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第2728号 2007年4月16日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


神経救急・集中治療ハンドブック
Critical Care Neurology

篠原 幸人 監修
永山 正雄,濱田 潤一 編

《評 者》田代 邦雄(北海道医療大教授・心理科学)

神経救急・集中治療を取り上げた本邦初の名著誕生

 神経学(Neurology)の臨床としては,本邦では神経内科が診療科・講座の代名詞として定着している。しかし神経疾患診療においては急性期から慢性期まで幅広く神経疾患に対応していくことは必須のことであり,神経内科,脳神経外科,一般内科,救急・集中治療,総合診療科,さらにはリハビリテーション科もチームの一員である。ところが,神経疾患救急を真正面から取り上げた神経内科からの教科書は今日まで存在しなかったのである。

 このたび,医学書院より出版された『神経救急・集中治療ハンドブック』は,その英文サブタイトルである「Critical Care Neurology」を前面に打ち出した本邦初の神経救急教科書である。その監修をされている篠原幸人先生は東海大学神経内科教授として長年にわたり教育,診療,研究に従事され,現在は立川病院院長そして日本脳卒中学会理事長として益々のご活躍をされていることは周知の事実である。先生の主宰された学会は数多いが,ここでは神経学(神経内科学)を全面に出した日本神経学会総会と日本神経治療学会総会での会長講演を含め,また日頃から御指導を受けてきた立場よりこの名著に迫りたいと考えた。

 1999年第17回日本神経治療学会会長講演「脳血管障害の治療戦略と治療の将来展望」ではEvidence-based Neurology,また,2003年の第44回日本神経学会会長講演の「21世紀の神経内科学」ではPreventive Neurologyという用語が登場する。また,これらの学会や,さらに本書の監修の序および第1章において,先生が特に強調されたいCritical Care Neurology,Emergency Neurology,そして「動の神経学」,「静の神経学」についてのお考えが述べられている。

 本書は第1章「なぜ,今Critical Care Neurologyか」,第2章「重症神経症候とその管理」,第3章「重症神経疾患とその管理」,第4章「全身的合併症とその管理」そして最後の第5章「重症神経症候・疾患管理の方法」に分けられた470頁にわたる大著である。

 しかし,篠原先生のコンセプトをすべて理解された永山正雄,濱田潤一両先生の編集のもと65名の全国のエキスパートを網羅した適材,適所の執筆陣により統一された書式で内容がまとめられており,各項目毎に「Neurocritical care pearls」とする簡潔なキラリと光る真珠の輝きの要旨,また必要な図表,フローチャートを多用,さらに鮮明な画像も採用,そして参照すべき重要文献を加えるという見事な統一が図られている。

 本書をはじめから通読することも何の抵抗もないばかりでなく,その状況に応じた項目をピックアップできるなど,辞書的な役割も果たせるような配慮がなされていると感ずる。さらに国内のみならず外国の情報もふんだんに取り入れていく見事なコンセプトも具現されており,神経学を学び,また実践しているすべての方々にとって必携の書として,その出版に心からの賛辞を表するものである。

A5・頁496 定価5,775円(税5%込)医学書院


簡要 神経学 第4版

岩田 誠,岩田 淳 訳

《評 者》河村 満(昭和大教授・神経内科)

すべての医療従事者に勧められる神経学入門書

 Wilkinson先生の『Essential Neurology』を最初に手にしたのは20年近く前,学会総会の書店であった。一緒にあれこれと本を選定していた故伊藤直樹先生(元千葉大学神経内科講師)が勧めてくれたので購入した。伊藤先生からは病棟・外来で懇切な指導を受けたが,しばしばこの本の図を使って説明していただいたのを今でもよく憶えている。いつも難解で複雑な神経疾患の病態が,「なるほど」と理解できた。この本を見ると,伊藤先生の表情を懐かしく思い出すことができる。

 原著第4版の翻訳が『簡要 神経学』として,岩田誠・淳先生によって訳され,4回目の改版として出版された。名著の名訳である。原著は初版出版から17年目の出版であり,第3版に比べ,多くの図が加わり,カラーの図もある。ちなみに,両翻訳者は親子である。『簡要 神経学』が最初に世に出たとき,岩田淳先生はまだ医学部の学生であったはずである。学生で専門書を翻訳してしまう能力には脱帽せざるを得なかった。また,同じ専門を持ち,仲良く本を出版するという幸せな親子は,医学領域に限らずなかなか見当たらないのではなかろうかと,心からうらやましく思った。

 「神経学の入門書は何がよいですか」と熱心な学生や研修医,また看護師やST・OT・PTなどコメディカルの方々に聞かれることが多いが,適当な本がなかなかない。私は『簡要 神経学』を勧めることが多い。この本には不思議なことに「神経学的所見の取り方」の記載はほとんどみられない。その理由は,初版の序文にあるように,「神経学的診断法というものは病棟や外来で神経内科医の診療を見ながら学ぶべきものである,と信じているからである」という著者の信念があるからである。「診断法」を思い切って省略することによって,神経疾患の病理,症候から病歴聴取,診断,治療に至るまでの説明が親切になり,生き生きとしたのである。しかも解説は「簡潔」で「要点」が押さえられている。神経疾患といえば各種の変性性疾患を頭に浮かべる向きも多いと思う。しかし,そのような稀少疾患についての記載は少なく,扱われているのは神経内科外来・病棟でよくみる,ごく普通の病気であるのもこの本の特徴である。例えば,第12章「てんかん」のところをみてほしい。一目で典型所見が理解できる脳波の図が何枚も掲載されており,「発作の現場で実際に役に立つ説明の仕方」,「女性てんかん患者についての特別な配慮」など,診療上の具体的なことについて必要十分に記載されていることがわかると思う。

 私は『簡要 神経学 第4版』を,私たちの教室に時々顔を出す私の大学の4年生F君にプレゼントするつもりである。F君が一人前の医師になった時に,もしかしたら私を思い出してくれるかもしれないと密かに期待しているからである。

B5・頁292 定価3,990円(税5%込)MEDSi
http://www.medsi.co.jp/

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