医学界新聞

 

日本の医療変革を先導する内科学


 さる4月14-16日,池田康夫会頭(慶大)のもと第103回日本内科学会がパシフィコ横浜にて開催された。大会テーマを「Innovation 医療の変革を先導する内科学」とし,多くの招請・教育講演が企画された。

 池田氏は,「日本は,乳幼児死亡率の低さや世界一の平均寿命などが考慮され,WHOの国民健康達成度は総合1位に評価されている」と提示。一方で患者の満足度は低いことを挙げ,改善するために「患者から見てわかりやすい医療施設の役割分担や,医師・コメディカル・NPOがどのように医療を分担していくかが今後の課題」と述べた。

 また「21世紀の医療」として,(1)高齢化社会への対応,(2)予防医学・健康教育の重要性,(3)国際化と個別化,(4)高度先進医療の開発競争,(5)医療の安全確保・倫理,(6)高騰する医療費負担,とこれから解決していかなければならない課題を挙げるとともに,解決のための一案を示した。最後に氏は「内科学会は責任ある学術団体として,医療システムの改革と役割分担を考え,社会に向け積極的に提言していくことが必要」と強調し降壇した。

 シンポジウム「メタボリックシンドロームの臨床」(座長=札幌医大・島本和明氏,東大・藤田敏郎氏)は,「疫学,病態,診断,治療を包括的に捉え,十分な討論を行いたい」とシンポジウムの趣旨を座長が説明し開始された。

 清原裕氏(九大)は日本人に適したメタボリックシンドローム(MetS)の診断基準について,長期間の疫学的研究を基に欧米・日本・アジアの基準を検討。心血管病発症の予測には,「腹囲を日本基準からアジア基準(男性90cm,女性80cm)に改変した診断基準がもっともよかった」と報告。さらに,身長を加味するとより顕著な差が見られたことも付け加えた。

 浦信行氏(札幌医大)はインスリン抵抗性の心血管病発症について重回帰分析の結果から,「インスリン抵抗性自身がMetSや他の各種機序を介して動脈硬化を進展させる可能性が示唆された」と報告。「MetSにおいてインスリン抵抗性の評価と厳密な管理が望まれる」とまとめた。