医学界新聞

 

エンパワーメント実践上のポイントをレクチャー

第2回医学書院スキルアップセミナー「糖尿病ケアの知恵袋Part2」開催


 さる3月5日,第2回医学書院スキルアップセミナーが京都会館第2ホール(京都市)において開催された。「糖尿病ケアの知恵袋Part2」と題して行われた今回も,前回に引き続き石井均氏(天理よろづ相談所病院)が中心となって,糖尿病の療養援助におけるエンパワーメントを考えるセミナーとなった。プログラムとして石井氏による講義のほか,フットケア,事例検討などが行われたほか,会場では協賛のロシュ・ダイアグノスティックス株式会社によるデモンストレーション,有限会社フットクリエイトによる足病変患者用の靴紹介が行われるなど,現場の援助者を対象としたセミナーとなった。


エンパワーメントカウンセリングの自己評価法を紹介

 プログラムの最初に登壇した石井均氏は,エンパワーメント理論の概要を簡単に説明した後,「エンパワーメントカウンセリングの評価法」に重点をおいて解説した。自身の患者へのかかわり方を振り返り,その1つひとつを「感情や目標に注意を向けている(+2点)」「問題を掘り下げている(+1点)」「分類できない(0点)」「患者の代わりに問題解決(-1点)」「患者を批評する(-2点)」の5つに分類する。これにより,自分のかかわり方が,患者の力を引き出す役に立っているかどうかを分析することが狙いだ。

 エンパワーメントを意識すると,しばしば「単に相手をほめるだけ」のカウンセリングに陥りやすい。石井氏は,この評価法を使うことによってそうしたカウンセリングを自分で分析・改善していくことができると述べた。

 特別プログラム「糖尿病患者のフットケア」では,阿部邦子氏(京大病院)が,自身のフットケア外来立ち上げの経緯と,看護師が行う足病変予防について概説した。阿部氏がフットケアに取り組みはじめたのは5年前のこと。現在では後任の看護師に引き継いでいるが,多くの患者に継続的にフットケアを行っている。阿部氏は「当院でも,はじめは道具も人もありませんでした。まずはできるところからはじめることが大切です」と呼びかけた。

 最後のプログラムとなったパネルディスカッション「実践! エンパワーメント」では,看護師の桐生史江氏(藤沢市民病院)と米田昭子氏(平塚共済病院)がそれぞれ看護師役,患者役に扮装して登場。プロの役者さながらの演技で療養指導の困難場面を演じ,会場に療養指導上の問題点を投げかけた。その後,石井氏が進行役となり,会場も交えてコミュニケーションのとりにくい患者との療養指導の工夫を議論した。

 最終的には石井氏,阿部氏も米田氏演じる患者への療養指導に挑戦。桐生氏も含め,3者3様の援助のありようが提示されることとなった。即興で行われたこれらの援助は臨場感の高いもので,石井氏も「(桐生さんや阿部さんの援助は)日々,臨床で患者さんと深いやりとりをしている臨床の援助者だからできること」と述べ,理論頼みとなるのではなく,臨床での経験を積み重ねることが,エンパワーメントにおいては重要であるとまとめた。