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第2774号 2008年3月24日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


看護実践に役立つ放射線の基礎知識
患者と自分をまもる15章

草間 朋子 編

《評 者》明石 真言(放医研緊急被ばく医療研究センター長)

親しみがわく構成で伝える安全な放射線利用の知識

 現代の医療を放射線抜きで語ることはできない。また「患者が受ける線量(医療被ばく線量)に対して,上限値が決められていない」。つまり,医療では放射線が“正義の味方”として利用されている以上,使用する医療スタッフの放射線被ばくに関する責任は大きい。ところが医師や看護師・保健師で,学生時代に放射線の影響に関してある程度系統的な教育を受けた覚えがある人はほとんどいないような気がする。

 医療以外にも「身の回りの製品・技術」「研究用」「工業領域」など広く放射線は利用されている。評者は被ばく医療に関わっており,看護師等の教育の場で「あなたが働いている医療施設に,被ばくもしくは汚染された患者が来たらどうしますか?」という質問をよくする。本書は医療現場で働く看護師のみならず,医師にも放射線被ばくに関する知識を与えてくれる。もちろん私の質問に答えるのに十分なことは言うまでもない。つまり本来学校で習うべき基本的なことを学べるのである。

 「自然界同様われわれの体内にも,γ線を出す40Kがあること」等身近な例もあり,さらに図表の多さから親しみがわく構成になっている。医療施設で働く看護師として必要な知識も,患者への適切なアドバイスに留まらない。

 放射線の胎児および遺伝的影響,女性の放射線作業従事者の放射線防護,医療現場での放射線防護の実際など,看護職自身にも関わるかもしれない問題にも情報が与えられる。ポータブルX線装置による撮影時,「照射野の中心から2mも離れれば,線量は無視できるほど小さい」も重要な知識であるし,また核医学治療を受ける患者のケアに際して「医療従事者はX線診療の際に使用する防護エプロンなどは使用しない」のは,γ線には防護エプロンの防護効果は小さく「防護三原則」に則りケアを行うべきだからだ,ももっともである。

 医療における放射線利用は,診療科を問わない。医療器材の殺菌,輸血用血液の照射なども含めればさらに拡がる。この本を読めばすぐにわかるのだが,放射性物質は核医学の検査や治療で体内に投与されれば,法令(医療法)上の規制はなくなる。核医学での治療は別にして極端なことを言えば,核医学の検査後に駅のトイレに行ってもいいことになる。レベルから言えば実際は問題になることはないが,どうしてそうなのか等を理解することもできる。放射線は目に見えず臭いも色もない。被ばくしたかどうかもわからない。自然界にも,生活の場にも多くある放射線とその影響を,正しく理解し正しく怖がる。そして実際の医療現場で放射線防護を行うことが,安全な放射線利用を支える。そういう意味では,「刊行にあたって」にも書かれているが,医師をはじめとする医療従事者以外に放射線を利用する研究者にも必要な本である。

A5・頁184 定価2,520円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00321-6


地域診断のすすめ方
根拠に基づく生活習慣病対策と評価 第2版

水嶋 春朔 著

《評 者》津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター・副センター長)

基本を押さえ住民に喜ばれる保健活動を行うために

 2008年度からスタートする特定健診等基本指針が固まり,本格実施に向けて,準備が加速しつつあります。今回の制度改革では,メタボリックシンドロームに着目して保健指導を重点的に行うことのほか,医療保険者が特定健診・保健指導の実施主体となること,保健事業の客観的評価方法が定められたこと,標準化された健診データが電子的に集約されて健康課題分析のためのデータが得られやすくなることなど,生活習慣病予防活動のしくみの抜本的な改革が予定されています。これからの生活習慣病対策は,従来にも増して,健康課題を適正に分析し,最適なストラテジー(戦略)を組み合わせて効率的な実施計画を立て,熱意をもって実施に移し,標準化された客観的な評価を行うという,まさに「根拠に基づく生活習慣病対策」が求められているのです。

 これまで何となく前例踏襲の保健活動をしてきた,これから新たに保健事業の計画または評価をしなければならない立場になった,地域診断はしているけれど実施計画にどのように反映させてよいかわからない,健康日本21と特定保健指導の関係が整理できなくて悩んでいる……。こんなときは,まず基本に立ち返って,生活習慣病対策の全体像から考えてみることが大切です。

 そんなとき,本書が役立ちます。著者の水嶋春朔先生は,現在,国立保健医療科学院人材育成部部長の要職にあり,全国の行政関係者や保健指導者,研究者に向けた研修等で広く活躍されています。本書は2000年に第1版が発行されてから多くの読者に親しまれ,地域保健の向上に寄与してきた名著ですが,今回,健康日本21中間評価や医療制度改革を含めた最近の保健政策について加筆,詳述され,第2版として発刊されました。水嶋先生は本書の中で,特定健診・保健指導の実施計画を作る前に,地域診断を正しい方法論で行い対象集団の特性を把握すること,ポピュレーションストラテジーとハイリスクストラテジーを総合的に組み合わせ,生活習慣病対策全体をしっかり概観したうえで,具体的な計画づくりに取り掛かることの重要性を強調されています。

 また,本書は読者に対する配慮が随所に見られる本でもあります。見開き2頁で1テーマ完結,一読後はその都度,辞書代わりに検索でき,大変使いやすい形態です。現場でよく遭遇する事例に即した記述が多くみられますが,これは現場の保健指導者の悩みや弱みを知り尽くした水嶋先生ならではです。保健指導者に対する視点はやさしく,ユーモアあふれる先生の人柄がにじみ出ている語り口。統計が苦手という読者のために集計解析の進め方の手ほどきもされており,かゆいところに手が届く感があります。

 本格実施までの時間は短いかもしれませんが,それだからこそ,本書を座右に置いて地域診断とストラテジーの基本をきちんと押さえ,住民に喜ばれる保健活動を行いたいものです。表層的にマニュアルどおり行えば結果が出るというものではないのですから。

A5・頁192 定価2,835円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00365-0

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