医学界新聞

 

がん術後補助化学療法を再検討

米国臨床腫瘍学会(ASCO2006)の話題から


 さる6月14日,「がん治療最前線-米国臨床腫瘍学会(ASCO2006)速報」と題するプレスセミナーが千代田区の東京會舘で開催された(主催:ブリストル・マイヤーズ)。このセミナーは,6月2-6日にかけて米国ジョージア州アトランタで開催された,第42回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology, ASCO)の速報を伝えるもので,坪井正博氏(東医大),M. A. Bookman氏(Fox Chase Cancer Center)の2人が最新の研究成果について講演した。

 坪井氏は,非小細胞肺癌の完全切除例に対する術後補助化学療法の有効性について講演。肺癌治療における局所療法と全身治療併用の重要性を述べた後,IB期においてパクリタキセルとカルボプラチンを術後補助化学療法として併用した研究を紹介。無再発生存と3年生存率に対して有効であることを示し,「治癒率を高めることはできないが再発遅延の可能性を高める」ことを示唆した。また,シスプラチンを用いたメタ分析の研究では,IA期で効果はないがⅡ・Ⅲ期で有効であることを示した。しかし,依然IB期での効果は一様でなく,実際の医療現場においては,患者自身が補助化学療法のリスク(副作用)とベネフィットの両方を理解したうえで,治療を行うか否かを決定すべきであると強調した。

 Bookman氏は,自身が中心となって行った進行卵巣がんの術後補助化学療法の研究について講演。現状ではカルボプラチンとパクリタキセルの併用投与が「標準」とされているが,より有効な治療検討のため,第3の抗がん剤を追加した大規模治験を実施。カルボプラチンとパクリタキセルに,標的の異なる別の薬剤を組み合わせても,より強い改善には至らないという結果を明らかにした。最後にBookman氏は,25年を経てなお,シスプラチン,カルボプラチンが進行卵巣がんにおける主要な治療薬であることを強調。今後の大規模な国際共同研究の重要性を指摘したうえで,「標準的な手法」だけではなく,非プラチナ系も含めた新たな薬剤研究に期待を示した。