医学界新聞

 

【投稿】

Tierney先生に学ぶ鑑別診断
石川県立中央病院臨床教育プログラムに参加して

田中教久(金沢大学医学部医学科5年)


 昨年10月19-22日までの4日間,石川県立中央病院で『Current Medical Diagnosis & Treatment』の編纂でおなじみのLawrence M Tierney先生(カリフォルニア大サンフランシスコ校)の教育プログラムが実施され,参加する機会を得ました。このプログラムは定期的に実施されており,参加希望の医学生にもオープンにされています。

 今回は青木眞先生(サクラ精機顧問)もアドバイザーとして参加され,大変充実した内容になっていました。各セッションは,すべて患者さんの症例呈示から学ぶスタイルがとられています。Tierney先生のユーモアを交えながらの教育は楽しく,奥が深く,とても魅了されるものでした。

high yield symptomに着目

 今回の参加で学んだことは,病歴と身体所見の重要性,どの症候に着目するかということ,鑑別診断の重要性です。病歴と身体所見の重要性については,Tierney先生は症例呈示の際に,必ず病歴と身体所見からもれのないように鑑別診断をあげ,それらを絞っていき,必要ならばさらなる情報を求めていました。広く鑑別診断をあげた後,それらが理論的に絞り込まれていくのを目の当たりにして,病歴と身体所見の重要性を感じるとともに,病気ごとの臨床症状について,もっと勉強しなければならないと痛感しました。どの症候に着目するのかということについては,症候によっては鑑別診断が劇的に絞れるものがあり,それに着目するとよいということです。Tierney先生はこういった症候をhigh yield symptomと呼んでいました。

 鑑別診断の重要性については,最初に「血管性疾患」「感染症」「腫瘍性疾患」「自己免疫性疾患」「中毒・代謝性疾患」「外傷・変性疾患」「先天性疾患」「医原性疾患」「特発性疾患」とカテゴリーをあげられ,症候からどのカテゴリーにどんな疾患が鑑別診断としてあてはまるかを考えておられたのが印象的でした。広くとらえてから絞っていくことで誤診が減ると感じました。これらの考え方は,正しい診断に至り,患者さんに貢献するための大切な手段です。今後は今回の体験を無駄にしないよう勉強を続けていきたいと思います。

 最後に貴重な機会を与えていただいた同病院の松村正巳先生,理解の難しいところを解説いただいた青木眞先生に感謝いたします。