医学界新聞

 

がん医療におけるチーム医療の重要性を確認

第1回オンコロジーメディアセミナーの話題から


 さる7月26日,「第1回オンコロジーメディアセミナー」が東京都千代田区の経団連会館にて行われた。主催のがん医療研修機構(理事長=癌研顧問・塚越茂氏)は,がん医療におけるチーム医療の質の向上,医療過誤の防止等を目的として今年3月に設立された。具体的な事業として年2回のセミナーを開催している。

 「がん医療研修機構発足にあたって」と題して講演を行った塚越氏は,「がんの集学的治療には,チーム医療が必須である」と強調。自身の経験を通して,治療に携わる医療者すべてが知識を共有することが重要と考え,がん医療研修機構を立ち上げた経緯を語った。また,がん化学療法の外来へのシフトに触れ,このことがチーム医療の原動力になったと指摘した。

 次に垣添忠生氏(国立がんセンター)が登壇。垣添氏はがん診療の現状について「診断が正確になり,精密な治療計画が可能になったことで,治療の選択肢が多様化した」と解説。そのうえで,厚労省に設置されたがん対策推進本部や,来年4月に施行されるがん対策基本法,がん診療拠点病院の見直しなどに触れ,今後の具体的課題としてがん登録の充足,禁煙・感染症対策などの一次予防,検診受診率および質の向上といった二次予防,難治がんに対する研究の重要性,がん医療の均てん化などを挙げた。また,垣添氏はがんチーム医療の話題の中で,現在国立がんセンターで行われている薬剤師レジデント制度を紹介。多種多様な抗がん剤の取り扱いに関する知識,技術を持った専門的薬剤師養成の必要性を指摘した。

 西條長宏氏(国立がんセンター東病院)はがん薬物療法について講演。これまで,化学療法は進行がんに対してのみ用いられていたが,現在では局所進行がんや比較的早期のがん,また完全切除例に対しても用いられ,化学療法の重要性は増していると述べた。また抗がん剤は,がん細胞の生物学的特性上,適正量投与しても効果が得られないことが多いが,その薬物耐性を克服する方法として,薬理ゲノミクスの研究から開発された分子標的薬を紹介。抗腫瘍スペクトラムの広い殺細胞性の抗がん剤と,スペクトラムは狭いが標的への効果が高い分子標的薬の併用により効果が期待できると述べた。