医学界新聞

 

世界有数の消化器内視鏡ライブに

「The Yokohama Live 2005」成功裡に開催


国内外から約500名が参加 -豊富・多彩なプログラム

 The Yokohama Live 2005-4th Yokohama International Endoscopy Conference with Live Demonstration(第4回国際消化器内視鏡セミナー)が,さる2月11-12日の両日,新横浜プリンスホテルおよび昭和大横浜市北部病院の2つの会場をつないで開催された。主催者はcourse directorの工藤進英氏(昭和大横浜市北部病院消化器センター長・教授),共催は昭和大消化器内視鏡国際センター(ILCE)。北は北海道から南は沖縄まで全国の若手消化器endoscopist,海外からの参加者を含めて約500名が参加した。

 2日間のプログラムは例年通り豊富・多彩。ライブ5コマ(準備時間を除いても通算約7時間),各ライブを挟んでのミニレクチャーが12コマ,ランチョンレクチャーが2コマ,全体講評が2コマと内容的にも時間的にも濃密なセミナーとなった。

質の高いライブが展開される

 ライブでは,長時間のフライト,時差をものともせず海外facultyのChristopher Gostout氏(Mayo Clinic College of Medicine教授・前米国内視鏡学会長),日本でもその著作が知られるNib Soehendra氏(University Hospital Hamburg-Eppendorf教授),Gregory Ginsberg氏(University of Pennsylvania教授)などが精力的かつ鮮やかにライブを展開。日本のfaculty memberからは,小野裕之氏(静岡県立静岡がんセンター),小山恒男氏(佐久総合病院),木田光広氏(北里大東病院),鶴田修氏(久留米大),寺井毅氏(順大),藤井隆広氏(藤井隆広クリニック),藤田直孝氏(仙台市医療センター仙台オープン病院),真口宏介氏(手稲渓仁会病院),安田健治朗氏(京都第二赤十字病院),矢作直久氏(東大),山野泰穂氏(秋田赤十字病院),山本博徳氏(自治医大),井上晴洋氏(昭和大横浜市北部病院),工藤氏などわが国を代表する錚々たる顔ぶれが,“競演”といってよいかたちで,真剣・慎重・華麗な技術の粋を聴衆にアピールした(日本側facultyはこのほか千葉大・神津照雄氏,慈恵医大・鈴木博昭氏,同・田尻久雄氏,高知大・田村智氏,癌研病院・藤田力也氏,横浜船員保険病院・藤野雅之氏などがミニレクチャーなどで講演)。

 横浜市都筑区にある昭和大横浜市北部病院の消化器センター(内視鏡室,放射線室)で,診療協力に同意しかつ十分なinformed consentを経た26名の患者さん(消化管疾患,胆膵疾患)に対する内視鏡的診断・治療が行われ,そのライブ画像が新横浜プリンスホテルに同時放映された。病院と会場の間では活発なdiscussionが日英2か国語(同時通訳もあり)で行われた。会場の大画面に文字通り魅入られながら熱心にメモをとる多くの若い医師の姿もみられ,印象的であった。他方,昭和大の内視鏡センターでは,外国からの研修医も含めて熱心に実際の診断・治療を見学する姿や,そこに入りきれない多数の医局医師・看護師などが画面を食い入るように見ている姿が見られた。

工藤進英氏 「歴史と展望」を語る

 2日目9時よりcourse directorの工藤氏が「大腸早期癌の新しい診断と治療」と題して講演を行った。氏は秋田赤十字病院でそれまで“秋田の風土病”などとされてきた大腸早期癌の陥凹病変が,今日では世界的にすっかり認められるに至った経過を報告。とりわけ大腸IIc研究会の発足から暖かく時には激しく熱く見守ってきた故白壁彦夫氏(元順天堂大学名誉教授)が,自身の癌の転移に気づきながら「遺言」としての講演を研究会で行ったエピソードにも触れ,早期大腸癌診断・治療の現況と未来について論じた。

 診断面では,腫瘍の発育様式を加味した発育形態分類と拡大内視鏡観察によるpit pattern診断の意義を強調(国際的普及をも視野に入れたpit pattern分類「箱根合意」が先ごろ得られたことも含めて)。また昭和大学で進められている“生検なしの病理診断;仮想生検”を可能にするレーザーを用いたLCM(laser-scanning confocal microwave)やX線診断に代わる三次元CTの開発も紹介した。

 こうした野心的取り組みの一方で,氏らがこの10数年にわたって主張してきた診断分類などの国際的認知が大きく進み,病理分類のVienna分類に続き,2002年12月のParis分類では大きく日本側の主張が採り入れられたことを報告。また,消化管病理分類でも日本の主張がある程度世界的に受容されていること,さらには昨年末に開催された日米2か国消化器病学会のmeetingにも触れ,この間の新たな消化管診断・治療の流れを報告した。

 司会者である藤井氏はこの講演を受けて,1990年初頭から工藤氏の指導のもとに懸命に早期大腸癌の種々相を次々に明らかにしてきたこと,当時から拡大内視鏡診断を進めてきた経緯などを紹介。こうしたわが国の成果が国際的にも大きく花開いている現状のなかで,引き続き国際的協力と日本からの積極的発信の重要性を訴えた。また同様に司会を務めたGostout氏は米国における進展を詳しく紹介。即ち,消化管診断における内視鏡医の役割が飛躍的に拡大している中で,早期癌については病理診断などでなおcontroversialな点はあるものの次第に整理されつつあること,拡大内視鏡診断についてもMayo Clinicなどでの実績を踏まえ,これまで「複雑すぎて理解できない」といった従来の意見が変化し,特に治療内視鏡に興味を示す若いendoscopistが拡大内視鏡診断に大いに注目していることなどを報告し,世界的な連携を提唱した。

会場での感想 -充実感溢れる経験

 このThe Yokohama Live2005に島根県から参加したという医師は,「本会の魅力はなんと言ってもこのライブ。なかでも世界級のわが国のendoscopistの施術は“すごい”の一言。多くの参観者が見守る中で,しかも討論を行いながらきわめて手際がよい。“動き”を見ることができるのが参考になる。それに司会者は聴衆が疑問に思うだろうことをコンパクトに代弁して術者に聞いてくれる。司会者のよさも妙味。来年も参加したい」。また,九州からの参加者は,「ライブもよいがプログラム全体がいい。緊迫したライブの後,15分という短い時間で,咽頭・食道から胆膵まで12題も口演が聞ける。自分の専門領域とは違う最先端の知識がコンパクトな形で身につく。国際学会での発表にも役立つ。会費,旅費,宿泊費は自弁,学会のようなcertificationは得られないが“十分もとをとった”,という気持ちにさせられる」という感想を述べた。またこのセミナーには外国からの参加者も多い。その中で香港から来た参加者の1人は,「私は日本で進められている最新の治療法であるEMR(endoscopic mucosal resection)やESD(endoscopic submucosal dissection)に興味があるので参加した。自分の大学病院でやっている人はまだ少ない。自分もESDは数例程度の経験。機械のメンテナンスも安心になってきたので香港でもその機会は増える。来週からの臨床にすぐ役に立つセミナーだった」(Dr. Philip Wai-Yan Chiu)。同様に北京大消化器内科の劉正新医師は,「素晴らしい機会。もっともっとライブで勉強したい。このセミナーで実技指導をしている日本の先生方はぜひ中国でもやってほしい。今若い中国のendoscopistは特に治療内視鏡に興味がある」との感想。

 またこのセミナー全体についての感想として,第1回からsenior facultyとして参加してきた藤野氏は,「このセミナーは回を重ねるごとに参加者が増えてきたが,qualityも高いものになってきた。世界的なライブコースとして発展してきた感。質の高い講演が-例えば井上氏の講演(「食道癌の低侵襲治療」)のように-,若いドクターたちにもわかりやすくなされるのを見て,いよいよこの会の成熟振りを感じた。泰斗Soehendra先生も盛んに同様な意見を述べていた」と感想を述べた。

 こうした本会の成功の背景には,長期間にわたる周到な準備が必要である。主催者側である工藤氏,井上氏,樫田博史氏などをはじめとした昭和大の関連諸氏,さらには,患者さんの協力も大きいものであったとのこと。単独の施設として最大限の努力で行われたこのセミナー開催に対して,発言者やライブ演者から惜しみない賛辞が贈られた。なお,第5回目の開催となるThe Yokohama Live 2006は,2006年3月18-19日,新横浜プリンスホテルで開催される予定である。