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第2888号 2010年7月19日


第16回日本看護診断学会開催


 第16回日本看護診断学会が,6月5-6日,黒江ゆり子大会長(岐阜県立看護大)のもと神戸国際展示場(神戸市)で開催され,全国から約1500名が参加した。今大会は,「看護診断と研究・教育・実践――あなたの求めるものをかたちにして」をテーマに,看護診断ラベルや診断指標をめぐる議論だけにとどまらず,テーマに沿った招聘講演やワークショップなどが開かれ,研究・教育・実践につながる議論が展開された。


看護診断のベースは看護そのもの

シンポジウムのもよう
 大会長講演「クロニックイルネスにおける看護診断と実践・教育・研究」で黒江氏は,慢性期の患者は孤立感や喪失感,自尊感情の低減などを抱えているため,疾患を抱えながら生きる方策を発見することが必要と指摘。そのサポートをするのが看護職であり,そのためには,的確に診断し,その診断を基盤にした実践を行い,実践を積み重ねながらケアの質を継続的に改善しなければならないことを強調した。座長の山勢博彰氏(山口大大学院)も,急性期も慢性期も生活者としての患者の援助ニーズに対応するという点では共通であり,それは看護診断のベースでもあると発言。看護診断の基盤が看護そのものであることが強調された。

これからの診断ラベル開発とアセスメントに向けて

 招聘講演の演者は,ロードアイランド大名誉教授のHesook Suzie Kim氏。1日目の「看護診断と概念開発:哲学的および方法論的考察」では,NANDA-Iの看護診断開発に関する課題や診断指標の問題点を指摘し,看護診断の定義の見直し,概念開発の方法と臨床的検証,そしてコアとなる指標の明確化を提言した。また,2日目の「疼痛アセスメントを通して考える看護アセスメント」では,前日の講演をより具体化した形で解説。疼痛が多くの場合過小評価され,治療が不十分であるという問題点から,疼痛アセスメントを含めた看護アセスメントの改善のため,「批判的熟考による考察(Critical Reflective Inquiry)」を行うことを提案。看護アセスメントはそれ以降の看護過程すべてに影響を及ぼすことから,その重要性を強調した。

電子カルテを導入後も院内教育の継続を

 シンポジウム「看護診断と電子カルテ――看護診断における電子カルテの活用と活用上の諸問題」では,近年全国的に導入が進みつつある電子カルテのメリット・デメリットがさまざまな立場から検証された。電子カルテ導入に際してはこれまで,事象を診断ラベルに当てはめることを助長する,同じような診断名しか使用しなくなる,計画と実践に食い違いが生じるなどの懸念が持たれてきた。実際に導入した施設では,看護診断への理解を高めるスタッフ教育や,アセスメント能力や対人関係スキルの向上をめざした院内研修などで懸念の払拭に努めている。「電子カルテ導入により記録に時間がかかるようになったとしたら,何かがおかしい」という発言もあり,看護診断の知識を十分に身に付けたうえで電子カルテを導入すれば,記録時間の短縮につながることが示唆された。的確な知識と技術を身に付けてはじめて看護診断を臨床現場で役立てられることから,電子カルテ導入後も引き続き院内教育を十分行う必要性が確認された。

 次回は2011年6月19-20日,シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県浦安市)で本郷久美子氏(三育学院大)のもと,「看護診断とスピリチュアルケア――全人的なアセスメント・介入能力を高めるために」をテーマに開催される。