医学界新聞

 

チームで育てる新人ナース

がんばれノート
国立がんセンター東病院7A病棟

[第3回]優先順位をつけること
主な登場人物 ●大久保千智(新人ナース)
●末松あずさ(3年目ナース。大久保のプリセプター)


前回よりつづく

 右も左もわからない新人がその悩みや不安を書き込み,プリセプターや先輩ナースたちがまたそれに答える「がんばれノート」。国立がんセンター東病院7A病棟では,数年前から,新人1人ひとりにそんなノートを配布し,ナースステーションに常備しています。

 入職2週間の大久保さんと,その指導を受け持つプリセプターの末松さん。早く慣れてほしい治療・処置もあったので,時間があれば他のスタッフの受け持ちも見学するよう計画を立てていました。

 しかし,見学のために受け持ち患者への処置が後回しになってはいけません。事故やインシデントに対する危機感や,自分に課されている責任の重大さを,はじめのうちにきちんと理解してもらいたいという末松さんの指導がノートから見えます。

 一方で,末松さん自身は,プリセプターとしての責任感や忙しさから,自分自身のコントロールができていないと思い悩み,また,厳しい指導をしすぎていると,大久保さんが萎縮してしまうのではないかという申し訳なさがありました。そういう思いもあって,ノートではできるだけ,大久保さんを誉め,ほかのスタッフにも大久保さんの良さをわかってもらいたいと考えていたということです。


今回の登場人物
大久保千智,末松あずさ

4/17 ●末松
 今日は優先順位に少し触れてみました。受け持ち以外の処置を見学することをプランに入れていたので,それにも入らなくちゃと思ったのだろうなと思いますが,自分の受け持ちの患者さんを見るのは大久保さんです。責任も大久保さんにあります。後回しにできること,できないこと,今みなくてはいけないこと,いつでもいいことの判断ができるようなっていってください。

 少しずつアセスメントにも関連性がでてきたり,考えることが広がってきていると思います。優先順位をつけることはすごく難しいことで,しばらくこれで悩むと思いますが,少しずつ身につけていってください。

 明日から3連休,うっぷん晴らすくらい寝たり,遊んだり,人と話したり,食べたりしてきてください。きっとすごくストレスフルな日々だと思いますが,日々成長していると私は感じています。私も大久保さんを通してすごくいろいろなことを学んでいます。また来週もよろしくお願いします。

4/17 ●大久保
 いつもたくさんのメッセージをありがとうございます。いつまでたっても同じことができないでいたり,気づいていないことだらけで,いつも帰りのバスや電車の中で反省しています。患者様にももちろん迷惑なことだし,末松さんをはじめチームの皆さん,また7Aの皆さんにたくさんの心配と迷惑をかけていることを本当に申し訳なく思う毎日です。でもたまに「昨日できなかったことが今日はできた」と思えた時,すごく嬉しくて,次の日の活力になります。

 病棟へ来て2週目。まだ学生のような気分でいる自分に気がつきました。受け持ち患者様に対する責任感が不十分だと思いました。昨日したこともそうだし,患者様から「看護婦さん」と呼ばれるとはっとします。初めてのお給料もいただいて,自分はただ勉強するためだけに来ているんじゃないんだ,看護を仕事としてやっていかなければ給料をもらう資格なんてないんだ…と,改めて考えさせられました。

 昨日のミスは本当に大きなミスです。すごく落ち込んで,反省して,この先自分はナースを続けていっていい人間なのか考えました。でもやっぱり今日もAM4:30に起きて「病棟に行きたい」と思いました。同じミスを二度としないようによく考え,努力していきたいと思います。また末松さんやチームの皆さんにはこれからもご迷惑をかけてしまうと思いますが,温かく厳しいご指導,よろしくお願いします。

大久保 病棟勤務をはじめて2週目のノートです。この頃は業務の流れを覚えるのと同時に,仕事の責任や優先順位について厳しく指導を受けた記憶があります。そんな矢先,患者さんの点滴に関してミスを起こしそうになったり,手術直後の患者さんの状態を十分観察しなかったことがありました。今考えると,観察や確認の重要性を軽く考えていたのだなと思います。先輩に注意されるたび,また,自分で自分に納得できないたび,情けなくなり暗い気持ちになることが多かったのがこの頃です。しかし,どんなに辛くても翌日には必ず仕事に行きたいと思いました。何もかも初めて見たり聞いたりする1週目に比べて,何か1つでもできたことの喜びを一番感じることができた時期であったからこそ,このように感じたのだと思います。


病棟紹介
国立がんセンター東病院7A病棟は,病床数50床,上腹部外科・肝胆膵内科・内視鏡内科の領域を担当している。病床利用率は常に100%に近く,平日は毎日2-3件の手術,抗がん剤治療・放射線治療,腹部血管造影・生検・エタノール注入などが入る。終末期の患者に対する疼痛コントロールなど,新人にとっては右を見ても左を見ても,学生時代にかかわることがない治療・処置ばかりの現場である。

関連書籍紹介
『はじめてのプリセプター 新人とともに学ぶ12か月』(川島みどり,陣田泰子編集)
 本連載に登場するプリセプター,末松あずささんの新人時代のがんばれノートが収録。がんセンター東病院の新人教育が学べる,プリセプター,プリセプティ,看護管理者必携の一冊。