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第2757号 2007年11月19日


培養真皮を用いた皮膚再生医療の治療効果

第35回日本救急医学会の話題から


 第35回日本救急医学会が10月16-18日,杉本壽会長(阪大)のもとリーガロイヤルホテル大阪(大阪市)にて開催された。本紙では黒柳能光氏(北里大)による教育講演「培養真皮を用いた皮膚再生医療の治療効果」を紹介する。


 全層皮膚欠損創の治療においては自家分層皮膚移植が望ましいとされるが,広範囲の重度熱傷患者や高齢者などでそれが難しい場合,培養皮膚代替物を用いることが多い。

創傷治癒にも,移植床形成にも

 黒柳氏は1994年から同大人工皮膚研究開発センターで,他人の線維芽細胞を用いた同種培養真皮の開発を開始。創傷治癒促進における同種培養真皮の有効性を示した。同種培養真皮は,他人の線維芽細胞を含ませたコラーゲンスポンジとヒアルロン酸スポンジのマトリックスから成り,冷凍保存が可能。解凍させて創傷部位に適応すると,1週間以内に分子レベルに変化し,創傷部が治癒すると他人の細胞は徐々に拒絶される。また,創傷部の治癒のみならず移植床形成にも有効だという。

 ポイントは,コラーゲンスポンジに組み込まれた線維芽細胞が,血管新生を強力に促進するVGEFやbFGF,HGFなどのサイトカインを産生すると同時に,マトリックスの素材となる生体材料自体にも創傷治癒促進効果がある点だ。具体的にはヒアルロン酸分子が損傷部位における細胞移動を促進し,コラーゲン分子が線維芽細胞に対する走化性因子としての働きを持つ。

 この方法は,細胞成長因子を薬のように用いる究極のDDS(Drug delivery system)であると氏は語る。また,創傷部には蛋白質分解酵素が非常に多く,細胞成長因子を局所投与してもすぐに分解されてしまうので,毎日投与しなければならないが,線維芽細胞は拒絶が弱く,さまざまな細胞成長因子を放出するというメリットもある。

自身からの培養が困難な際には同種培養真皮を

 培養皮膚代替物には自身の細胞を用いる「自家」と他人の細胞を用いる「同種」がある。これらの適応については,細胞培養には時間がかかるため,緊急性を要する重症熱傷や頻繁な適応を要する高齢者の難治性皮膚潰瘍など,自身からの細胞培養が困難な場合は,冷凍保存されている同種培養真皮を,待機的手術ではあらかじめ皮膚採取して自分の線維芽細胞で培養真皮をつくることが理想的であると述べた。

 厚労省のミレニアムプロジェクトにおいては同センターで「スキンバンク」システムをつくり,5年間で4700枚を全国の大学病院に供給したが,その皮膚はたった5人の皮膚小片からできたものだという。

 氏は,自家培養真皮の製造が認可されたのも日本は他国に比べて遅かったと指摘。今後他人の細胞を用いた同種培養真皮を普及させていく必要があると強調した。