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第2747号 2007年9月10日


間口を広くとり,深みを失うことなく

松村理司(洛和会音羽病院長)


 諏訪中央病院での「教育回診」の試みについて,年長医としての感想をいくつか述べてみたい。

 第一は,この種の「教育回診」の通奏低音ともいうべき「民主的な議論に基づく科学的なチーム医療」が,日本ではまだまだ発展途上でしかないことの確認である。諏訪中央病院の歴代の院長である故今井澄先生や鎌田實先生は,地域医療の名にし負う牽引車でおられたが,卒後臨床教育の具体的方法論に関しては,同院といえどもなお改善の余地があることが伺える。「教育回診」の原形は,19世紀末のジョンズ・ホプキンス大学でのウイリアム・オスラーの取り組みに遡るので,約100年に及ぶ日米の差と考えざるを得ない。

 第二は,「教育回診」によって鍛えられた初期・後期研修医は,大学医局による専門医の引き上げに悩む地域中規模病院において,貴重な労働力となるということである。しかも,こういった病院に入院する多数の高齢患者は複数の疾病を持つから,専門性に縛られない若手医師の幅広い臨床力は,福音であるに違いない。新医師臨床研修制度におけるプライマリケア重視とは,本来このあたりの喜びと絡む。昨今かまびすしい「緊急医師確保」も,この視点をはずしているようでは心もとない。

 第三は,後期研修医は,現状よりも「間口を広くとり,かといって深みを失うことなく」地域医療の訓練に励むべきことである。なおかなり前を歩む米国の研修制度と比べると,日本の後期研修は間口が狭すぎて,その後の医師としての大成を阻んでいる。その場合の教育上のリーダーシップは,総合診療が果たすべきである。教育にはロール・モデルやメンターが要るが,川島,植西,そして佐藤先生たちこそが現場のメンターなのだ。専門医の「立ち去り型サボタージュ」を防ぐのは,後期研修医や若手医師の「総合診療的マインド」に満ちた患者への献身である。