医学界新聞

 

精度と受診率の向上が課題

第15回日本乳癌検診学会開催


 さる2005年11月4-5日,第15回日本乳癌検診学会が沢井清司会長(京府医大助教授)のもと,京都市の国立京都国際会館において「日本の乳がん死を減らそう」をテーマに開催された。

マンモグラフィ講習会の役割

 会長講演では沢井氏が乳がん検診における京都府医師会の取り組みを紹介。京都市では現在,30歳代は超音波検診,40歳代以上にはマンモグラフィ検診を隔年で行っている。超音波検診では,臨床検査技師が撮影した写真を各地区医師会の読影会で診断,さらに専門の読影チームによるダブルチェックを経ている。

 氏は,マンモグラフィ検診の精度向上のためには,各地で開催されているマンモグラフィ講習会を受講した技師および医師による検診が理想的であるとし,同講習会への積極的な参加を呼びかけた。また,今回のテーマである乳がん死の減少への課題として,「すべての市町村でのマンモグラフィ検診の実施」,「受診率の向上」,「日本乳癌学会専門医の育成」をあげた。

超音波検査の導入に向けて

 特別講演「精度及び効率からみた乳がん検診」では大内憲明氏(東北大)が登壇,乳がん検診の基本指針として40-49歳はマンモグラフィ2方向(50-59歳は1方向)と視触診を隔年で実施とするした。

 2004年に厚労省が出した「乳がん検診に関する提言」では,30歳代女性への視触診および超音波検診については「引き続き調査研究を進める必要がある」となっているが,氏は「十分に精度管理された条件下で実施されれば,視触診に対し約3倍の検出率が得られる」と超音波検診の有用性を指摘。『乳房超音波検診ガイドライン』を作成するとともに,教育・研修のための乳がんダミー模型などを紹介した。

 一方で,より効率的な検診システムの確立のためにはデシタルマンモグラフィの導入も検討すべきとの考えを示した。現在のデシタルマンモグラフィには乳房組織内のコントラストがつけやすい一方で,微細な所見がとらえにくいといった欠点もある。氏は,過去の画像との対比(比較読影)による診断精度の向上を課題とした。

 講演の最後には,マンモグラフィ検診を成功させるための課題として,医師および技師の教育・養成,地域の実情に即したシステム作りといった検診の質向上に加え,40歳代での罹患率が高いことから,若年層への啓蒙・普及活動の重要性を強調。「自分には関係ないと思っている女性が多い。検診や治療についてもっと知ってもらう必要がある」としめくくった。