医学界新聞

 

未来の病理医を探せ

第95回日本病理学会学生ポスター発表


 さる4月30日-5月2日,第95回日本病理学会が坂本穆彦会長(杏林大教授)のもと,京王プラザホテルにて開催された。今学会では,初の試みの1つとして学生によるポスター発表が行われた。この試みは,昨今の病理医不足打開のため,医学生の病理学に対する興味を喚起し,一人でも多く病理の道を志してほしいとの考えから始まったもので,症例報告29題,研究発表44題,あわせて73題もの演題が集まった。ポスター会場には大勢の人がつめかけ,座長の時にユーモアを交えた進行のもと,活発な議論が交わされた。また,今回のポスター発表にあたって選考委員会が設置され,最優秀賞2題,優秀賞5題が表彰された。

〔最優秀賞〕(筆頭者のみ,敬称略)
◆アスベスト暴露者に腹膜中皮腫が発生した一例(栗本遼太・千葉大)
◆肺癌切除検体からのアスベスト抽出の試み(保谷智史・新潟大)

〔優秀賞〕(筆頭者のみ,敬称略)
◆リバビリン併用インターフェロン療法開始後,急速に肝不全をきたして死亡したHCVとHIVの重複感染例(三次有奈・北大)
◆子宮頸部原発の癌肉腫の1例 (下沖碧・香川大)
◆冠静脈うっ血が心筋組織に及ぼす影響について(秋元直彦・日医大)
◆中間系フィラメントNestinの腎内局在と機能解析(山田理紗・筑波大)
◆Expression of Interleukin(IL)-11 and IL-11 receptor in human colorectal
 adenocarcinoma: IL-11 upregulation of the invasive and proliferative activity of human colorectal carcinoma cells(吉崎歩・長崎大)

 選考委員会からは,「どの演題も非常に内容が充実しており,評価点も僅差であった」との講評が寄せられた。最優秀賞受賞グループの1つ,新潟大の保谷さんは,「4年の夏休みに『病理夏の学校』という東北・新潟地区の学生を集めた症例検討会があり,それに興味を持って参加したのがきっかけ。この研究は4年の後期の基礎配属の時から少しずつ進めてきた。今回賞がもらえると思っていなかったので本当に嬉しい」と感想を述べた。

 なお,医学書院とメディカル・サイエンス・インターナショナルからは,副賞として図書カードと『標準病理学第3版』をはじめとした書籍10冊が贈呈された。

 坂本会長は,今回発表の学生に学会誌投稿も呼びかけている。今後このような試みが定着し,若き病理医の増加につながることが大いに期待される。