医学界新聞

 

ASGE Audiovisual Award受賞
濱中久尚氏に聞く


――ASGE(米国消化器内視鏡学会)Audiovisual Award受賞の感想をお聞かせください。

濱中 信じられない思いです。アメリカは胃癌の少ない国です。そのアメリカで最も権威あるこの学会の最優秀賞を取れるとは驚きでした。嬉しいの一言に尽きます。ただ,一方で,国立がんセンター内視鏡部で5年間苦労を重ねたその集大成ですので,実を言えばずっとこの賞を取ることを目標にやってきた面もあります。私は昨年の9月から11月まで米国スタンフォードのVeteran Hospitalで胃癌の内視鏡治療の1つである内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の技術指導を行ってきました。この胃癌の早期発見とESDによる治療を内容としたこのDVDは共同演者の後藤田先生に症例を米国に送っていただき,Roy Soetikno先生やRonald Yeh先生らへの教育・診療の傍らまとめたものです。受賞者の代表である私だけでなく日米協同の結果です。ですから受賞した時はまさに感無量の思いでした。

――先生のこの「Diagnosis and treatment of early gastric cancer」が受賞した意義を簡潔にご説明ください。

濱中 従来の外科手術に代わるあるいは補完するこのESDという内視鏡治療が広く普及すれば,低侵襲・QOLの観点から患者さんに福音となるのは明らかです。洋の東西を問わず大きな意義があります。このDDWでも日本のこの手技に対する関心が高いのがお分かりになられたと思います。外国からの報告もこれからどんどん出てくると思います。もう1つ強調したいのは,わが国の消化器診断学と治療技術は世界をリードしてきた歴史があります。このDDWで佐久総合病院の小山恒男先生など先輩の方々が受賞しています。その延長に立ってこの受賞があると思います。ただ日本は世界にもっとアピールしていく必要があると思います。

――日本人endoscopistとして今後の抱負をお聞かせください。

濱中 現在私は,東京・調布市にある調布東山病院という一般病院で内視鏡診断と治療を行っております。これまで診療を行っていた国立がんセンターとは異なる環境ですが,内視鏡治療をがんばってやっております。場所が変わってもやることは同じです。引き続き患者さんのためにがんばりたいと思って診療を意欲的に行っています。それから日本であっても,海外であっても,同レベルの治療を患者さんに提供できるように,これからも世界へ向けて発信していく,あるいは啓発活動をしていく,このことにますます力を入れたいと考えています。