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第2726号 2007年4月2日


【対談】

胆・膵癌診療の現在と未来
ガイドラインが紡ぐ診療のコンセンサス
山雄健次氏(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科部長)
田中雅夫氏(九州大学大学院教授 臨床・腫瘍外科)


 近年,画像診断機器の改良によって明瞭な画像が得られるようになり,医師が画像からきちんと診断できるかどうかが治療の方向性を決めるうえでも大きなウエイトを占めるようになった。本紙では,『IPMN/MCN国際診療ガイドライン』の代表著者田中雅夫氏と『画像所見のよみ方と鑑別診断-胆・膵』の編集に携わった山雄健次氏に,胆・膵診療を外科・内科両面から総括していただき,さらに将来像についてもお話しいただいた。


画像診断の現状

山雄 画像診断技術の進歩は著しく,画像診断のあり方は大きく様変わりしたと思います。その一例として,先日,膵臓の病気の方にHDG(hypotonic duodenography:低緊張性十二指腸造影)を行う機会がありました。今のように画像診断技術が発達していない時代にはHDGで診断することがありましたが,今はほとんど顧みられません。私もほとんどしていませんが,する時には「HDGはこうやるんだ!」と後輩たちに怒鳴りながら教えています(笑)。

田中 確かにHDGができる先生は,少なくなりましたね。画像診断を胆・膵に限りますと,MDCT(multidetector-row CT)1つで足りてしまうことが多いと認識しています。MRが進んで,ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を凌駕……とは,本音では言いたくないのですが,MRCP(magnetic resonance cholangio-pancreatography:磁気共鳴胆管膵管撮像法)が非常にきれいな像をつくるようになりました。これはすごい進歩だったと思います。

山雄 きれいな像をつくれるようになり,以前はERCPが膵疾患診断の中心でしたが,現在はMRCPやMDCTにとって代わられていますね。そうはいってもERCPは,内視鏡的胆管ドレナージや細胞診など,他に譲ることができない長所がありますからこれからも必要な手技ですね。上皮内癌や小さな膵癌の診断は,まだまだERCPでしかできません。ただ,ERCPを行う症例をどのようにセレクションしていくか,というところが難しいですね。

田中 そうですね。膵は,なんといっても膵癌をいかに早く見つけるか,鑑別するかが重要です。これは昔から注目されていて,私も唱えておりますが,「糖尿病を軽く見てはいけない」,「嚢胞がきっかけになることがある」ということです。嚢胞がきっかけとなり,ERCPを行い,上皮内癌が見つかるというのは,すばらしいストーリーです。そのためにはERCPで膵液を採取しなければなりませんからね。

山雄 IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasms:膵管内乳頭粘液性腫瘍)や,糖尿病,最近アメリカで注目されている家族性膵癌の家系,遺伝性慢性膵炎などが膵癌の母地になります。これらをセレクションし,ERCP→細胞診→上皮内癌・小膵癌の発見→切除→予後の改善というストーリーはすごくきれいでいいですね。

田中 私は膵癌をどんどん切除しています。しかし膵癌は十数ミリで切除しても再発してしまいます。化学療法が効くようにはなりましたが,最終的には助けることができません。やはりミリ単位で見つけていくことが重要です。そこは内科の先生方の双肩にかかっておりますね。

山雄 ずしりと感じております。膵癌の大きさですが私どもの成績では,2cm以下の切除で,3年生存率が100%,5年生存率で78%です。従来からいわれています2cm以下の小膵癌を見つけることは,予後の改善につながると思います。

田中 2cm以下の膵癌TS1ですと,5年生存率は確かによいのですが,7年経っても再発してくることがあります。繰り返しになりますがやはりミリ単位で見つけないといけません(笑)。

山雄 “やはりミリ”ですか……。頑張ります(笑)。

 膵癌の発見では,外科の先生にはお嫌いな方もおられると思いますが,EUS(endoscopic ultrasonography:超音波内視鏡)は,MDCTとともに膵疾患の中心に置くべき検査だと思います。

田中 そうですね。ただ,EUSは,得意・不得意があって,名人の域が必要な検査だろうと思います。以前,ERCPを行うには名人であることが必要だったようにです。EUSも,膵臓に関しては読む力が重要で,個人差がすごく大きなものだと思います。

山雄 検査体系として名人にしかできない検査はいけないと思います。EUSを標準化するために,EUSを積極的に行っている先生方と取り組んでおります。すでに発表し,冊子にもしていまして,これを普及させていきたいと思っています。

 それと,日本の医療事情では,1つの病院にすべての検査機器が入っていますが,欧米のように,ある種の検査はセンター化して患者さんを送ってもらい,診断して帰ってもらって,そこで治療を受けていただくというようなことも,考えていかなければいけないでしょうね。

田中 そうですね。特にEUSは,見る目が養われていないと見落としてしまい,鑑別すらできなくなってしまうことが多くあるかと思いますので,少なくともEUSについては“名人”のところで診てもらうほうがいいと思いますね。

山雄 最近では,細胞を採る検査として,EUS下穿刺というものも普及してきました。膵癌も,治療の中心はもちろん手術ですけれども,抗癌剤治療,あるいは放射線と抗癌剤の併用療法も,よく行われています。ニーズも増えていますので,EUSのできる医師を,ぜひたくさん育てていきたいと考えています。

■コンセンサスを把握し,エビデンスの発信を

山雄 『IPMN/MCN国際診療ガイドライン』(医学書院),『膵癌診療ガイドライン』(金原出版)の作成は,従来,私が関わったガイドラインの作り方とは異なっていました。はじめにクリニカル・クエスチョンを挙げ,各委員が文献や専門家の意見をまとめていく。大変でしたがとてもよい経験になりました。同時期に2つのガイドラインをまとめるのは相当ご苦労されたと思いますが。

田中 私の研究室には非常に頼りになる山口幸二先生がいまして,手分けをすることができました。主に『膵癌診療ガイドライン』は山口先生にお願いし,私は全体の目配りをしました。『IPMN/MCN国際診療ガイドライン』は私自身が行いました。

 『IPMN/MCN国際診療ガイドライン』では,国際チームを結成するまでに執筆陣を絞り込むのに約1年かかってしまいましたが,協力的な人ばかりでその後は順調でした。アウトラインは,2004年に仙台で松野正紀先生が国際膵臓学会を主催された時に,ほぼ完成していました。後は,それぞれの著者に書いてもらう依頼のメールを発信し,どんどん催促して,かなりのスピード進行となりました(笑)。

山雄 先生のメール攻勢がすごくて(笑),短期間ですばらしいまとめをしていただけたと思います。まとめる際,語学の壁もあり,エビデンスが少ないということもあって,苦労されたと思います。

田中 大変でしたが私自身も勉強になりました。イタリアや日本の方にとって,英文を書くのが不得意なのはあたり前のことです。アメリカ人の書く英語はすばらしいのですが,それでも間違いがありました。特に文法の誤りが多くあるということもよくわかりました。

 内容についてですが,日本と海外では扱う対象や,画像診断に何を使うかで議論になりました。例えば,EUSは日本中どこでもできますが,世界的にはそう普及していませんので,EUSをメインにもってくることはまだできませんでした。そういった事情を取り入れなければ,“国際ガイドライン”ではなく“日本が作ったガイドライン”になってしまいますので,妥協した部分もありました。また,「画像の多いガイドラインにしてほしい」との要望には,山雄先生からきれいな画像を提供していただき助かりました。

日本でしかできないIPMNのエビデンス発信を

田中 MCN(mucinous cystic neoplasms)は対処の仕方も決まっており,あまり疑問を感じなくてすみます。一方,IPMNは,ガイドラインは出ましたが,概念そのものがそれほど普及していません。そしてガイドラインを読んでいる人たちも,管理についてはまだまだ迷いながらやっている状況だと思います。

山雄 IPMNも,日本では大橋計彦先生,高木國夫先生が粘液産生膵癌という名前を提唱され,いくつかの変遷を経てIPMNとなりました。粘液産生膵癌の原点は,乳頭開口部が大きく口を開けて,そこから粘液が排出されること。主膵管に狭窄がないのに,びまん性に非常に拡張していることでしたが,IPMNと名称が変更されてから,粘液のことが忘れ去られてしまったように思います。

 アメリカは,ERCPはあまり行われず,IPMN診断の際,EUSで穿刺して,それで粘液か,粘液でないか,あるいは良悪性を診断することが,現実に行われているといいます。

 日本で同じことをすると癌が播種するといわれ,ひどく叱られます(笑)。私も,これに関しては絶対に反対で,『IPMN/MCN国際診療ガイドライン』の作成時,「穿刺をして情報を取れ」と外国の先生から強硬に言われましたが,私どもも強硬に反対した経緯がありました。

田中 最終的に穿刺し情報を取ることは入れませんでしたが,アメリカでは確かに穿刺を普通に行っています。IPMNを穿刺し,中のCEA(carcinoembryonic antigen)を測れば,癌では増えているというわけです。非常にダイレクトなエビデンスを早くつけなければならない医療経済上の理由もあるのではないでしょうか。

山雄 そういう医療事情も影響しているとは思いますが,原点に戻って,少なくとも最初の1回はERCPを行うことを勧めたいですね。ERCPは細胞診もできるのですから。乳頭を確認しないで,穿刺し,IPMNと診断するとは本末転倒だと思います。

田中 本ガイドラインはいずれ時機を見て改訂していくこととなりますが,その時には,アメリカから穿刺して,EUS-FNA(endoscopic ultrasonography guided fine needle aspiration:超音波内視鏡下吸引細胞診)でどう鑑別診断するか,どうマネジメントしていくかなどデータを揃えて出されるでしょう。それに対して日本の,特に消化器内科の先生方は,日本でしかできない綿密な経過観察を出していただきたいと思います。粘液を見つけ,大きくなってきた時にどこで癌が出てくるか,あるいは癌のサインがなく出てきているのがどのくらいあるのか。そういった綿密なフォローアップは,外国ではできていないのだと思います。ここは日本がきちんとデータを出していくべきところです。

 そうしてエビデンスが蓄積されコンセンサス・ガイドラインではなくて,エビデンス・ベイスド・ガイドラインにすることができる時代がくるだろうと思います。

山雄 もともと,IPMNの概念は日本で最初に報告されたのですから,日本の若い先生も,このガイドラインをしっかり読み,現時点でのコンセンサスを認識していただき,その上にエビデンスを築いて発信してほしいですね。

田中 粘液産生腫瘍に関しては,WHOに名前まで変えられてしまいましたが,まだまだ日本から発信すべきことはたくさんあると思います。若い先生方にも,ぜひがんばっていただきたいと思います。

外科手術適応の見極めが重要

田中 『膵癌診療ガイドライン』では,癌の診療ガイドラインでは初めての試みとして,エキスパート・オピニオン“明日への提言”を入れることになりました。

 読む方たちには,本文のエビデンスに基づいた「推奨」はおもしろくないわけです。むしろ,その“明日への提言”がおもしろいという声が大きく,“明日への提言”を入れてよかったと思っています。

山雄 『膵癌診療ガイドライン』に関しては,やはりエビデンスに基づくということで,作成には文献が山のように積まれ,それを前にして途方に暮れたことを思い出します(笑)。

田中 そうでしょうね(笑)。ほんとうに委員の方たちだけでなく,協力者と力を合わせて完成したと思っています。本書は構造化抄録を作るという意味で,非常にご苦労をおかけしましたが,エッセンスを集めて,エキスを搾り出すところで,委員の方たちには非常によく作業をしていただきました。

山雄 膵癌は,日本でも外国でも罹患率が増えております。ジェムザールやTS-1などの薬剤が手に入るようになり,膵癌の患者さんに積極的に治療できる時代がやってきました。そうした時に,タイムリーにガイドラインが出たことは,よかったと思っています。

田中 ジェムザールが出て,それまで十数年間よくならなかった成績が目で見てわかるほどよくなりました。これからTS-1も含めて,より効果的な組み合わせが明らかになっていけば,膵癌といえども,明るい希望をもって治療できると思います。

山雄 他の癌種に比べまだまだ予後は悪いです。しかし手の施しようのなかった以前と比べ,抗癌剤にぜひ希望をもって治療を受けていただきたいと思います。

田中 そうですね。EUS-FNAで確定診断をし,抗癌剤治療をできる体力があれば,1年,2年と生きられる時代になりましたので,外来診療をしていても,だいぶ気持ちが明るくなってきました。

山雄 そうですね。私どもの施設の成績でいきますと,局所進行膵癌で転移のない症例で,MST(生存期間中央値)が11か月,2年生存率が27%です。他の薬との組み合わせで,さらによい成績を出しているところもあります。ここまでくると手術すべき症例と,抗癌剤を中心とした治療でいく症例とを,きっちり分けることが重要だと思います。

田中 いま,そこが問題なのです。意外と早く,「これは局所進行膵癌で,外科医では手に負えない」と思いはじめている内科の先生が,多くおられます。その中には「まだ手術で取れる」症例もあります。一度外科にも見せていただき,その後,化学療法に進むかを決めていただければと思います。そういう意味でも,内科と外科のコミュニケーションがすごく大事ですね。

■5年・10年後の膵癌診療Vision

膵癌治療の選択肢を増やす

山雄 血液の癌というのは,何種類かに細分化されており,悪性リンパ腫にしても10種類ほど,白血病もいくつかに分かれています。しかし,膵癌あるいは胆道癌の多くは「膵管癌」「胆道癌」とひとまとめにされています。血液の癌のような考え方が必要ではないかということで,大腸癌を例にとって,SNIPsで大きく分類して,診断あるいは治療を進めていくべきだという講演をM.D.アンダーソンの医師がされました。

 膵癌や胆道癌に関してもこの考えを応用してアプローチすると,今後,おもしろい展開になるのではないかと感じました。

田中 まだ,施設としては少ないですが,膵癌の網羅的遺伝子解析も行われていますね。パターン解析が進めば,他の癌と同じように分類できるのかもしれません。そういった意味では,EUS-FNAで細胞を採取し,パターン解析し分類データを蓄積していけば,このパターンの膵管癌にはこの薬が効く,ということがわかってくるでしょう。分子標的治療でも何でもよいので,治療の選択肢が増えればと思います。

山雄 いま,研究を進めており,少しずつ成績が出てきています。5年,10年後には,実用化できていると期待していただきたいです。田中先生のところでは,腫瘍マーカーの開発もされていますが,どのような状況ですか。

田中 まず膵液の中の腫瘍マーカーについてですが,分子生物学的な何らかのマーカーがないかと探していますが,なかなか決め手になるものは見つかっていません。現時点では,テロメラーゼがいちばん優れていますね。

 他に血液の中を巡っている細胞でできないかと考えています。まだまだ遠い夢ですが,10個ほどの膵癌細胞が体の中を巡っていれば,それを検出し光らせたりできないかと。これが実現されれば,膵癌の集団検診ができます。現在は,まだ膵液で調べている段階ですが,最終目的は集団検診にあります。

 IPMNは興味深いことに,マーカーの値で膵癌と区別することが難しいのです。IPMNになった時点で,正常とは違うマーカーのレベルになっていることがかなりあります。ですから,IPMNは前癌病態ということになります。IPMNになった時点で,膵癌と同じような細胞を持っている。それで,IPMNの良性と,膵癌になったものを区別すること,これが非常に難しいです。

山雄 IPMNの患者さんを登録して,プロスペクティブに診ていくことを,学会が率先して全国規模で行い調査結果を世界に発信することも考えられますね。これは,5年,10年と進行が遅い腫瘍ですから,調査には長い期間が必要ということも考えると,日本でしかできない調査かもしれませんね。

田中 それこそ,壮大なる計画になるでしょうね。考えてみないでもないのですが,膵臓学会は膵癌登録を行っていますし,数年前から嚢胞性腫瘍なども登録するようになりました。ただ,IPMNというのは,結論が出ていないままの患者さんたちがたくさんおられます。嚢胞があって様子をみている患者さんまで入れますと,膵癌の何倍にもなるでしょう。すべては無理ですが施設を限定して,やるべきことでしょうね。

縮小手術の技術を

山雄 5年,10年の未来では,外科の手術はどうなっているとお思いですか。

田中 外科の手術は,数年前に,プロスペクティブ・ランダマイズドで,拡大郭清がほとんど役に立っていなかったということが出ました。「自分のメスさばきで,取れるだけ取れば助けられる」と思っていたのが,実は違っていた。そのため大動脈周囲のリンパ節郭清などはあまり行わなくなり,癌細胞の有無を決めるサンプリングだけと,若干,自信喪失に陥っている時に,化学療法が加わりました。手術で取るだけ取って化学療法を行えば,長生きしていただける方が多く出てくるだろうと思います。化学療法を前提に,どこまで拡大郭清をすればそれがよりよくできるかというところに,外科の腕の入れ方,技術の評価の仕方があるかもしれません。

山雄 拡大の逆の縮小手術,これの現状や将来性というのはいかがですか。

田中 膵臓の手術は,手術を縮小するほど,合併症なく終わらせて,患者さんに元気で帰っていただくことはとても難しいです。ですから,縮小手術は,どこの病院でもトライアルとしてやるのではなく,一定基準をクリアした病院でするべきだと思っています。

 EUS-FNAで刺しても,確定診断がつかない,取ってみないとわからない症例に限っていえば,今後も縮小手術が生きていく道だと思います。例えば,IPMNの嚢胞が5cmになって,壁在結節はないという時には,先生はどうされますか。

山雄 壁在結節は,悪性所見の1つに位置づけておりまして,大きさはあまり重みをもっていないのです。

田中 5cm,6cmになっても,壁在結節が出てこなくて,壁がどこも肥厚していなかったら,経過観察を続けておられますか。

山雄 そうしています。

田中 これも,今後日本が発信すべき情報です。大きくなって,悪性所見がまったくない。しかし,取ってみたら上皮内癌があった,という例がどの程度あるのか。そういったことを突き詰めていくには,やはり取らなければわかりません。そして,取る時に悪性所見がなければ縮小手術が必要なのです。

山雄 私ども内科医からすると,腺腫であったのに結果的に手術をしてしまったという時には,申し訳ないと思っています。極論かもしれませんが,上皮内癌でも,死に至るまでにはだいぶ期間があります。病理学的に,ボーダーラインのものも含めて生命予後にどの程度関係するかを詰めていかなければいけないと思っています。そのくらいまでは経過観察してもいいかなと思っております。

田中 上皮内癌までは,極論として取らなくてもいいということですね。外科医としては,上皮内癌を切らせてもらえれば,「よかった!」と思います。上皮内癌は,“見つからない癌”ですから,取ってみてアデノーマだったことを,「ごめんなさい」と思うか,「よかったね」と思うかが,先生と私の違いですね。

山雄 確かにそうです。以前から,先生からはそういうお叱りというか,苦言のようなことを,私は承っております。

田中 苦言ではなく,それが内科と外科の違いだと思います(笑)。私たちは,アデノーマだったとしてもいい,その中に上皮内癌が何割かでもあれば,取りつづける甲斐はあると思っています。そのためには,合併症を起こさないで取れる技術を磨かなければいけないのです。

山雄 そうですね。腕のいい外科医に,きちっと手術をしていただければ,上皮内癌までは手術ということでお譲りしたいと思います(笑)。


田中雅夫氏
1974年九大医学部卒。85年アメリカ・メイヨークリニック外科研究員,87年西ドイツ・ハイデルベルグ大外科センター研究員。89年九大病院第一外科講師,92年同大医学部第一外科教授を経て99年より現職。日本外科学会,日本消化器外科学会,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会の認定医。

山雄健次氏
1976年名大医学部卒。81年名大第二内科,1993年藤田保衛大第二病院内科講師,97年愛知県がんセンター消化器内科副部長,内視鏡部長を経て02年より現職。日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本超音波医学会の指導医。専門分野は,消化器病学,消化器内視鏡,膵胆道癌の病理,消化器癌の化学療法など。