医学界新聞

 

放射線治療の最前線を紹介

第17回日本放射線腫瘍学会開催


 2004年11月18-20日の3日間にわたり,第17回日本放射線腫瘍学会が,辻井博彦会長(放医研重粒子医科学センター長)のもと,千葉市の幕張プリンスホテルにおいて開催された。今回のテーマ「より強く!より優しく!」に表されているように,放射線科医の努力と技術の進歩によって,動体追跡装置や粒子線を用いた治療など,放射線治療はさらなる発展を遂げている。シンポジウム「より強く,よりやさしい放射線治療を目指して」(座長=蘇生会総合病院・井上俊彦氏,癌研究会癌研究所・伊藤彬氏)では,こうした最新の放射線治療についての知見が紹介された。

さらなる治療効果をめざして

 放射線治療において精度を高めることは,腫瘍周辺の正常組織への害を減らし,強い線量を集中して照射できることにつながる。白土博樹氏(北大)は,精度向上には次元の増加が最も貢献してきたことを強調。現在の3次元から,次は時間軸上の精度向上を実現する4次元放射線治療の時代であるとし,動体追跡装置を利用した放射線治療について説明した。この手法では照射中にも腫瘍位置をリアルタイムに把握し,腫瘍の動き・変形に合わせて照射ができることから,動きのある大きな腫瘍などに対して有効である。

 続いて鎌田正氏(放医研)は,炭素イオンを用いた重粒子線治療について口演。重粒子線はブラッグピークと呼ばれる物理学的特徴を有し,患部への線量集中性に優れている。また線量も高く細胞致死効果も高いため,氏は「がんの放射線治療に理想的な超高精度治療の実用化につながる」と期待する一方,現行の装置は大型,高コストであることが普及に対する壁となっており,小型化・低コスト化を課題とした。

放射線治療品質管理士に期待

 能勢隆之氏(市立豊中病院)は腫瘍内部に放射性物質を刺入することで治療する小線源治療について「腫瘍組織に高い線量を集中できることが小線源治療の利点」と述べた。しかし,計測装置で線源の線量を計算したうえで頭頸部癌患者61人に刺入して実測したところ,実測線量は計算線量の87%±17%となり,臨床的な投与線量にはぶれがあったことを報告。まだ医学物理的検証の必要があるのではないかと指摘した。

 根本建二氏(東北大)の施設では,放射線療法と化学療法を併用する化学放射線療法において,食道がんを中心に良好な治療成績をあげている。氏は,化学放射線療法の普及は単に治療成績の向上だけでなく,標準療法として放射線治療の適応拡大につながるとし,放射線治療の高精度化と,新規抗がん剤の開発に期待を寄せた。

 最後に,座長の伊藤氏は「放射線治療技術を日常診療の場で安全に患者へ提供するには,その物理的原理と技術を理解したスタッフによる臨床チームのサポートが不可欠」と強調,本年度より認定が行われる「放射線治療品質管理士」への期待を述べ,シンポジウムのまとめとした。