医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第2850号 2009年10月12日

第2850号 2009年10月12日


知って上達! アレルギー

第7回
喘息のカンタン評価法

森本佳和(医療法人和光会アレルギー診療部)


前回からつづく

 臨床において出合うアレルギーと免疫学について,最近の知見や雑学を交えながらわかりやすく解説します。アレルギーに興味を持って,ついでに(?)アレルギーの診療スキルをアップさせていただければこれに勝るものはありません。


 これまで3回にわたって,鼻炎の診療について考えさせていただきましたが,今回から喘息について,特にその長期管理を中心として書かせていただきます。診療する上では,鼻炎と喘息は互いに無視できない存在ということからお話を始めましょう。

One Airway, One Disease

 アレルギー性鼻炎と喘息はともに,アレルギーに起因する気道の疾患であるという概念が強調されつつあります。鼻も肺も気道であり,鼻粘膜と気管支粘膜のアレルギー性の炎症がそれぞれ鼻炎,喘息として現れます。つまり,アレルギー性鼻炎とアレルギー性気管支喘息は似た病態がベースになって生じていると考えられ,“One Airway, One Disease”ともいわれます。

 この考え方は喘息の診療アプローチにおいて大変役に立ちます。例えば,花粉へのアレルギー反応が鼻粘膜で起こればアレルギー性鼻炎,気管支粘膜で起こればアレルギー性喘息と考えます。すると,アレルギー性鼻炎をみれば喘息を,喘息をみればアレルギー性鼻炎の存在を疑うことも自然に行えるでしょう。

 また,鼻炎を治療することで喘息のコントロールが良くなるという報告も多くなってきており,喘息治療においても鼻炎治療を考えることは重要です。アレルギーの臨床において,この“One Airway, One Disease”の考え方を頭に置いていただきたく思います。そうすることで,アレルギー性鼻炎の診療技術が上達すれば,自然と喘息の診療技術も上達しますし,その逆もまたしかりです。

アレルギーの有無と誘発因子を考える

 前回までに,鼻炎の把握法としてクロス(十字線)を書いて整理する方法をご紹介しました。診療ポイントの基本的な部分を共通にして,喘息においても同様の方法を用います。

 まず,上段は原因についての情報です。鼻炎のときと同じように,左上にアレルギー性かどうかを記入します。ただ,喘息自体がアレルギー性か非アレルギー性かの判定は難しいため,ほかに「アレルギー性鼻炎がある」「アトピー性皮膚炎がある」「ネコに触れたとたんに喘息症状が出る」といった病歴があれば,「アレルギーあり」としておきましょう。

 右上には誘発因子,つまり悪くなる季節や悪化の原因を記入します。アレルギー性鼻炎は季節との関連性が深いですが,喘息の場合,季節を特定することが難しい場合もよくあります。ここは季節に限らず,例えば「運動」「ネコ」など悪化する因子を入れるといいでしょう。また,皮膚検査などで陽性を示した結果があれば,それらを入れてもOKです。

 つまり,上段の「左側/右側」は,「アレルギーあり/春」「アレルギーなし/運動」「アレルギーあり/ネコ」「アレルギーあり/運動,ダニ,スギ」などとなります(図)。

 喘息診療における情報整理の仕方
上段は原因についての,下段は重症度についての情報になります。

症状の頻度と気道閉塞の有無をとらえる

 下段には,重症度の情報を入れます。日本でよく使われている喘息の一般的なガイドライン(註12)では,重症度(発作型)は,ステップ1-4で分類されます。ステップ1は軽症間欠型,ステップ2は軽症持続型,ステップ3は中等症持続型,ステップ4は重症持続型,と表現されます。間欠型はステップ1だけで,持続型であればステップ2-4になります。さまざまな条件でこれらのステップが決められるので,詳細に勉強していただくのが理想的なのですが,“カンタン”をよしとする本稿では頻度に着目しましょう。

 頻度は,息苦しい,咳が出るなどの症状や,メプチン®,サルタノール®などの吸入型短時間作用性β2刺激薬の使用頻度などから考えます。この喘息症状の頻度は,喘息の重症度判定においては最も重要なポイントです。ガイドラインの分類では,症状頻度だけでいえば,「週1回未満」症状があるならステップ1,「週1回以上毎日未満」症状があるならステップ2,「毎日」症状があるならステップ3,その中でも悪いのがステップ4です。ここは簡素にして,「たまに(週1回未満)-毎週(週1回以上毎日未満)-毎日」にしておきましょう。もちろん喘息診療に慣れている方は,ガイドラインに則してステップ表記で記入すれば完璧です。

 右下には,診療した時点で気道閉塞があるかどうかを記入しておきましょう。鼻炎のときは鼻づまりの有無に注目しました。喘息では,気管支の閉塞性を肺機能検査,ピークフローで測れると理想的ですが(ちなみに肺機能検査で%FEV1が60%未満,あるいはピークフローが自己最高値の60%未満なら自動的にステップ4です),なければ聴診器でWheezingつまり喘鳴があるかどうかをとってください。記入法は,「Wheezeあり」「Wheezeなし」でいいでしょう。

 以上のように,上段から誘発因子の回避,下段から重症度の把握が可能となり,治療方針を考える上での情報が自然と整理されます。今回は,この表記法でいくつかの例を挙げてみました(図)。どのような喘息かをわかりやすく考えることができると思います。慣れれば実際に書く必要はないかもしれませんが,この方法であれば,たとえ数分間という短い診療時間でもポイントをついて喘息を考えられると思います。ぜひ,お試しください。

つづく

註1)日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2006.協和企画,2006.
註2)西間三馨監修:アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2007.協和企画,2007. 連載一覧