医学界新聞

 

“コミュニケーション”を核に

第40回日本作業療法学会開催


 さる6月30日-7月2日,第40回日本作業療法学会が山根寛会長(京大)のもと,京都市の国立京都国際会館にて開催された。テーマは「ひとと作業活動:コミュニケーションとしての作業――身体」。“コミュニケーション”を核としたテーマ講演が5題用意され,また作業療法士協会設立40周年を振り返る記念講演やシンポジウムが催されるなど,多彩なプログラム構成となった。


作業を介したコミュニケーションの重要性

 テーマ講演「コミュニケーションプロセスとしての作業」では,松井紀和氏(日本臨床心理研究所)が登壇。コミュニケーションの観点からみた作業活動について述べた。

 はじめに,作業療法の重要な治療分析として10の視点が挙げられると説明。それは例えば,治療者と被治療者の物理的距離,治療者に対する依存性,作業の中での言語的交遊などが挙げられるが,そのほとんどがコミュニケーション的意味を持っており,そこに治療者がいて何らかの合意が得られている作業であれば,必ずコミュニケーションとしての意味が成り立つと述べた。

 また,作業を介したコミュニケーションは,最も標準的な直接的・対面的・言語的コミュニケーションと違い,あいまいであるがゆえに表現しやすいとし,言葉によるコミュニケーションが成立する途中に,言語以上の伝達性があるアクティビティを使ったコミュニケーション方法を利用する効果は大きいと論じた。

問題意識を持って神経画像所見を見直す

 教育講演「高次脳機能障害のリハビリテーションにおける神経画像の役割」では,三村將氏(昭和大)が,近年の神経画像研究の進歩が認知リハビリテーションの枠組みに与える影響について,症例と神経画像をもとに話を展開した。

 具体的な認知リハビリテーションの実施にあたっては,まず症候と損傷部位の2方向性からの視点(神経心理学的症候から損傷部位がどこであるか類推する,あるいは画像所見上の損傷部位から神経心理学的症候を類推する)を持つことが基本であり,常にそのことを念頭に置くことが大切であると強調した。さらに,残存する脳のなかでどのような機能ネットワークが構築されているのか考えたうえで,どのような介入法が有効で,そこからどのようなことが予想されるかを検討していく必要があるとした。

 また,画像所見は,臨床経過における症候の変化や治療効果を評価する際に有用であり,機能画像所見や神経心理検査成績から得られた結果の1か所だけに目を奪われるのではなく,全体像を見渡すことが,良好な予後を予測していくうえで重要であると述べた。