医学界新聞

連載

2009.10.12

研修病院見学ルポ
~いい病院のええとこ取りをめざして~

【第6回】名古屋第二赤十字病院

水野 篤(聖路加国際病院 内科)


前回からつづく

特色

各診療科の独立性が高い。
総合内科は創立して間もないが,野口善令部長が主体となり診断学のトレーニングを行っている。
新病棟をはじめ施設が新しく,レストラン・コンビニエンスストアも広い。
オンラインのUpToDate®などの設備あり。

Profile
病床数:812床(一般810床,第一種感染病床2床)
救急車受け入れ台数:6920台/年(2008年度)
救急受け入れ人数:4万3224人/年(2008年度)

Opening
 朝7時20分,ホテルを出発し名古屋第二赤十字病院に向かう。到着後,受付で担当の参事の方を呼んでもらった。

総合内科カンファレンス
 早速,7時45分からのカンファレンスに参加。総合内科の4年目医師が,プレゼンテーションをしながら適宜1年目研修医に質問を行う。内容は,他院で一般的な「鑑別疾患を挙げなさい」というスタイルではなく,「こんな症例がありました」という設定で検査方法と治療方針の質問を行うものだ。この日は18歳の腋臭手術後の患者で,悪寒,頭痛,嘔吐,局所痛がある症例。髄膜炎を疑い,腰椎穿刺の必要性と抗菌薬の選択についてディスカッションを行う。上級医も一人参加していた。Common Diseaseはやはりディスカッションしやすいと感じた。

みんなで行う,救急の申し送り
 見学日は救急カンファレンスが行われていなかったため,総合内科カンファレンスの終了後,そのまま救急の申し送りを見学した。内容は当直と日勤との事務的連絡であるが,注目すべきは事務や薬剤部の方も一緒に行っていたことだ。もともと筆者も,聖路加国際病院の看護師と医師がともに申し送りを行うチーム医療の部分に魅力を感じていたので,これはさらによいなぁと感動した。

 申し送りの後,救急の施設を見学。感染用の隔離部屋やCPA(心肺停止)症例の動線など,十分に考えられたつくりであり興味深かった。実際の診療では,運ばれてきた患者をまず研修医中心に診察を行い,引き続き各科にコンサルトを行うというスタンスをとっているようだ。病院によっては,直接各診療科の研修医が救急にきて診察するところもあるが,本当に病院ごとにスタンスが異なることに驚かされる。

外来見学
 総合内科外来は3階にあり,2部屋で行っている。手前の部屋にスタッフが1人おり,奥の部屋で研修医が診察する。各症例とも,まず上級医と相談を行い適切な検査を選択。検査結果を踏まえて再度相談する形だ。外来診療は,ローテーションする研修医の人数が多くなり枠が足りなくなったので,2009年度から総合内科ローテート中の2年目研修医のみ行っているということである。3年目では2か月の救急のローテーションが必修となるなど,2009年度以降は研修プログラムに変更箇所があるので注意していただきたい。他科からのコンサルトケースも研修医が一度診察し同様の手順をとる。電子カルテではなく,オーダーのみパソコンで行い,コンサルトも手書きである。ただし,パソコンはインターネットに接続され,UpToDate®にも接続でき勉強する環境には恵まれている。ただし,電子ジャーナルの契約数はかなり少ないとのこと(MD consultは契約している)。

 研修使用ホームページでは,研修医教育委員会がカンファレンス予定表を作成しており,すべてではないがカンファレンスのPowerpointがリンクされ素晴らしいと感じた。研修医教育委員会がPowerpointまで管理しているからこそできるものだろう。研修医任せで行っている場合,どうも毎年方法が変わり不安定さがあるように感じる。

病院内見学
 引き続き,たくさんの質問をしながら,透析室やICU,外来化学療法室などを見学した。どこもきれいで清掃が行き届いており,廊下も広い。その後,昼になり食堂に行く。食事はかなりおいしかった。ここも前回のトヨタ記念病院と同様に後払い。名古屋式であろうか,驚きである(他の病院でも後払いということがあれば教えてください,情報求む!!)。食事ついでに院内のコンビニエンスストアも見学したが驚いた。ショッピングモールのオープンスペースのようになっており,おにぎりやイタリアン,弁当など種類も豊富にある。どないにアメニティがええねん!! とつっこみたくなる印象であった。数ある病院のなかでもかなり良いほうであろう。個人的にこのようなアメニティにかなり興味があるので,気分は盛り上がった。

 医局も見学させていただいた。管理棟にあるため少し歩くが,問題になる距離ではない。机,ロッカーは各自に充てがわれ,LANも整備されている。各部屋に病院のパソコンがあり,プリンターに接続されている。コピー機もあり,環境はよい。

総合内科ラウンド
 13時からは昼の総合内科ラウンドを見学。ラウンドはまず入院症例とコンサルトケースのReviewから始まった。たまたま総合内科の研修医のローテーションがなく,午後出張の方もいたため,シニアレジデントと『誰も教えてくれなかった診断学』(医学書院)の共著者である野口善令部長,それと筆者の3人で行うこととなった。プレゼンテーションの後,プロブレムを提示。プレゼンでは写真を多く紹介し,それを供覧するのが印象的であった。なお,今回は初期研修医が参加していなかったため,教育の状況はわからなかった。

 この日の回診は,胸腺腫の手術の既往のある70代の難治性の大球性貧血の患者で,血液内科に入院後,右肩関節痛,膝関節痛が強いためいったん総合内科に転科し,精査予定という症例であった。総合内科への転科のアクセスはかなり良さそうである。総合診療科の在り方は,いろいろな病院で試行錯誤している部分だが,名古屋第二赤十字病院ではアクセスの良さや教育を特色として運営しているようだ。

 そのほか,週1回木曜日にprofile→subjective→objective→problemの順で鑑別疾患を考えるGIMカンファレンスを行うということであるが,その際の教育用のPowerpointは野口部長自ら作成されているという。

インシデントシミュレーション
 図書館やその他の病院施設の見学を行った後,救急の見学。救急の研修医も夕方には当直への申し送りが可能であり,夜間に病棟から呼ばれることはないとのことで,この点でも研修医はQOLを保てているようだ。夕方の救急の申し送りの際に,院長の石川清先生からの提案でインシデントのシミュレーションを見学させていただいた。これは良かった。看護師が,急変時における対応のシミュレーションを約1か月練習し披露するものだ。医師の参加が少ないのは残念であったが,繰り返し練習することで実際の対応にかなり役立てることができるという研修であった。研修するための土台はある環境だ。また,総合内科が今後どのように進化していくかに興味を持った。

聖路加国際病院との共通点
 救急も内科も満遍なく勉強でき,各科もある程度独立している状況は聖路加国際病院とかなり似ている。病院自体がきれいに管理されていることも,個人的な印象ではあるが似ているように感じた。

 総合内科の診断フローチャート

Point!
食堂などのアメニティは十分,QOLも保たれている。勉強しようと思えば,そのための症例も十分ある。総合内科が確立している部分もポイントだ。

つづく

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