧に紹介しているだけでなく,いろいろな症例に対する応用例がカラーで紹介されていますので,初めてラップ療法を行おうとする方にはとても参考になると思います。またラップ療法をすでに実践している方でも,困難症例で悩まれたときにすぐに使える知識が書かれています。本書で学んだ知識に基づいて一例一例実践を積み重ねていくことで,褥瘡をやさしく治すという考えを実感できると思います。

B5変・頁128 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01315-4

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