第2614号 2004年12月20日


神経心理学の持つ可能性

第28回日本高次脳機能障害学会開催


 さる11月25-26日,第28回日本高次脳機能障害学会(旧日本失語症学会)が,河村満会長(昭和大)のもと,東京ベイホテル東急(千葉)において開催された。100を超える一般演題とともに,メイン会場で行われた特別講演,シンポジウムなどでは,脳の知的情報処理機構の仕組みに焦点を絞った内容となった。また,その締めくくりとして行われた,クロストークでは,終了後学会長自らが楽器演奏を披露するなど,大いな盛り上がりを見せた。


高次脳機能障害学会の可能性

 会長講演「神経心理学への挑戦:中間報告」では,河村氏が,自身の神経心理学研究の軌跡を振り返り,学会の現在のあり方を問い直した。

 河村氏は,希少症例の分析による大脳病変の神経症候学としてはじまった神経心理学の研究領域が,現在のように幅広いものとなってきた経緯を概説。MRIなど画像診断技術の進歩が,その発展を後押ししたと説明した。

 その内容として,河村氏は学会の研究成果の中でも,純粋失書,街並失認など,多くの症例で検討され,一般的な知見として広まったものが少なくないことに触れた。また,近年の同学会の演題には痴呆や感情・記憶障害などにかかわるものが増えてきているとしたうえで,それらがさらに急性期診断・治療,リハビリテーションなどの臨床的側面と,いわゆる脳研究的側面に2分されていく傾向にあると述べた。

 このように神経心理学という学問分野が広がりを見せる一方,高次脳機能障害患者の診療体制はまだ十分ではない。河村氏はこれについて「専門家医師の育成」と「さまざまな立場を包括したグループからなる診療体制」の確立が必要であると述べた。

ユニークなクロストークが催される

 学会2日目,最後のセッションとして企画されたクロストーク「日本語の表現と表情」には,多くの参加者が詰めかけた。

 クロストークのはじめには,河村会長とともに司会を務めた樋口覚氏(文芸評論家)が,漢詩の大和言葉による読み下し方法を紹介し,日本語と日本の仮名が持つ特殊性を解説して,トークの口火を切った。

 クロストークには歌人である水原紫苑氏,神経内科医の岩田誠氏(東女医大)が参加。水原氏は自身の作品である短歌の朗読や,他の参加者の紹介する詩などに対し,現役の歌人・文筆家として,「現場」の見解を示した。また,岩田氏は失語症学の見地から日本語の機能を語った一方,趣味で続けているフランス語の詩の翻訳を朗読。河村氏も「知らなかった」という岩田氏の意外な一面に会場からも感嘆の声があがった。

 クロストークの最後には,河村氏,岩田氏がそれぞれ楽器を手にモーツァルトを演奏。非常にユニークなクロストークは,学会長自らの演奏によって幕を閉じた。

 次回,第29回日本高次脳機能障害学会は2005年11月25-26日に,種村純会長(川崎医療福祉大)のもと,川崎医療福祉大(岡山)において開催される予定。

URL:http://www.higherbrain.gr.jp/