医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第2893号 2010年08月30日

第2893号 2010年8月30日


患者にかかわる専門職が一堂に会し,対等に提案し合う

聖路加国際病院ブレストセンター・病棟ミーティングより


山内英子ブレストセンター長
 聖路加国際病院ブレストセンターでは,病棟ミーティングを週に1回行っている。ミーティングには,乳腺外科医,精神科医,小児科医,乳腺外科外来看護師,病棟看護師,薬剤師,ソーシャルワーカー,栄養士,CLS,チャプレンなど,さまざまな職種が参加する。入院患者の中には,再発や転移で完治が難しい患者も少なくない。そのため,病状だけでなく,患者の精神状態や家族環境などを把握し,かかわりを持つことが重要なのだという。そこで,同センターでは乳がん患者にかかわるすべての職種が一堂に会して患者が抱える問題について検討することで,患者を包括的に支援する体制をとっている。実際にどのような議論がなされているのか,ミーティングを取材した。

 2人の子ども(20代,中学生)を持つ女性。転移性乳がんのため入院。病状が悪化してきたことから,まずは結婚記念日に当たる次回の外出を成功させるという目標が設定された。話題の中心となったのは,中学生の子どものこと。患者は子どものことを非常に心配しており,時折涙することもあるという。乳がん患者および乳がん患者の子どものケアを担当する小児科医は,子どもは親が思いもよらない力を持っていること,兄弟の存在が困難を乗り越えるための大きな支えとなることを説明。患者の病状をよく理解している上の子どもに力を借りながら支援していくことを提案した。

 さらに,精神科医は「患者は『死んじゃいたい』とよく口にするが,これはしんどいという気持ちの表出であり,言葉通り受け取らないほうがよい」と指摘。ブレストセンター長の山内英子氏(写真左)も,患者があきらめずに頑張りたいと思っていることを明かし,患者の意向を汲みながら,治療に取り組んでいくことが確認された。

病棟ミーティングのもよう
 60代女性。乳がんが再発し,患部からの出血により入院。検査の結果,脳転移も見つかり,手足のしびれも出てきている。看護師から,自宅療養において家族のサポートが難しい現状が報告されると,ソーシャルワーカーより要介護認定の申請の提案がなされた。さらに,医師からも訪問看護の提供などを視野に入れたかかわりが必要だとの発言があり,家族と相談しながら今後の方針を検討することとなった。

 カンファレンスではこのほか,子どもは人の死をどうとらえているのか,という質問が出され,小児科医が発達段階ごとのとらえ方を説明。その上で,例えば自宅で患者を看取る場合であっても,子どもにきちんと説明しながら安心感を持たせて死に向き合わせることが重要だと述べた。

 皆が同じ目標を共有し,患者がベストの選択をできるように,それぞれの強みを生かした提案をしていく。これにより,同じ方向を向いて医療に取り組めるだけでなく,互いを尊重し,理解を深める機会にもなっているようだ。山内氏は,「患者に対する思いを皆で確認することで,さらに強くまとまっていく。チームとしての大事なコミュニケーションの場」と語る。同院ではこのほか,オンコロジーカンファレンスや外来ミーティングなどが開催されており,若手医師の育成にも役立っているという。