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第2886号 2010年7月5日


レジデントのための
クリティカルケア入門セミナー

大野博司
(洛和会音羽病院ICU/CCU,感染症科,腎臓内科,総合診療科)

[第 4 回]

■ ICU/CCUでの輸液製剤の使いかた


2882号よりつづく

 今回は,クリティカルケアにおける輸液製剤の使いかたについて取り上げます。


CASE

Case1 肝硬変(Child-Pugh B)の既往があり,食道静脈瘤破裂で出血性ショックの70歳男性。赤血球製剤/新鮮凍結血漿を準備しながら,輸液負荷で対応中。

Case2 炎天下での土木作業後,熱中症でER受診した45歳男性。来院時血圧低下,頻脈。採血でCPK 2万5000 IU/L。脱水症による循環血液量減少性ショック,横紋筋融解症,急性腎不全で輸液負荷をすることに。

→それぞれの輸液には,何を用いるか?

輸液製剤の考えかた

 クリティカルケアでの輸液は,次の3つの相で使い分けるのが重要だと筆者は考えています。それは,(1)炎症・ストレス反応の極期で血管透過性亢進時の大量輸液負荷の相,(2)炎症・ストレス反応改善時などのサードスペースから水が引ける利尿期の相,(3)その後の栄養療法(経腸栄養,経静脈栄養)での輸液(中心静脈栄養,末梢静脈栄養),という一連の流れです。

 そのため,一般病棟での「維持液500 mL 2本と細胞外液500 mL 1本で1日1500 mLの輸液」,といった考えかたではなく,患者さんの全身状態から体液の状況を判断し,またバイタルサインや循環動態・呼吸状態の指標から輸液をリアルタイムで組んでいく習慣をつけることが大切です。

 そして,「細胞外液(特に血管内容量)」が多いか少ないかを意識することが最も重要となります。

輸液の大原則その1 超急性期では,1日のトータル輸液量を前もって決めてはいけない!
輸液の大原則その2 輸液負荷を行う(血管内を満たす)時期なのか,輸液維持(血管内プラトー)の時期なのか,利尿を促す(サードスペースから血管内に引き込む)時期なのか,を常に意識する!

輸液のための基礎知識

 輸液製剤の明確な理解には,まずヒトの体液分布の理解が必須となります。

総体液量(L)
男性:体重(kg)×60%,女性:体重(kg)×50%
体液は3つのパーツからなる
(1)細胞内液(intracellular fluid : ICF):総体液の66.7%
(2)細胞外液(extracellular fluid : ECF)のうち血管内(細胞外液の25%)
(3)細胞外液のうち間質(細胞外液の75%)

 この3つのパーツ間での水のやりとりが問題となりますが,水のバランスを決めるポイントは,

*細胞内液と細胞外液の間ではNaがメイン
*細胞外液の血管内と間質では膠質(主にアルブミン)がメイン

です。そのため,輸液のNa濃度が高いと細胞外液に水の多くがシフトし,アルブミン濃度が高いと水は血管内に維持されるということになります。

各体液分画での水を保持する重要な因子
細胞内液:K
細胞外液-血管内と間質:Na
細胞外液-血管内:膠質(主にアルブミン)
輸液では
アルブミン製剤(5%,20%アルブミン)→主に血管内にとどまる
Naの多い輸液(生理食塩水,乳酸加リンゲル液)
→主に細胞外(血管内と間質)にとどまる

輸液製剤・アルブミン製剤の種類

 クリティカルケアでよく使われ,絶対に理解しなければならない輸液製剤を示します(それぞれの組成は)。

 各輸液製剤の組成

晶質液(Crystaloid)
生理食塩水,乳酸加リンゲル液
その他
1/2生理食塩水,維持液(3号液),5%ブドウ糖液
膠質液(Colloid)
5%,20%アルブミン製剤

1.生理食塩水,乳酸加リンゲル液
 晶質液と呼ばれる生理食塩水,乳酸加リンゲル液は,細胞外(血管内+間質)を満たすための道具であり,水分は細胞内には移動せずすべて細胞外液に分布することがポイントです。生理食塩水は,血漿よりNa,Cl濃度が高い,血漿よりpHが低い,大量輸液で高クロール性アシドーシスになるという特徴があります。一方,乳酸加リンゲル液は,血漿中のイオン化濃度に近いKとCaを含む,生理食塩水よりNa,Cl濃度が低く血漿に近い,輸血製剤と並列させると血液製剤のクエン酸抗凝固作用を失活させる(輸血と併用禁)という特徴があります。

2.5%ブドウ糖液
 ブドウ糖液は電解質が含まれず,また輸液後は肝臓で代謝され水となるため,総体内水分量を増やすよう細胞内・細胞外へ均等に分布します。

 ただ,血漿量の増加効果は小さく,循環不全の場合,糖代謝が障害されているため乳酸増による代謝性アシドーシスを誘発する可能性があります。また頭部外傷では脳浮腫を増悪させる可能性があるため,あまりICUでの使い道はありません。一方で,3分の2は細胞内に入るため,高Na血症の改善を図る目的で使うことがあります。

3.1/2生理食塩水(+2.5%ブドウ糖)
 1/2生理食塩水は,500 mLの生理食塩水と500 mLの5%ブドウ糖液の混合物と考えると分布がわかると思います。Kが含まれず,腎機能障害で好んで使われる輸液製剤です。

4.維持液(3号液)
 3号液は,333 mLの生理食塩水と667 mLの5%ブドウ糖液の混合物と考えるとよいでしょう。3号液は維持液とも呼ばれ,その理由は一日の電解質・水分必要量が3-4本で補えるからです。循環が安定するも絶飲絶食が続くケースで使用を考慮します。

5.5%アルブミン
 アルブミン製剤は血管内を即座に満たすための道具です。血漿浸透圧に等しく血管内を狙った輸液に最適で,また輸液後数時間は投与量の約70%が血管内にとどまるため,不足している血管内ボリュームの維持(例:細胞外液負荷で間に合わない状態の出血性ショック)に効果を発揮します。その一方で高価であり,また晶質液以上の生存率の改善は示されていないため,使用時には注意が必要です(SAFE study1))。

6.20%アルブミン
 高膠質浸透圧の溶液で,急速投与により間質から血管内へ体液が移動し血漿量は投与量の3-4倍増加する作用があります。そのため5%アルブミンと違い,間質→血管内へ体液の移動をしたい場合に使用します(例:重症低アルブミン血症による循環血液量減少,間質への水分貯留による浮腫。肝硬変の腹水減少目的で,利尿薬+20%アルブミン,腹水穿刺+20%アルブミン)。

ケースを振り返って

 Case 1は,肝硬変,食道静脈瘤破裂で出血性ショックのため,晶質液(生理食塩水,乳酸加リンゲル液)ないしは膠質液(5%アルブミン)を使用します。肝硬変患者の出血性ショックの場合,多くが特発性細菌性腹膜炎および肝腎症候群を合併します。これらの患者群では,アルブミン製剤の投与で死亡率減少が示されているため,積極的な使用も選択肢になると思われます。

 Case 2は,脱水症による循環血液量減少性ショック,横紋筋融解症,急性腎不全です。脱水時は細胞外液の保持が重要となるため,晶質液による輸液負荷を選択すべきです。

Take Home Message

(1)ヒトの体液分画について理解する。
(2)各体液分画での水の保持のための因子を理解する。
(3)代表的な輸液製剤の使いかたについて理解する。

つづく

参考文献
1)Finfer S, et al. A comparison of albumin and saline for fluid resuscitation in the intensive care unit. N Engl J Med. 2004 ; 350 (22): 2247-56.
2)Choi PT, et al. Crystalloids vs. colloids in fluid resuscitation : a systematic review. Crit Care Med. 1999 ; 27 (1): 200-10.

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