医学界新聞

 

先端生命医療とチーム医療の転換


 東女医大大学院看護学研究科主催のExhibition Lecture「先端生命医療におけるチーム医療の転換期――看護実践のパラダイムシフトをめぐって」が2月17日,同大学看護学部(東京都新宿区)で開催された。


“Less is more"

 「精密医療と手術戦略デスク」と題して講演した伊関洋氏(東女医大先端生命医科学研究所)は,先端工学外科分野において,医療の現場に根ざした産学協同の研究開発を行っている。氏は,「医療チームメンバーの不具合や個々の医療装置の故障の場合も,システム全体として危険な状態にならない」,すなわち,「医療のロバスト(頑健)性の向上」を先端医療のキーワードとして提示。「これからの手術は事前のリスク管理・予防が求められ,ファインプレーはあり得ない」とした。

 また,「神は細部に宿る」の格言で有名な建築家ミース・ファンデル・ローエの言葉“Less is more”を紹介し,「システムの信頼度をあげるためには,絶対に必要なものと不要なものの選別が必要」と強調。煩雑なステップになりがちなリスクマネジメントの今後に,重要な示唆を与えた。

ユビキタス技術による看護業務分析

 小暮潔氏(ATRメディア情報科学研究所)は,自らの研究所で進める「E-ナイチンゲールプロジェクト」を紹介した。同プロジェクトでは,小型センサを看護師に装着してもらうなどして,従来は看過されてきた日常的な行動を観測。そこから経験的知識を構築したうえで,「看護業務記録・分析システム」「ヒヤリ・ハット・ドキュメンタリ作成システム」などの知識提供をめざしている。現状のヒヤリ・ハット報告の記載内容だけでは分析・改善が難しいことも指摘される中,そこに至る業務の流れまで分析することで,背後に潜む根本的原因を把握できることが期待される。

 講演後は「情報はどうすれば“知”となるか」と会場から質問が出され,小暮氏は「知識とは,“人の行動に影響を与える情報”」と定義。“Less is more”の精神で,少ない情報をピンポイントで伝えることが重要であるとした。最後に,座長の金井Pak雅子氏(東女医大)が「情報のシェア」「コミュニケーション」をキーワードにあげ,シンポジウムを閉じた。