医学界新聞

 

傾向と対策,合格体験記

医師国試――今年の傾向と今後の対策

吉田和樹(佐賀大学卒/亀田総合病院研修医)


 ご存知の通り,医学部医学科を卒業するともらえる「医学士」は単体では役に立たず,晴れて医師としての第一歩を踏み出すには国家試験での合格が欠かせません。まずは相手を知ることで,より効率のよい戦略を立てられるようにしましょう。

国家試験の形態
 A問題からI問題の9セクションに分かれており,3日間で1日3セクションずつという構成になっています。今年は出題ガイドラインの変更もあってか,日程に変化が見られました。

 問題内容は例年通り,症例問題になっている「臨床」,一問一答式の「一般」,8割死守が求められる「必修」からなっていましたが,例年2日目にあった「必修」100題が,B問題,C問題として,1日目に出題されました。これは受験生として精神的な負担が大きかったです。全体の日程や時間配分は,時間割表を眺めるよりも,同一形式で構成されている模試を受験することでわかってくると思います。

傾向と対策:臨床問題
 最近の傾向として,やや突っ込んだ内容になってきたのではないかと思います。疾患自体は比較的メジャーなものが多く出題されますが,最小限の知識だけでなく,さらに「もうちょっと」のところが要求されています。おなじみのAPL(AML M3)の症例では,治療薬としてATRAともう一剤を選ばせるような問題で,受験者の間でも答えが割れていました。

 また,子宮外妊娠の問題は未破裂の症例で,治療法として腹腔鏡手術とメソトレキセートを選ばせるものでした。セミノーマの症例は,いつも通り高位精巣摘出と放射線療法を選びたいところでしたが,転移巣があって化学療法が正解のようでした。

 特に印象が強かったのは産科で,非常に実践的な症例で臨床的な判断を求められるような問題でした。産科の勉強は教科書を読んでもなかなか理解しにくいので,問題演習を十分に行い,症例を模擬体験しておくのがよいでしょう。よく勉強している医学生でも産科は手薄だと思いますので,しっかりやっておいてください。

傾向と対策:一般問題
 泌尿器系でこだわりが強すぎるのではないかと思われる問題も見られましたが,全体としては今回は難易度が高くはなかったように思います。一般問題のほとんどは普通に勉強していれば取れますが,安全圏までいくには問題演習が欠かせません。

傾向と対策:必修問題
 今回は,異様なまでに存在感がある必修問題でした。当然必修問題ですから全体的には当たり前の問題が多く,それほど難しくはないのですが,中にはいくつか強烈な問題がありました。

 その最たるものは,膝の関節穿刺の部位を答えさせる問題でしょう。最終的には難しすぎたためか除外となりましたが,類似の問題に肛門の診察所見を書き入れる際に使われる図を選べというものがありました。

 このように必修問題に関しては,臨床実習でしっかり興味を持って学習することを要求している印象でした。手技などの概念を理解するのが大切と思われます。また高血圧で見られる所見として腹部(血管)雑音を選ばせる問題もありました。腎血管性の高血圧を想起してからでないと解けないという思考ステップを踏ませる問題で,必修でもこのレベルのものが出るのか,と驚きました。

“正統派の勉強”が理想的

 国家試験対策に時間を費やしすぎるのはやめましょう。一番理想的なのは,ケーススタディーをしたり教科書を読んだりと,正統派の勉強をして知識や思考力を蓄え,興味を持って臨床実習を行い,基本的な手技などを実際に見ておく。そして6年生の後半に国家試験対策を必要に応じて追加するという形でしょう。どうか「対策」に躍起になってしまわずに,よりよい勉強をしてください。

 神経をすり減らしながらの試験日の3日間は長いです。集中力が保てるように気分転換しましょう。私は試験時間が長いセクションでは途中でトイレ退出を使って,一度頭をすっきりさせてから問題とマークシートの見直しをしていました。

 国家試験が終わると,学生最後の長期休みがあります。いろいろと不安になると思いますが,「予後」には影響しませんのでたっぷり骨休みしてください。ただし,合格後には医師免許申請の手続きがありますので,戸籍と登記されていないことの証明書は早めに入手しておいた方がよいでしょう。手続きについて,もう一度見直しておくことをおすすめします。

第99回医師国家試験合格者発表
傾向と対策,合格体験記
 ○合格体験記――マッチング後の国家試験