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第2874号 2010年4月5日


レジデントのための
クリティカルケア入門セミナー

大野博司
(洛和会音羽病院ICU/CCU,感染症科,腎臓内科,総合診療科)

[第1回]

■ICU/CCU入室患者のアセスメント


 筆者は現在,1次から3次救急まで幅広く受け入れるERがある急性期総合病院のICU/CCUで,内科系・外科系重症患者や周術期管理などに各科専門医と連携しながら治療にあたっています。この連載を通して,クリティカルケアでの基本事項を確認するきっかけになればと思います。


 第1回目では,内科系,外科系を問わず,ICU入室患者をどのように評価したらよいかについて,一緒に考えていきたいと思います。

クリティカルケアでのルーチン“6”

 ICU/CCUでは,外科・内科を問わずルーチンに行うことがあります。それは,表1のルーチン“6”です。

表1 クリティカルケアでのルーチン“6”
(1)ストレス潰瘍予防
(2)深部静脈血栓症(DVT)予防
(3)病院関連肺炎(HAP)・人工呼吸器関連肺
炎(VAP)予防
(4)人工呼吸器ウィーニングプロトコル
(5)発熱評価:“Fever workup”
(6)早期栄養開始プロトコル

 ICU/CCUでは,48時間以上の人工呼吸器管理や,出血傾向がしばらく持続する可能性を考慮し,ストレス潰瘍予防の適応を検討します。また,DVT(深部静脈血栓症)の予防を検討し,へパリンや低分子へパリン,フォンダパリヌクス皮下注,フットポンプ,弾性ストッキング着用を選択します。

 病院関連肺炎(HAP)予防の目的で,ショック状態でない場合は常にベッドアップ30-45度以上をめざすようにします。また挿管・人工呼吸器管理中の患者では,ウィーニング・抜管までの期間・プロセスを施設ごとに統一することも重要です。

 ICUでは常に重症感染症のリスクにさらされているため,発熱評価の標準化・ルーチン化も必要となります。それには“Fever workup”として,(1)血液培養2セット,(2)尿一般・培養,(3)胸部X線(場合によっては胸部CT)を行います。重症患者ほど早期の栄養投与の重要性が指摘されており,経静脈,経腸,経口摂取のタイミングを常に考慮することが必要になります。

クリティカルケアでの一般原則

 次に,患者の全体の評価を行います。

 まず,入室時の病名・治療内容と入室後の合併症を確認し,「どうしたらICU/CCU退室可能か」という視点でその日1日の目標とアクションプランを立てます。次に,現在の投薬内容とそれが適切な投与量(腎障害,肝障害時)であるかを確認し,挿入されているルート類が適切に維持されているかチェックします。そして最後に,現在の安静度,褥瘡の有無をチェックします。このほか患者・家族と毎日コミュニケーションをとることも必須となります。

クリティカルケアのアセスメントはパーツに分けて行う

 全体の評価後はアセスメントに移ります。アセスメントは,表2の各臓器・パーツごとに「診察・身体所見」「ラボデータなど」「その他」の3つにわけて考えると,複雑なケースでもわかりやすくなります。

表2 評価すべき項目
*呼吸器
*循環器
*腎・電解質
*血液・感染症(創部含む)
*消化管・栄養
*内分泌・代謝
*神経系

 呼吸器では,COPD,人工呼吸器管理時,ARDS合併の場合は,特に入念なアセスメントが必要となります。また,気道分泌物吸引を2時間以内の間隔で施行する必要がある場合は分泌物増加と考える必要があります。人工呼吸器管理を行っている場合は,ウィーニング・抜管可能かどうかの評価を毎日行います。

呼吸器のアセスメント

診察・身体所見
□喘鳴やラ音,自発呼吸,気道分泌物吸引の頻度,気管支拡張薬必要性の評価
ラボデータなど
□SpO2,動脈血液ガス分析,胸部X線,挿管チューブの深さ,胸腔ドレーンの位置確認,人工呼吸器設定(サポートレベル,ピーク・プラトー圧,auto-PEEP)のチェック
その他のチェックポイント
□ARDS患者での1回換気量を低くした人工呼吸器管理
□意識清明でありFIO2<0.5, PEEP<5cm/H2Oの場合,ウィーニングチャレンジ
□長期呼吸器管理が必要な患者で気管切開が必要かどうかの評価
□ベッドアップ30-45度以上でのVAP予防

 循環器については,投与されている循環作動薬(昇圧薬・強心薬・血管拡張薬・抗不整脈薬)の投与量の時間経過と,侵襲的モニタリングによるリアルタイムの血行動態評価〔動脈ライン(平均動脈圧MAP),中心静脈ライン(中心静脈圧CVP),Swan-Ganzカテーテル(心拍出量CO,肺動脈圧PA,肺動脈喫入圧PCWP)〕に注意を払います。その上で,常に乳酸値や時間尿量などで組織酸素化の評価が必要です。

循環器のアセスメント

診察・身体所見
□心拍数,血圧,不整脈の有無,四肢の温かさ,CVP,末梢の浮腫,循環動態の把握(尿量,乳酸値など)
ラボデータなど
□前負荷(CVP, PCWP),後負荷,心拍出量,虚血の評価と調整
その他のチェックポイント
□循環作動薬の調整

 腎・電解質では,投与している輸液製剤の種類・時間投与量から,毎日の体重の変化,IN-OUTバランスの評価が必要になります。その上でモニタリングを行い,利尿薬などでの血管内容量コントロールが困難な場合は,急性血液浄化法の適応となるか検討します。また,造影剤検査(造影CT,血管造影など)前後には造影剤腎症の予防を考慮する必要もあります。

腎・電解質のアセスメント

診察・身体所見
□体重変化,IN-OUTバランス,不感蒸散
ラボデータなど
□BUN/Cre,電解質の評価
その他のチェックポイント
□腎排泄型の薬剤の調整
□急性血液浄化法必要時の腎臓内科コンサルト
□造影剤腎症予防のためのN-アセチルシステインおよび生理食塩水負荷,重炭酸ナトリウム負荷

 血液・感染症(創部含む)では,播種性血管内凝固など血小板低下・凝固能異常を来す疾患の評価を適宜行います。クリティカルケアでは血栓形成傾向に注意を払う必要があり,DVT予防は重要です。また採血(動脈血液ガス分析含む)などに伴う医原性の貧血も多いため,状態安定とともに採血回数を減らしていく必要があります。感染症では,Fever workupと十分量・短期間の抗菌薬投与およびグラム染色・培養結果による「de-escalationが可能か」の評価を常に行います。

血液・感染症(創部含む)のアセスメント

診察・身体所見
□体温,出血部位の確認
ラボデータなど
□血算と分画,出血時間・凝固能,培養結果と感受性の確認
その他のチェックポイント
□輸血の必要性の評価
□ビタミンK欠乏のチェック
□診察前後での手洗いの励行
□ライン刺入部およびその周囲と挿入日時の確認,抜去可能かどうかの評価
□手術創部・ドレーンからの排液量・色調
□投与している抗菌薬の種類・投与量・投与間隔,耐性菌の可能性の把握

 消化器・栄養の面からは,腸管の早期使用が最終的な状態改善には欠かせないため,常に腸管の状態を評価し,早期栄養(経腸・経口)開始可能かどうかを判断し,困難な場合や不十分な場合,経静脈栄養を考慮します。

消化管・栄養のアセスメント

診察・身体所見
□腸蠕動音,腹部膨満,下痢,便秘の評価
ラボデータなど
(なし)
その他のチェックポイント
□投与経路,投与速度,栄養剤組成を考えた栄養サポート
□人工呼吸管理および出血傾向のある患者でのストレス潰瘍予防
□腸管蠕動薬および制吐薬の使用

 内分泌・代謝では,血糖値150 mg/dL以下を目標に適宜インスリン投与を行います。

内分泌・代謝のアセスメント

診察・身体所見
(なし)
ラボデータなど
(なし)
その他のチェックポイント
□敗血症性ショックでの相対的副腎不全のチェック
□重症患者でのインスリンを使った強化血糖コントロール

 神経系では,1日1回は鎮静・鎮痛薬の持続投与を中断し,意識レベルおよび鎮痛・鎮静を評価します。また,不穏・せん妄状態の把握は必須です。

神経系のアセスメント

診察・身体所見
□神経脱落症状,意識レベル,鎮静深度,痙攣のチェック
□不穏状態・せん妄状態の把握
□昼夜逆転,睡眠時間のチェック
ラボデータなど
□頭蓋内圧のチェック
その他のチェックポイント
□鎮痛,鎮静の維持・テーパリングの把握
□1日1回は鎮静を止めて意識レベルの評価を行う
□心肺停止直後なら低体温療法を考慮

 集中治療では疾患を問わず,全身の血行動態・組織酸素化に必須の臓器からアセスメントを行います。適切な循環・呼吸なしには改善につながらないことを,まずは頭に入れましょう。

Take Home Message

(1)ルーチン“6”を常に行う。
(2)全身のアセスメントはパーツに分けて行う。
(3)忙しいクリティカルケアの現場では,体力,知力と患者を絶対によくするという情熱を大切にする。

つづく

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