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第2899号 2010年10月11日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


肝胆膵高難度外科手術

日本肝胆膵外科学会高度技能医制度委員会 編

《評 者》川原田 嘉文(日本消化器外科専門医/米国外科専門医/三重大名誉教授)

肝胆膵高難度外科手術書をいかにマスターするか?

 2008年に「日本肝胆膵外科学会高度技能医」の資格とシステムが承認されました。トレーニングを受けるフェローにとって,最も大切なものはhigh volume centerでのトレーニング,専門医からの指導と本人のやる気です。しかし今,日本の外科トレーニングで最も欠けているのが,標準的な手術手技のマニュアル,つまりtext book of technics in surgeryの存在です。

 一般的に大学病院の外科やhigh volume centerの外科では,その施設独自の術式がマスターされ,それが伝承されていきます。フェローにとって大切なことは,まず解剖を頭の中に入れ,次いで一般的な高度な術式を把握することです。

 少し米国の消化器外科のトレーニングの一部を紹介します。トレーニングを受ける施設によっても異なりますが,教官の術式はまちまちで,米国のレジデントは指導を受ける教官の症例を手術させていただくのです(この形式が短期間での技術向上に非常に役立っているのです)。レジデントは教官が何を考えどの術式か,術後の抗菌薬などを,術前に把握しておかなければなりません。また術中にはいろいろなanatomyの質問がなされ,また術式に関しても,「この症例では○○大学の○○教授の方法がよいね」と尋ねられます。このとき迷ってはダメです。教官の術式を遂行しなければポイントを得られないばかりか二度と「Surgeon」としてその教官の症例にメスを入れるチャンスはありません。専門医になるには,術者として最終学年で最低限400例が必要です。しかし85-95%を本人が手術をしないと,術者としてカウントされません。外国人の私たちにとってそれは,とても大変なことで,米国のレジデントがやっているように,私も「解剖の本」と「Madden」と「Zollinger」の2冊の手術アトラスを用い,術前にその術式を読み,当日の朝食の前,6:00 amにパラパラと目を通し,また,手術記事を書くときには,その本を見ながらディクテーションしたものです。

 日本にはたくさんの術式の報告や術式が雑誌に紹介されていますが,フェローに必要な手術書は見当らないように思います。ところが最近(2010年6月),本書が肝胆膵高難度外科手術書として発刊されました。

 目次を見てみますと,I.肝胆膵の外科解剖,II.基本手技,III.偶発症への対処,IV.基本手術,V.腹腔鏡下肝膵切除の5項目から成っています。

 消化器外科のトレーニングの上級生,肝胆膵外科のフェローの先生方にこの本をぜひともお奨め致します。いや,指導医の先生方にも必要と思います。

 まず,消化器外科のシニアレジデントのとき,肝胆膵の手術のとき,一読する必要があります。フェローとして,手術をさせてもらうときには,その術式を勉強し,そして手術の当日は朝食の前に野球やゴルフの“素振り”をするように,該当する項目の術式を2-3回目を通し,手術が終わってからもその箇所を読んで,マスターできなかったところや,気が付いたところを黄色のマジックペンでチェックすることです。手術が終わってから手術所見,術式を書くときも,もう一度,目を通してポイントとこつを覚えてから書くことです。

 この手術書が登場したことは,これからのフェローにとって,そして教官にとっても,唯一のtext bookになることは言うまでもありません。

 老人の言葉を信じて2年間この本を熟読しながらトレーニングに取り組んでいただけると,あなたは立派な高度技能医になることは間違いなしです。

 最後に,リラックスしながらエンジョイしてください。

B5・頁324 定価10,500円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01042-9


腹腔鏡下胃切除術 第2版
一目でわかる術野展開とテクニック

関東腹腔鏡下胃切除研究会 編著

《評 者》笹子 三津留(兵庫医大教授・上部消化管外科学)

多様な引き出しを持つ外科医をめざす,ベテランにこそ読んでほしい改訂版

 腹腔鏡下の胃癌手術は早期胃癌に対するRCTが実施されている一方で,エビデンスもないまま,まさに“流行り”となっている。その反面,見よう見まねでやった手術で死の危機に瀕する合併症を生じたケースや早期に再発する症例など,担当医への不信から胃癌を専門として長年やってきた私のところにセカンドオピニオンを求めてやって来る患者・家族に時々遭遇するようになった。誰にとっても「初めての術式」の経験はあるわけで,どうすれば患者さんに迷惑をかけることなく新しい技量を身につけていけるかを考えることは今後ますます重要な課題と言える。

 本書は,どうすれば開腹胃癌手術に一定水準以上の技量と経験を持つ人が鏡視下の胃切除を安全かつ有効に実施できるようになるか,を念頭に書かれた書物と筆者は考えたい。胃癌手術の初心者は本書よりも,むしろ同じ医学書院の『イラストレイテッド外科手術』(第3版)を読むべきである。本書は開腹に限っていた胃癌手術を鏡視下手術に広げたい人向けである。いや,それ以上に自分のやり方では何とかそれなりの鏡視下手術を実施できる実力をつけられた先生にぜひ読んでいただきたい。

 本書は同じタイトルの初版から4年を経て出版されている。この間に著者の先生方が手術においてどれだけの工夫をして,さまざまな体験をして新たな境地に達しているかをうかがい知ることができる。キーワードは多様性である。胃癌に対する胃切除は全体の流れとともに郭清の場面場面の手技・技量・こつといったポイントが一つにつながって初めて達成される。本書は複数の著者が執筆を担当することの利点を最大限に生かし,さまざまな工夫を読むことができ,自分にあったやり方や考え方を取り入れることができる内容となっている。引き出しを多く持つ外科医はあらゆる局面に強くなれる。手術の各ポイントでは,初版に比べて鮮明度が向上した写真を4枚並べて各手技の連続的な流れを示し読者の理解を助けるなど,随所に改善された本書は専門医試験を受けるレベルに達しようとする外科医にも必須の書と思われる。

B5・頁200 定価9,450円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00998-0

関連書
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