医学界新聞

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


DSM-IV-TR ケーススタディ
鑑別診断のための臨床指針

橋 三郎,染矢 俊幸,塩入 俊樹 訳

《評 者》樋口 輝彦(国立精神・神経センター武蔵病院院長)

症例は典型例が中心,鑑別診断の指針に力点をおいた初心者向けの書

 DSM-III以後に出版された症例集としては「ケースブック」が親しまれてきた。症例を通してDSM-IIIの理解を深めることを目的に,1981年Spitzer博士によって刊行されたものであったことはどなたもご存知のことであろう。その後,DSMが改訂される度に改訂され,直近では2002年にDSM-IV-TRケースブックが出版された。しかし,DSM-III-RがDSM-IVに改訂される際に編集責任者がSpitzer博士からAllen Frances博士に交代となったことを機に,新たな症例集が出版されるに至った。これが「DSM-IVケーススタディ」である。今回,翻訳出版された「DSM-IV-TRケーススタディ」は2000年初版の改訂版である。

 本書は17章で構成されている。それぞれの章は「ケーススタディ」(症例提示)にはじまり,DSM-IV-TR診断,診断基準の記載に続いて,鑑別診断のための指針,病型,治療計画で構成されている。

 双極I型障害を例に本書の特徴である詳細な「鑑別診断のための指針」を紹介したい。症例は比較的典型的な双極I型障害の女性であり,気分に一致した精神病症状(幻声,思考障害)を伴う。II軸診断は該当せず,III軸もなしである。「鑑別診断のための指針」では,最初に単極性うつ病との鑑別に言及している。その中で注目されるのは,「慢性的うつ状態の患者がときに示す寛解期を躁状態と見誤らないこと」という説明である。次に物質使用による躁病様の症状との鑑別であり,かなりのスペースを割いている点は米国の物質使用の深刻さを反映している。もう1点物質使用の関係で取り上げているのは抗うつ薬による治療誘発性の躁病エピソードの扱いである。DSM-III-Rでは抗うつ薬によると考えられる躁病エピソードであっても障害診断を双極性障害に変更することとされていたが,DSM-IVでは「大うつ病性障害と物質誘発性気分障害,躁病性の特徴を伴うもの」という2重の診断を採用したことを解説している。さらに高齢者が示す躁症状は身体疾患が背後にある可能性を疑うよう警告している。精神病症状が存在する場合には,躁病相と一致している場合は双極性障害と診断し,躁病相を越えて続く場合は失調感情障害と診断するという明確な説明がおこなわれている。躁病の場合にはパーソナリティー障害の診断をつけるには慎重でなければならないことを強調している。

 症例は典型例中心に記載されており,診断そのものはさほど困難ではない。力点は鑑別診断のための指針に置かれているようであり,治療計画はごく教科書的内容でやや物足りなさを感じる。訳者である橋三郎先生も序の中で指摘されているが,ケースブックが統合失調症,気分障害,不安障害に多くのページを割き,多くの症例を提示しており,読み物として面白い,言い換えれば初心者向けというよりかなりの経験を有する精神科医にも有用な内容であるのに対して,ケーススタディは初心者向けの教科書の色彩が濃いと思われる。

A5・頁416 定価6,300円(税5%込)医学書院


感染症レジデントマニュアル

藤本 卓司 著

《評 者》市村 公一(東大特任講師・先端科学技術研究センター)

感染症診療への意識向上のきっかけに

 昨年全国臨床研修指定病院の取材の一環として市立堺病院を訪問した際,たまたま夕方の内科カンファレンスで藤本卓司先生のお話を聞く機会に恵まれた。内容は,本書巻頭にあるグラム染色の染色パターンによる細菌の見分け方と,それをもとにした「抗菌薬感受性の覚え方(本書356-359頁)」であった。非常にクリアカットなわかりやすいお話で,「これは聞き逃すまい」と取材そっちのけで手帳にメモした。その後訪問した病院では,研修医の方と感染症診療が話題になる度にそのメモを見せ,「市立堺病院に藤本先生という方がいらして,この先生のお話はとてもわかりやすくて参考になるから,機会があればぜひ聞くといい」と勧めたものだ。またそのメモも,全国の研修医が活用できるような手立てがないものかと思っていたが,ここに藤本先生ご自身による感染症マニュアルが登場し,どの病院の研修医でも藤本先生の「講義」を受けられるようになった。このことを,まず一番に喜びたい。

 いろいろな臨床研修病院を見て回ると,医師(研修医)自らグラム染色を行い,全員がポケットに『サンフォード感染治療ガイド(熱病)』を入れ,広域の抗菌薬は感染症科の許可がなければ使用できないよう制限している病院がある一方,研修医が『熱病』の名前さえ知らない病院もあって,感染症に対する意識にきわめて大きなバラツキがあることを思い知らされる。研修先として病院を見る医学生には,この感染症への取り組みがその病院の診療・研修に対する姿勢を測る格好の指標にもなろう。

 一時はヒトが制圧するかに見えた細菌,ウイルスとの戦い。しかし,結核の再興やSARS,鳥インフルエンザの出現などを見れば,21世紀も病原微生物との戦いに終わりはなく,死に至る病の1つとして感染症の重要性が下がる気配はない。殊に集団的な死につながる院内感染の問題は,医療事故と並んで医療の安全性に対する社会的信頼を大いに失墜させるものであり,すべての医療従事者が真剣に取り組むべき最重要課題の1つであろう。本書ではその院内感染予防が最初に述べられている。これも藤本先生ならではの慧眼だろう。

 このポケットサイズのマニュアルの登場を機に,医師,特に研修医などの若い世代に感染症に対する意識が高まり,日本の感染症診療のレベルが向上することを大いに期待したい。

B6変・頁412 定価3,990円(税5%込)医学書院


知っておきたい
医療監視・指導の実際

櫻山 豊夫 著

《評 者》佐藤 牧人(仙台市健康福祉局参事兼青葉保健所長)

医療機関の管理上の問題点や事故に至った経緯などを具体的に示す

 今ほど医療機関が医療行為の安全性の確保や院内感染防止対策に真剣に取り組んでいる時代はないと言っても過言ではない。現場の管理者はもちろん,医療スタッフ全員が,当たり前のことをていねいに取り組みながら相当の工夫と努力を払っている。しかし,残念ながら事故や院内感染事例は後を絶たず,患者からの苦情やマスコミへの対応に苦慮する状況がみられる。

 一方,保健所・行政は長年,医療法に基づく病院の監視(立入検査)業務を行ってきた。ともすると形式的な監視にとどまりがちだった立入検査は,この数年,反省を込めて各自治体で急速に見直しが進められており,本来の目的である良質かつ適切な医療の提供体制の構築をめざした検査のあり方が模索されている。

 本書は,長年,医療監視・指導に従事し,また患者中心の東京発医療改革の中核を担って活躍中の著者が,豊富な自験例に基づいて書き下ろしたものである。医療安全や院内感染防止対策に腐心する管理者には適切な管理のための新たな視点を提供し,立入検査に従事する保健所・行政の職員にはきわめて実際的なチェックの要諦を示してくれる。まさに,非常にタイムリーな出版である。

 本書はまず,とかく厳めしく受け取られがちな医療監視のねらいがどういうものであるのか,また,どうあるべきなのかを医療法の理念に立って,大変やさしくわかりやすい言葉で教えてくれる。私は著者とともに医療機関への立入検査がいかにあるべきかの調査研究を進めてきた間柄であるが,著者は「立入検査を受ける病院の向こう側には健康な暮らしと安心できる医療を求める患者,住民がいる」という信念の持ち主である。立入検査は医療機関の欠点のあら探しではなく,患者,住民にとって安心できる良質な医療を確保するための医療機関と保健所・行政の協働作業なのである。このことは医療機関と行政職員の双方で共有していただきたい大切な姿勢である。

 本書の特徴は,数多くの事例を通じて医療機関の管理上の問題点や事故に至ってしまった経緯などを具体的かつていねいに示しているところにある。各事例の終わりには学ぶべきポイントが簡潔に示されており,非常にわかりやすい。口語調で書かれた文体は,著者と一緒に病院に出かけて検査をしているような臨場感を抱かせるが,行間に医療機関を支援しようとする著者の温かいまなざしと豊かな包容力が感じられる。全体にソフトな語り口であるが,医療法の理念を医療監視を通じて具現化したいという著者の強い信念が見てとれる。

 立入検査で監視指導する行政側が手の内をみせることは,従来あまりなされてこなかったことである。しかし検査のルールを透明化し,その目的を医療機関と共有することは,結果として,患者や住民にとって好ましい医療が育つことになり,著者が本書に込めたねらいもそこにある。医療監視員をはじめ保健所・行政の職員にとっては,本書は,立入検査の実際がわかりやすく提示されている必読のテキストである。

 一方,病院管理職の方々にとっては,本書を通して立入検査の趣旨を理解し,数多くの事例を通して,内部からの視点だけでは気づきにくい,医療安全や院内感染防止の新たな管理のポイントが身に付くと思われる。積極的に医療安全を進めようとしている病院の管理者,そして業務の質の向上をめざす保健所・行政職員の双方にぜひ読んでもらいたい,今の時代が求めているテキストである。

A5・頁240 定価3,360円(税5%込)医学書院


脈絡膜循環と眼底疾患

清水 弘一 監修
米谷 新,森 圭介 編

《評 者》三宅 養三(名大教授・眼科)

膨大な臨床例を背景にしたICG解釈に,著者の哲学がにじむ

 埼玉医大眼科の米谷 新教授のライフワークが1冊の本に見事にまとめられた。蛍光眼底造影の進歩は糖尿病網膜症の病態解釈とその的確な治療に大きな貢献をしたのに対して,インドシアニングリーン(ICG)蛍光造影は脈絡膜血行動態が把握でき,加齢黄斑変性の診断と治療に欠かせない方法に発展した。米谷教室は以前より脈絡膜血管,ICGに関してその基礎と臨床の両面から多くの新しい知見を報告してこられたが,年間600例近いICGの膨大な臨床例に米谷先生自身が全部目を通してこられたとのこと,まさに臨床家の鏡である。当然米谷先生の頭の中にはICG解釈の自分の世界も形成され,それを後世に残したいという願望は手に取るようにわかる気がする。その結果,少々偏向とも思えるマニアックな解釈があるかもしれないと序文に述べておられるが,それが本当の面白い本ではなかろうか。現在いたるところに分担執筆で書かれた書物が氾濫しているが,編集者の責任と独断で一本の流れを感じさせる本は皆無といってよい。まさに大部分が人のふんどしで相撲をとっているたぐいの本ばかりである。

 久しぶりに著者の哲学がにじむ本に巡りあえた気がする。脈絡膜の解剖と生理からはじまり,ICGの読影の基礎,脈絡膜血管構築とICG流入パターン,脈絡膜血管の可塑性等の臨床疾患の解釈に必要な内容が米谷教室のデータをもとにわかりやすく説明され,ついで各論では網脈絡膜疾患が網羅されている。文中,しばしば著者の意見が書かれており,これがまた大変興味深い。加齢黄斑変性のみならず,ICGは多くの網脈絡膜疾患の解釈に貴重な情報を提供することが実によく読み取れる。

 次の3つの理由により一読に値する本として,広く眼科医にご推薦申し上げる。
1)脈絡膜血行の特殊性が理解できる
2)ICGの特性,読影がマスターできる
3)本はこのように書くものという著者の哲学が学べる

A4変・頁204 定価21,000円(税5%込)医学書院


カプラン 臨床精神医学テキスト
第2版
DSM-IV-TR診断基準の臨床への展開
Kaplan & Sadock's Synopsis of Psychiatry, 9th Edition

ベンジャミン・J・サドック,バージニア・A・カプラン 編著
井上 令一・四宮 滋子 監訳

《評 者》越野 好文(金沢大教授・脳情報病態学)

精神医学の全領域に加え,司法や倫理の問題にも踏み込んだ記述

 アメリカ精神医学には,精神医学と行動科学の教育を促進することを目的に,FreedmanとKaplanらが開発した総合教育システムがある。その頂点に,1967年に初版が刊行されたComprehensive Textbook of Psychiatry(CTP)がある。CTPを簡潔にまとめ,改訂したのが『Synopsis of Psychiatry(カプラン臨床精神医学テキスト)』である。CTPの単なるミニアチュアではなく,それを補完するものである。1972年に初版が発行され,精神医学の最新エビデンスを取り入れて改訂が繰り返され,1冊の独立したテキストとして発展を遂げた。

 本第9版はアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」の最新版であるDSM-IV-TRに準拠しているが,世界の精神医学と歩調を合わせるべく,WHOの「疾病と関連保健問題の国際統計分類第10版(ICD-10)」も,アメリカの教科書としては最初に取り入れて,比較している。

 ここで,内容を紹介すべきではあるが,目次だけでスペースがなくなる。DSM-IV-TRの全疾患に加えて,精神医学の全領域を網羅し,さらに司法や倫理の問題にまで及んでいる。また,「終末医療と緩和医療」「精神医療における倫理」などいくつかの新しい章も登場した。精神薬理学では,抗うつ薬は不安障害の治療に使用されることが少なくないなど,従来の抗うつ薬,抗精神病薬という分類は,臨床における実態を反映していない。そこで薬物は薬理活性と作用機序によって分類された。例えば抗精神病薬は,「ドパミン受容体拮抗薬:定型抗精神病薬」と「セロトニン-ドパミン拮抗薬:非定型抗精神病薬」になった。慣れるまで多少とまどうかもしれない。

 個人的なことになるが,まだインターン制度があったアメリカで,レジデントに率いられたインターン生が指導医と堂々とディスカッションしていたのを筆者は思い出す。あのディスカッションは,このような行き届いた教科書によって獲得した確実な知識に裏付けられていたのだ。その知識を基礎にしてアメリカの医学生,研修医の精神医学の実力が臨床の現場で鍛えられていく。

 カプランの『シノプシス』の最新版がノーカットで邦訳され,われわれもアメリカ精神医学の実力の源泉を容易に活用できるようになった。井上令一先生,四宮滋子先生をはじめとする順天堂大学精神医学教室関係の36人の先生方に心から感謝したい。

B5変・頁1,560 定価19,950円(税5%込)MEDSi


小腸疾患の臨床

八尾 恒良,飯田 三雄 編

《評 者》田尻 久雄(慈恵医大教授・内視鏡科)

全消化器病医が待ち望んでいた小腸疾患の現在の集大成

 本書編者の福岡大学・八尾恒良教授と九州大学・飯田三雄教授は,これまで消化器病領域において数々のマイルストーン的な先進的業績を発表されており,日本国内にとどまらず,世界の消化器病学界でのオピニオンリーダー的な先生方である。一方では,消化器病医としての基本的手技,読影,診断に関しても決して妥協のない厳格なものを求められ,両先生の下で指導を受けた多くの先生方が,現在,各方面で活躍されている。

 さて,つい最近まで小腸は暗黒の大陸と称され,解剖学的な困難さも手伝って,診断や治療において非常にアプローチが困難な領域であった。これまでに消化器領域の名著はいくつかあったが,こと小腸疾患に限ってみるともの足りない印象があることは否めない。しかし,X線検査をはじめとする基本的手法以外に最近の数年間はカプセル内視鏡やダブルバルーン法による小腸内視鏡などの画期的な発展があり,急速にその扉は開かれつつある。このような状況下で,小腸疾患について,最新の進歩が加味された診断・治療にわたるゴールドスタンダードとなる書が望まれていた。今回,小腸疾患を中心にこれまで長年にわたる豊富な経験をお持ちの両教授が中心となり,まさに全消化器病医が待ち望んでいた小腸疾患の現在の集大成となる書が出版された。

 本書は,総論と各論から構成されている。総論では,小腸疾患に関連する診察方法の記載がまずあり,続いて各種の画像診断,すなわち小腸診断に欠かすことのできないX線検査法からはじまり,最新のカプセル内視鏡・小腸内視鏡を含むさまざまな検査方法が詳細にその専門家によりバランスよく執筆されている。各論では日常診療を行う際に遭遇すると考えられるあらゆる小腸疾患が網羅されている。疾患ごとにその概念の解説が的確になされ,診断と治療にわたり現在得られる最高水準の情報が得られる。さらに消化器病専門医であっても小腸疾患は経験する機会が少なく,仮に経験しても良質な画像は得られにくいが,本書で特記すべきことは,疾患ごとにきわめて多くの,説得力のある鮮明な写真を取り入れていることである。また,解説にはその根拠となる文献も記されており,その妥当性・信頼性を客観的に示している。このような配慮は,実際に疾患に遭遇した際に非常に参考となり大変親切な配慮と言える。

 したがって,本書は消化器病を学びはじめた初学者にとどまらず,専門医レベルの先生方にも自信を持ってお勧めできる。また,それぞれの医療機関においても日常診療の際に傍らにおいて絶えず参考として使用されるべき書として推薦する次第である。

B5・頁440 定価18,900円(税5%込)医学書院


H. pylori発癌のエビデンス

菅野 健太郎,榊 信廣 編

《評 者》杉村 隆(国立がんセンター名誉総長)

H. pyloriと胃がんの関係を強く示唆

 ヘリコバクター・ピロリ菌の胃粘膜感染と胃がん発生は,色々な方向からの研究成果と情報分析により,きわめて強い関係があることは間違いない。

 菅野健太郎博士と榊信廣博士の編集による『H. pylori発癌のエビデンス』は,この重大な問題をきわめて正確に記載している。それぞれ固有の業績をあげられた方が執筆している。これ以上の人選はない。

 本書は三部に分かれている。すなわち,I.臨床的アプローチ,II.基礎的アプローチ,III.関連トピックス,である。特筆すべきは,各分担者がわが国であげた,特長あり,得手とする業績を書いているために,全体として臨場感のある印象を与え,単に医学のある部分の教科書的記述でなく,最近の発展をダイナミックに感じ取ることができる。医学書としてもユニークなものになっている。

 内容はH. pyloriと胃がんの関係が強く示唆され,当然とられるべき対策に討論が及んでいる。スナネズミが感染実験動物として日本で発見されたので,臨床と基礎が融合することができた。関連トピックスとして,MALTリンパ腫についても十分な記載がある。

 胃がんの遺伝子変化はepigeneticなものを含めて多様であり,統一的なシェーマの提出には慎重な方がよいかもしれない。本書の最後にAP-PCR法が紹介されている。つい最近もAP-PCR法の開発にかかわったManuel Perucho博士(The Burnham Institute, USA)のセミナーを聞いたが,大腸がんの発生に重要な役割を果たしているAPC,RAS,p53の遺伝子について,これら3つが独立した事象と仮定すると,同時にこの3つの変異を持っているものは,計算上は大腸がん全体の 9/31 × 8/34 × 12/28 = 約3% を占めているにすぎない。

 東南アジア等のH. pylori感染と胃がん,さらに感染ルートについて解析の詳細等が加えられると,一層充実したものになる。

 本書の読者は多いと思う。現時点で満点に近く,胃がんにかかわるすべての臨床,基礎学者,また予防健診に携わる人々に,ぜひ御一読をお勧めする。

B5・頁256 定価9,450円(税5%込)医学書院