第32回日本頭痛学会が,上津原甲一会長(鹿児島市立病院)のもと,さる11月12-13日の両日,鹿児島市のかごしま県民交流センターにおいて開催された。今回設定されたメインテーマは「片頭痛の治療の確立をめざして」。現在,片頭痛治療は特効薬であるトリプタンの登場によって大きく変わっており,学会としてこの普及をめざす姿勢が示される形となった。
1988年に国際頭痛学会から「国際頭痛分類」が刊行され,頭痛診断の標準化が進んだ。この刊行から16年を経て,本(2004)年,「国際頭痛分類 第2版」が刊行され,日本頭痛学会ではその翻訳を行い,ホームページ上で公開している。本学会ではこの新しい分類をもとに,日本における片頭痛診療の現状について議論される機会が多く設けられた。
議論に先立ち,五十嵐氏が「日本における片頭痛診断の実態および片頭痛医療に関するアンケート調査」と題し,アンケート結果をもとに話題を提供。まず,大学病院に通院中の片頭痛患者に対するアンケートにおいて,頭痛を意識してから片頭痛と診断されるまでの年数を調査したところ,平均で10.4年かかっていることがわかったと報告。また,インターネットで「繰り返す頭痛のために受診経験のある20-49歳までの女性」を対象に行った調査では,国際頭痛分類に従えば片頭痛と診断される症例についても,実際に診断されていた患者は約30%に過ぎなかったと紹介した。
氏は,日本では緊張型頭痛と判断する理由として「頭痛の時に肩がこる」をあげる医師が最も多いことを紹介。しかし,片頭痛患者の70-80%に首・肩のこりや痛みがあり,肩こりは片頭痛発作のさまざまな時期でおこるという理由から,「肩こりは片頭痛と緊張型頭痛の鑑別にならない」と結論づけた。また,片頭痛の痛みは必ずしも常に片側性,拍動性ではないことをあげ,このことによって片頭痛の非典型例が見逃されやすいという結果につながっていると指摘した。
片頭痛は日常生活に支障をきたすほどの強い痛みも特徴であるが,氏はこの点についての認識も広まっていないことを指摘。「日常生活への影響」について患者に尋ねる医師が少ないことが診断率の低下を招いているとし,片頭痛を見逃さないためのポイントとして,「ときどき同じような頭痛があるが,頭痛がない時はなんともない」,「頭痛が起こると日常生活に支障をきたす」という2点がそろえば,片頭痛の可能性大として診断基準で確認すべきと提言した。
坂井氏は,かつて,「日本に片頭痛患者はほとんどいない」と言われていたことを紹介。しかし現在,診断基準をもとにみると頭痛を主訴に受診するほとんどの患者が片頭痛であることを指摘し,この問題はしっかり検証していく必要があるとした。
平田氏は,「肩こりによる頭痛」と「片頭痛の随伴症状としての肩こり」とがあると述べ,これに関連して立岡氏も,片頭痛患者においては,よく頭痛の予兆として肩こりがおこると発言。問診の際,「最初に肩がこり,痛みがだんだん上がってきて頭が痛くなる」という話が出た際,ここで質問をやめると診断を誤ってしまうとし,これに加えて「動くと頭痛がひどくなる」,「日常生活に支障がでるほど痛む」というポイントをおさえることが正しい診断に必要であることを指摘した。
議論の終わりに座長の岩田氏は,同学会で頭痛専門医制度の準備が進められていることにも言及し,世の中に頭痛診療の現状と,正しい診療を広めていくという役割があると述べ,まとめとした。
それぞれの演者による口演の後に行われたパネルディスカッションでは,平田氏から,緊張型頭痛による痛みは,国際頭痛分類では悪くても「中等度」(通常の活動への支障はあるが全面的ではない)とされており,頭痛で受診する患者は「高度」(すべての活動が支障される)の場合が多いと指摘。これを受けて寺本氏は,頭痛患者に対しては片頭痛の可能性から追っていくという考え方もあると述べた。
また,藤田氏は小児の場合,小児でも強い頭痛についてはきちんと治療すべきであり,片頭痛のある子が,不調を訴えても単に「サボり」と決めつけられないよう,教育現場の教員や養護教諭にも理解してほしいと訴えた。
座長の福内氏も議論のまとめの中で同様の話題に触れた。氏は,日本における片頭痛患者数は,国際頭痛分類に照らしてみれば高血圧の患者に匹敵するほどの数にのぼっていると発言。しかしそのうちの大多数がきちんと診断されていないことから,医師にも相手にされず,家族,職場でも理解されないという状態に置かれており,最後には患者自身が周囲に申し訳ない気持ちにまでなってしまう場合があると現状を述べ,プライマリケアの現場での片頭痛診療レベル向上の必要性を強調した。