医学界新聞

 

新春随想
2005


「Strike while the iron is hot」

中村清吾(聖路加国際病院外科医長)


 昨年は,医学教育の面でも激動の年であり,新臨床研修制度が始まって,既に1年が経過しようとしている。医師国家試験に合格後,将来どの分野に進もうとも,医師としての基本となる技術や知識は共通に身に付けようというのが,本制度の基本理念である。私が卒後研修を行った聖路加国際病院は,20年以上前から,ほぼ同様のシステムを取り入れており,私自身,卒後すぐに,内科(2か月),小児科(1か月),産婦人科(1か月)などで研修した。短い期間ではあったが,先輩が苦労をしながら新生児の血管確保をするのを手伝ったり,10例のお産に立ち会うことを義務とされ,当直室で今か今かとスタンバイしていたことを昨日のことのように思い出す。その後は,外科レジデントのコースに入った後も,整形外科,泌尿器科,麻酔科などを3か月ずつローテートし,本格的な外科医としてのトレーニングは2年目の後半に入ってからであった。

 現在,日常診療の大半は,乳癌患者を診ている(乳腺専門医)が,全人的医療を実践するうえで,初期研修および一般外科を専攻した後期研修は,ともに専門医として貴重なバックボーンとなっている。日本では,「鉄は熱いうちに打て」あるいは「三つ子の魂百まで」,米国では,「Strike while the iron is hot」または,「You can't teach an old dog new tricks」ともいうが,この時期にいかに充実した研修プログラムを提供できるか,教育担当の他科の先生方と試行錯誤しているところである。

 今後の医療は,ますます高度化,専門分化していくが,前期研修,後期研修を経て,どのようなプログラムで専門医を育てるか,また,専門医間,あるいは,プライマリケアを担う一般臨床家との間のコミュニケーションをいかに円滑に保つか,などが重要な課題である。しかし,全人的医療,患者中心の医療という基本理念を忘れずに,個々が知恵を絞れば,今まで以上の良医を育てることが可能であると信じている。