医学界新聞

 

進化する病院の勉強会

聖路加国際病院の「臨床研究勉強会」はおもしろい!


 福井次矢氏(聖路加国際病院)は,雑誌「糖尿病診療マスター」4巻9号(本年9月号)の巻頭インタビューで,病院における医療の質を表す指標(Quality Indicator)をまとめ,質の高い医療を提供しなければならないことを熱く語り,話題となっている。

 聖路加国際病院は,2005年5月に「臨床実践研究推進センター」を作り,そこに専任のスタッフを配置して,研修医だけでなく,いろいろな職種の教育のアレンジをして,研究についてもそこでサポートする体制を整えた。そして現在「臨床研究勉強会」を定期的に開催している。病院のあらゆる職種の人たちに向けた,臨床研究の方法論の勉強会だ。

臨床研究勉強会のもよう。病院内のあらゆる職種が参加し,臨床研究の方法論を学ぶ。全体の簡単な講義(写真左)のあと,いざ実践。チューターが各テーブルを回り,フォローする(右)。ここで何度か繰り返し,身につけてもらうのがポイント。

エクセルの裏技から統計分析まで,濃密な1時間

 9月7日の第7回臨床研究勉強会は,18時30分に70人ほどの参加者が集まり5つのテーブルに分かれて行われた。まずエクセルの裏技(中級編)からスタート。チューターは同センターの大出幸子氏。各ブースに置かれたPCを実際に操作しながらの学習が始まる。メニューは,(1)平均値と四則計算(BMIの求め方),(2)COUNTIF関数(集団の中に28歳は何人いるのか),(3)DATEDIF関数(入院日時と退院日時から在院日数を正確に求める),である。

 続いて同センターの徳田安春氏にチューターが代わり,SPSS(Statistical Package for Social Sciences)ワークショップが始まった。今回の学習項目は,統計の基本項目である,(1)度数分布表,(2)記述統計,(3)探索的分析である。これも各ブースのPCを使って実際に学習する。度数分布表は,変数の分布を確認するのに有用で,この求め方を解説した後,サンプルデータを使って男女の割合を調べたり,性別,年齢別の度数分布のグラフを作成する。記述統計は,連続変数の分布を確認するのに有用で,サンプルデータを使って年齢の分布を求める。最後に探索的分析では,外れ値の識別,記述統計およびサブグループ間での相違点,データの異常値や極値,データ分布のギャップなどを探索する学習をする。

 ワークショップの後,同センターの高橋理氏がSPSSほか5つの統計ソフトの解説をして,使い勝手や値段を紹介した。最後に柳井晴夫氏がベイズ確率理論についてショートレクチャーを行い,19時30分に勉強会は終了した。

「聖路加アカデミア」構想

 この勉強会の特色は,1時間という短時間の間にメリハリのきいた進行で要領よく学習できること,さらに質問はアンケート用紙に書き込んでウェブサイトにFAQ形式で貼り付けるなど,主催者の気配りが特筆される点だ。時には出席者が100人を超すこともあるというのもうなずける。

 福井氏によると,今後「聖路加アカデミア」という全職員の研究発表会も予定されているという。進化する病院として,聖路加国際病院からは当分目が離せない。