医学界新聞

 

「変化ステージモデル」の提唱者が来日講演

第3回SMBGマスターセミナーin東京開催


 さる5月15日,秋葉原コンベンションホール(東京都)において,第3回SMBGマスターセミナーin東京が開催された。同セミナーは「SMBGマスター研究会」が主催し,ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)の共催で行われているもので,今回は多理論統合モデル(the Trans-Theoretical Model;通称「変化ステージモデル」)の提唱者の1人であるLaurie Ruggiero氏(イリノイ大教授)を講師に招き,変化ステージモデルの解説と,臨床での応用が講義された。


 この日の講師はRuggiero氏と石井均氏(天理よろづ相談所病院)。「変化ステージモデル」は,糖尿病患者への心理的アプローチの際の理論モデルとして1980年代に開発されたもので,本邦でも石井均氏らによって推奨され,多くの支持者を得ている。

 この日集った300人あまりの参加者は,同モデルの提唱者の1人であるRuggiero氏の講演に耳を傾けるとともに,日々の臨床での疑問点を投げかけた。

援助者は患者の 行動変容をサポート

 まずRuggiero氏が1時間にわたって,糖尿病治療における心理アプローチの重要性と,変化ステージモデルの概略を解説した。

 Ruggiero氏は初めに,糖尿病患者のうつの多さ,ストレスの高さについて触れ,「こうした患者への心理アプローチの重要性は言うまでもない」としたうえで,糖尿病患者一般にとっても,心理アプローチが重要であることを次のように解説した。

 糖尿病の自己管理では複数の行動を管理せねばならず,患者は糖尿病と診断されたその日から,自己の行動を変化させることを余儀なくされる。Ruggiero氏は,こうした自己管理には「戦略」が必要であること,さらにその戦略を成功させていくには医療者によるサポートが必要であると述べた。

 そのうえで氏は,医療者が患者に対してできることとして,評価,教育,援助,照会の4つをあげ,これらを効果的に用いることによって,患者が行動を変えていくことをサポートできると述べた。

5つのステージ それぞれに合った援助法

 続いて,変化ステージモデルの概略として,前熟考期,熟考期,準備期,行動期,維持期の5つのステージについて,それぞれのステージの特徴と,それに合ったアプローチ,注意すべき点が解説された。

 前熟考期は近い将来に行動を起こす意思がない状態であり,この段階では自身の行動に関する認識を向上させたり,自分の感情状態を振り返ったりといったアプローチが有効となりうる。熟考期は近い将来に行動を起こす意思がある状態であり,行動の妨げになる要因を除去したり,代替可能な行動を模索したりするアプローチが有効となる。

 同様に,準備期(すぐに行動を起こす意思がある状態),行動期(6か月以内に目標レベルへと行動を起こした状態),維持期(6か月以上前に)目標レベルへと行動を起こした状態)について解説し,そのステージに合ったアプローチを紹介したRuggiero氏は,「患者はこれらの各ステージを長期間にわたり,行ったり戻ったりする」ことを強調。援助者は,その人が現在いるステージを見据え,決して無理をせず,ステージに合ったサポートを行うことが重要であると述べた。

 セミナーはこの後,石井均氏が登壇。Ruggiero氏の講演に対する2,3の質問を投げかけたうえで,ケーススタディとなった。ケーススタディは参加者による少人数でのグループディスカッションによって行われ,Ruggiero氏が提示した事例の各自己管理項目(食事,運動,喫煙など)について,それぞれ「患者はどのステージにいるのか」「どのような援助が有効か」がグループごとに議論された。