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第2787号 2008年6月30日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


USスクリーニング

竹原 靖明 監修・編集
熊田 卓,桑島 章,竹内 和男,田中 幸子,遠田 栄一,安田 秀光 編

《評 者》木村 邦夫(千葉社会保険病院健康管理センター長・消化器病学)

マクロ病理から診断まで必要な要素を網羅した名著

 US(超音波法)によるスクリーニング検査に携わる者に求められるのは,診療のニーズに十分に応える診断と情報を提供できる技術と知識である。知識には,USで診断可能な個々の疾患の概念と,画像の成り立ちをもたらすマクロ病理や局所解剖,さらには疾患の診断基準などの要素が含まれよう。しかも,USで診断可能な疾患は多岐にわたり,多彩であり,疾患に付随する所見まで含めるとあまりにも広範である。それゆえ,1冊でそれらの全要素を満たすスクリーニング書の出版が待たれた。

 今回,出版された『USスクリーニング』はまさにそれらの要素を満たす本と言えよう。今後は,本書と同じ竹原靖明氏が監修されマニュアル本として広く読まれている『日本医師会生涯教育シリーズ 腹部エコーのABC』とともに,この検査に携わる人々はもとより,診療に関与する多くの人々に読まれるに違いない。

 本書を監修された竹原靖明氏は広く知られているとおり,今日のリアルタイム装置による超音波の開発に貢献されたのみならず,ご研究の傍ら超音波検診の普及に邁進され,技師や看護師,医師の教育・訓練に率先して取り組んで来られ,USを「第二の聴診器」と言われるまでに普及させた方である。その妥協を許さない真摯な歩みの過程で,「スクリーニング」に求められる諸要素を深く追求してこられたことが,本書の出版を可能にしたことは言うまでもない。さらに,各分野で第一人者であられる編集者と執筆陣が,監修者と同じ考えで各項を意味深く,しかも簡潔にまとめ上げている。

 まず,冒頭のカラー刷り病理マクロ像は本書の特徴の1つである。明瞭なマクロ像は超音波像の成り立ちの理解に大きく寄与する。これまでのスクリーニング本に見られない配慮である。さらに,第一章の「けんしん(健診・検診)の現状」は読者にスクリーニングとしてのUSに対する認識と熱意を刺激する資料となっている。とりわけ,USスクリーニングの対象臓器に関する諸統計は本書のめざす「がんの早期発見・診断」への道標である。次に基礎的な項の中で目を引くのは「超音波所見の書き方」である。実際の症例をサンプルとし,「けんしん」の結果が診療側に正確に伝達され,かつ還元されることに重きを置いた得難い内容となっている。

 さて,本論の位置にあるのは「対象となる疾患の病態(概念)と超音波画像」である。まずスクリーニング対象となるすべての領域を網羅してあることが読者にとってとてもありがたい。消化器実質臓器のほか,泌尿器,骨盤臓器(男性,女性),消化管,体腔液,腹部リンパ節,体表臓器(乳腺,頸部),血管系(頸部,腹部)が見事にB5判400頁のこの本に収められている。そして,各論は疾患概念からスタートして超音波所見に連なるスタイルを貫いている。疾患概念は極めて簡明な記述であり,コメディカルや研修医の読者には大きな助けとなるに違いない。超音波所見は同じ写真を再掲して解説するスタイルのため容易に理解が得られる。

 最後の章には疾患別の事後指導基準が扱われている。「けんしん」や人間ドックの関係者にとって,各種の診断や所見をどのように事後指導するのかは極めて重要である。なお,忘れてならないもう1つの特徴は,巻末の参考資料の中に対象臓器範囲のリンパ節解剖が付されていることである。検査の現場で頻繁に問題となるその局所解剖がスクリーナーにとってかゆいところに手が届く感を与える資料となっており,報告を受ける診療側にとっては治療に直結する貴重な資料となる。

 こうして,病理マクロから始まり,「けんしん」から診療に至る徹底したコンセプトによって成されたこの名著が,ともすると超音波を離れてしまいそうな多忙な若い研修医・臨床医たちはもとより,診療所や健診施設の医師,またスクリーナーである技師や看護師たちの必携の書となることを予感するとともに,確信を込めてそうお勧めしたい。

B5・頁472 定価7,350円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00433-6


標準整形外科学 第10版

国分 正一,鳥巣 岳彦 監修
中村 利孝,松野 丈夫,内田 淳正 編

《評 者》山内 裕雄(順大名誉教授・整形外科学)

ほどよく熟成された美酒

 1979年に上梓された本書もなんと30年目を迎え,第10版となった。書評を依頼され,第9版も横に置きながら一覧し,まさに熟成された美酒との観を深くした。どんな酒でも年を経さえすれば良くなるわけではない。最初に良質な酒があり,それを優れた環境下で手間暇かけて育まなくてはならない。本書は幸いにもそのような条件に恵まれてきたようだ。

 初版はよくできてはいたが,分担執筆にありがちなレベル設定の不均衡や項目の重複・脱落などがあり,横文字のミススペルも気になった。3年後に出た第2版の書評を書く機会があったが,これらの欠点は見事に改善され,薦められる教科書に変貌したと記した。そのころ,私は他社からの整形外科学教科書に分担執筆しており,学生に推薦してはいたが,本書第2版を見て一本取られたなと思い,潔くそれを学生への推薦図書としたものである。それは私の後任にも引き継がれ,現在に到っているようだ。

 その後,編集者は移り変わり,特に監修者が交代するたびにかなりの改変が行われ,めまぐるしい学問の進歩によく順応してきた。その間に医学教育にも大幅な変革が実施され,講義よりもbedside learningに重点が置かれるようになった。いわば覚えるよりも考えることが重視された。本書はそれに対応し,第8版からは疾患総論以下の各項目に「診療の手順」が設けられ,それをまとめたポケット版の小冊子が付録として添付された。これはその後も第9版では「整形外科臨床実習の手引き」,第10版では図を主とした「運動器疾患の診察のポイント」となって継続されている。これは監修者の一人として中心的な役割を演じられた寺山和雄信州大学名誉教授のアイデアによるもので,彼の熱意がいまだにこういう形で受け継がれ,本書の特色の一つとなっているのは喜ばしい。

 もう少し詳細に第10版を見てみよう。本文頁數は第9版とほぼ同じで807頁という大冊である。第7編として「スポーツと整形外科」が新設され,前にもあったスポーツ障害がここに移され,新たに障害者スポーツが加えられた。執筆者が交代となった項目がいくつかあり,そこでは以前からの図・写真がほぼ踏襲され,minor revisionのようにも見えるが,よく読むと新執筆者の特色が出ているところもあって面白い。こうして次々と新しい血が加えられているところに,単なる「寝かし」ではないエイジングの魅力がある。第10版では文献が最初に日本語,次いで外国語(すべて英語)のものに二分され見やすくなった。しかしその選択にはいささかムラがあり,対象読者層と用いられる状況とを頭に描き,監修者が統一を図られるといいなと思う。

 外国人名のカタカナ表記は,「ギョエテとは俺のことかとゲーテいい」といわれるように至難である。第9版の序によると,これには畏友小林晶氏らの助言を得たとのことであるが,Phalenがフェイルン・ファーレン,Collesがコレス・コリーズと併記されているのは学生には紛らわしく,どちらかに統一されたい。前版ではKlippel-Feilがクリッペルーフェイユとなっていたが,今回は一般的なクリッペルーファイルとされているところに苦心のほどがうかがえる。なお,私の師匠の一人であるBlount先生がブラントとなっているが,ブラウントのほうが近いと思う。

 最後にレベル設定の問題がある。本書は学生・研修医・コメディカルを対象としているようだが,学生には情報量が多すぎる。最適なのは初期研修医レベルではなかろうか。せっかく全頁カラー印刷なので,医学生にはこれは必修,これは参考という「重み付け」を,色を変えるなり,なんらかの方法で指示できないものか。

 とにかく歴史の重みに耐えて成長し,ほどよく熟成された整形外科学教科書として推薦するのにやぶさかでない美酒,いや好著である。

B5・頁956 定価9,660円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00453-4


問題解決型救急初期検査

田中 和豊 著

《評 者》堀之内 秀仁(聖路加国際病院・呼吸器内科)

熟練指導医に直接指導を受けているような「納得感」

 数ある検査に関する類書をイメージして本書を手に取った読者は,ちょっとした肩すかしを食らうことになる。

 それは,ページを開き,目次を見たときにすでに明らかである。そこには,従来の書籍にありがちな「血算、生化学検査、凝固検査、内分泌代謝検査…」といったありきたりな項目ではなく,患者が訴える主観的データ“以外の”すべての情報に挑むために必要な項目が並んでいる。本書のようなハンディな書籍で,なおかつ「検査」と銘打っていながら,バイタルサインや身体所見に関する記載にこんなにもページを割いたものがかつてあっただろうか?

 著者も巻頭で触れているとおり,本書は『問題解決型救急初期診療』と密接に関係し連環している。『問題解決型救急初期診療』が縦糸であれば,本書はその横糸といえる位置付けとなり,逆に本書から入れば,『問題解決型救急初期診療』が横糸のようにも思える。それほど,本書は「単なる検査書籍」ではない,臨床の書なのである。

 個々の項目に目を向ければ,検査値に基づく鑑別や診断分類が数多く網羅されているのは当然として,それらの間を結ぶ著者のコメントが,そこにある膨大な文字列を生きた情報として読者の思考過程に流し込んでくれる。まさに『問題解決型救急初期診療』に最初に出会ったときに得た感覚,すなわち熟練した指導医に直接指導を受けているような「納得感」だ。

 本書の特徴として評価できる点はほかにもある,それは参考文献の多さである。検査書籍では,ごく基礎的な参考文献が挙がることが多いなか,本書ではむしろそのような参考文献は少なく,最近のKey Paperをふんだんに紹介している。敗血症やARDSの項目などはその最たるもので,本文中にこれまでの研究の流れを盛り込み,「なぜ今この検査所見,治療が注目されているか」を紐解いてくれる。

 また,ちょっと粋に感じる部分としては,各章のなかにある,他の項目とはやや独立した「豆知識」的な項目である(例:「一発熱」,「ショック・リバー」,「あきみちゃんくろし」)。筆者自身の言葉で説明される,臨床のちょっとした工夫であったり,知っていることで診療に厚みが増すポイントだったりする。

 検査の意味と位置付けを生き生きと著した,ただそれだけでなく,検査の背後にある日常診療の躍動を垣間見せてくれる一冊である。後輩に薦められる良書がまた一冊増えたことを歓迎したい。

B6変・頁544 定価5,040円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00463-3


内科診断学 第2版 [CD-ROM付]

福井 次矢,奈良 信雄 編

《評 者》北原 光夫(慶大病院・病院経営業務担当執行役員)

医学の道を歩むうえで必読の書

 40数年前に初めて,診断学の本を手にしたときにはいよいよ臨床教育が始まるのだという戦慄を覚えたことを思い出す。

 医学のどの分野にゆくにせよ,医師になるための通過点の一つが内科診断学である。したがって,臨場感にあふれる内容であり,合理的に理解されるべき必要がある。本書の特色に挙げられているように,病態生理学的メカニズムを理解することにより,丸暗記からの脱却を図っている。このような努力を著者らが払うことにより,内科診断学へ入りやすくしている。

 目次を見ると,初版に比較してページ数が増加しており,第2版の充実ぶりがうかがわれる。まず,症候編を見ると,一つのフォーマットによって構成されていて,解説が明解になっている。各症候ごとに疾患の頻度と臨床的重要度が挙げられていることは,症候を経験する医師にとってはとても有意義である。

 また,診断の進め方として,フローチャートが添えられており,一層診断学の本としての役割を果たしている。症候編に対しては約490ページが費やされていて,内科診断学の充実性を意味している。

 疾患編のセクションも同様に400ページ以上が割り当てられている。臓器系統別に各章が分けられており,診断学を学ぶ者にとっては各疾患のエッセンスを把握できる便利さが備わっている。しかし,これらの中には,わが国では遭遇することの少ない疾患,例えばウイルソン病,ヘモクロマトーシス,異常ヘモグロビン症,サラセミアなどが含まれているが,これらを内科診断学の性格上,含めるのか,今後の編集方針によるだろう。

 本診断学の最初の2章は診断の考え方と診断の進め方となっているが,まさにここを十分に理解することが医師としてのトレーニングの第一歩である。このセクションも図が十分に取り入れられており,理解しやすさに配慮がなされている。さらに聴診音を習得するために,CDを添えてあるのは大変うれしい。最後に主要検査の基準値と汎用される略語一覧が載せられてあるのも便利である。

 医師としての道を進む者にとっては,一回は読むべき成書の中の一冊である。

B5・頁1,328 定価9,975円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00287-5

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