医学界新聞

 

MEDICAL BOOK REVIEW


糖尿病患者のフットケア
フットケア外来のシステムとケアの実際

京都大学医学部附属病院看護実践開発センター 編集

《評 者》安酸 史子(福岡県立大看護学部長・成人看護学)

現場を変えるナースの軌跡とその成果

 看護師の,看護師による,看護師のための待望のフットケアの本が出版された。

 本書は,「今までわれわれは,経験と勘を頼りに足のリスク分類をしてきた。しかし,経験のない新人でも,迷わずにリスク分類できる方法はないだろうかとずっと考えてきた」と,フットケアのベテランの技を可能な限りモデル化し,新人でも活用できる実用書に仕上げてある。本書は以下の7つの部門で構成されている。

 「Iフットケア外来ができるまで」「IIフットケア外来の体制と業務」「III糖尿病と足病変」「IVフットケアに必要な看護アセスメント」「Vフットケアの基本技術」「VI糖尿病患者の状態に合わせたケア」「VIIはきもの-くつ・くつ下の選び方」である。

 今後,自分の病院でフットケア外来を立ち上げたいと考えている看護師にとっては,I部とII部は具体的で現実的なロールモデルの紹介だと思う。「まずは現在いる看護師で,やれることからはじめることが大切である」と力むことなく,医師をはじめ周りの専門家を徐々に巻き込みながら,体制作りをしていく様は見事である。足病変の発生機序や治療法を勉強したい人は,III部を読むとよい。具体的なフットケアの実際をまず知りたい人は,V部から読みはじめるとよい。写真やイラストを多用し,看護師の視点での具体的なフットケアについての知識や技術が満載され,さらに靴選びに関して専門家・靴店まで紹介してある。

 秀逸なのは,IV部のアセスメントの方法である。『どんなに丁寧なケアができていても,ハイリスク患者を「ハイリスク」と認知できていないことほどリスキーなことはない』と述べ,最大危険因子である神経障害を軸に,独自のリスク度アセスメント基本図を考案している。検証例は少ないとしているが,具体例を示しながらアセスメントの実際を解説しているので,フットのアセスメントを行う際の頼りになるガイドといえる。ただし,このリスク度アセスメント基本図に関しては,フローチャートとしてはもう少しすっきりできたらと欲張りな感想を持った。今後検証を続け修正もしたいと考えている,とあるので期待したい。

B5・頁140 定価2,100円(税5%込)医学書院