医学界新聞

 

「自殺関連うつ対策戦略研究」公募に向けて

樋口輝彦氏(国立精神・神経センター武蔵病院院長)に聞く


――今回の自殺関連うつ対策に関する「戦略研究」の検討のプロセスを簡単に教えてください。

樋口 これは,わが国で初めてのプロジェクト研究で,精神科領域では,いま最も社会的関心が高まっていて,いろいろな意味で解決を迫られている「うつ」と「自殺」というテーマを取り上げ,しかもそれを大規模な介入研究で実証的に明らかにしていくという試みです。非常に大きな役割を担った研究課題と認識しています。研究班では,ブレーンストーミングをして,これまでにそれぞれが断片的に取り組んできた課題を皆で共有し,その中から介入研究のアイデアを汲み上げてきました。うつ病の領域の臨床から研究,研究も比較研究から治療的な研究に至るまでかなり幅広く,この領域の専門の方々のお話をうかがうことによって,研究班で共通認識を持つことができました。このプロセスがきわめて重要だったと思います。

 このプロセスから抽出されてきたものが,地域における自殺防止のための介入研究であり,救命救急センターを中心とした自殺未遂例の再企図防止の研究です。

――今回,2つの課題で公募するということですが,着実な成果を生み出す研究となるためのポイントは,どこだとお考えですか。

樋口 ポイントは,今回,非常に広範ないろいろな資源を活用することにあります。例えば,地域における介入では,1つの手段だけを用いるのではなく,地域の中にある介入に用いることのできる手段を可能な限り集めて,その中から最も有効であろうと予測できるものを最終的には選んでいくことになると思います。救命救急センターと連携する自殺未遂例の再企図防止についても同様です。

チームワークが大切

樋口 一研究者が個人的なレベルで研究するのとは異なり,今回の研究はチームで行うことになります。研究者と,研究者と連携する大きなチームがあって,場合によっては,行政が関与する場合があるでしょうし,保健師さんが関与する部分もあるでしょう。地域の中でそういう取り組みを続けているグループなど,いろいろなものすべてが入った大きなチームを形成して,それが全体として研究プロジェクトを動かしていく。それがうまく機能するかどうかが,1つの大きなポイントだと思います。

――関係者のチームワークが大切になりますね。全国のいろいろな方々がこの研究に関心を持っていると思います。皆さんにメッセージをお願いします。

樋口 日本初の試みということで,これがうまく実を結ぶかどうかが,将来のこういった大規模研究を占うと思います。非常に関心が高い課題ですので,積極的に取り組もうという方がたくさんいらっしゃると思います。多くの方に手をあげていただきたいですね。もちろん,限りのある研究課題ですので,すべて採用というわけにはいかないかもしれません。当然そこには,研究を受けられるだけの基盤と力を備えていることが必要条件になりますが,関心を持っている多くの方に参加していただき,最終的にはその成果が全国展開されていくことを願っています。


自殺関連うつ対策戦略研究についての当面の問い合わせ先(郵送のみ)
 〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1
 国立精神・神経センター精神保健研究所内「自殺関連うつ対策戦略研究」連絡担当宛

◆公募説明会を兼ねた「自殺関連うつ対策戦略研究シンポジウム」が9月7日(水)午後に東京都内で開催予定