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第2931号 2011年6月6日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


胸部のCT 第3版

村田 喜代史,上甲 剛,村山 貞之 編

《評 者》中田 肇(産業医大名誉教授/ネット・メディカルセンター センター長)

放射線科医,呼吸疾患診療に従事する医師必読の専門書

 1998年の池添潤平(故人),村田喜代史編集による初版以来,人気の高かった本書は,第2版に続いて7年ぶりに,当初からの編者である村田喜代史を中心に,上甲剛,村山貞之を加えて出版された最新の教科書である。執筆者は現在わが国で,臨床の現場および研究で最も活躍されている,46名のそれぞれの分野に精通した専門家で,全国的な構成となった。

 最近の急速な技術的進歩を考慮した,詳細な検査法の解説,被曝の問題,肺標本の作成法から各呼吸器疾患に続く明快で新しい知見を取り入れた記述は,実践的で価値が高い。特にわが国で研究の盛んなびまん性肺疾患の章は240頁を占め,文献も2010年までの635件が網羅されているのが大きな特徴といえる。また,肺癌の診断に定着してきたFDG-PETと進歩の目覚ましい肺機能イメージングの章を新たに加えたことも,この版の完成度を高くしている。

 本文809頁と分厚いが,カラー写真も適切に配置され,読みやすく理解を助けている。1989年に私が,高島力(故人),伊藤春海らと共に出版した「胸部CT」の教科書も広く読まれていたが,2001年の第3版で終わった。最近の技術上の進歩と疾患に対する新しい概念と分類なども含めたものが早くから望まれていたが,本書はこの期待に十分に応えるもので,私も心から歓迎している。

 振り返ってみると,1972年にHounsfieldによって開発されたCTは,放射線診断を一変させるとともに,診療の在り方にも大きな影響を及ぼした。当初は頭蓋内病変の診断を目的としたものであったが,身体のほかの部位も検査できる体部装置へと短期間で発展し,まず腹部,次いで胸部へと応用が広がっていった。現在では,呼吸器疾患の診断には不可欠な手段となっている。

 一方,この数年の画像診断機器の進歩は目覚ましく,瞬く間に64列のMDCTが多くの施設で標準となってきており,再構成も含めて膨大な画像データが容易に得られる状況である。個々の症例で観察しなければならない画像枚数も悩ましいまでに増加しており,これに費やす時間も以前とは比べものにならないまでになってきた。

 見逃しによる誤診なども無視できない問題である。現状では,この問題にいかに対処するかは個人の考えと経験に頼っているが,本書が,最新の情報を盛り込んだその豊富な内容から,このような問題にも信頼できる解決の糸口を与えることが期待される。胸部CTの読影に当たる放射線科医はもとより,呼吸疾患の診療に従事する医師全体に必読の参考書,専門書となろう。

B5・頁832 定価15,750円(税5%込)MEDSI
http://www.medsi.co.jp/

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