がん治療の目覚ましい進歩によって治療成績は向上し,近年では治療後のQOLが重視される,「やさしいがん治療」が求められるようになっているという背景から,今学会掲げられたメインテーマは「心」。各科データベースに基づいたがん治療指針や,専門医制度といった学会としての取り組みの他,各科の最新の治療法や緩和医療なども含めたさまざまな角度からの話題が取り上げられ,心あるがん治療をめざした議論がなされた。
特別企画「癌治療専門医制度を考える-国民により良いがん治療を提供するシステムについて」(座長=慶大 北島政樹氏,国立がんセンター研究所 廣橋説雄氏)では,学術集会前日に同学会理事会で承認された,「日本癌治療学会がん治療専門医制度」の概要が報告された他,がん治療にかかわる各学会が進める専門医制度についても紹介された。また,厚生労働省,日本医師会のそれぞれの立場からもがん医療について発言があり,国民がよりよいがん治療を受けることができるための課題が議論された。本号ではここでなされた議論の一部を報告する。
そのうえで氏は,日本癌学会は専門医制度をサポートしていく立場にあるとし,その立場から貢献できうることとして,臨床研究につながる可能性のある基礎研究を推進させることや,トランスレーショナル・リサーチの基盤を構築し,臨床と基礎研究の連携を図ることをあげた。また,学会の方針として確定してはいないものの,がん治療専門医のための研修カリキュラムに必要な基礎的知識を習得するための企画を,同学会学術総会前日の企画などとして作っていきたい考えを示した。
座長の北島氏が腫瘍教育講座の必要性について指摘すると,今井氏は,大学に腫瘍医学講座を立ち上げられるよう働きかけていくことも日本癌学会の役割になると述べ,がん医療の充実は卒後教育だけでは難しくなるとの考えを示した。この問題に関連して,佐々木康綱氏(埼玉医大)が会場内から発言。「現在でも卒前教育はあることはあるのだが,系統立っていないことが問題。卒前から卒後までつながる,一貫性のある教育が必要」と指摘した。
氏は,医療事故が続いたこともあり,国民からのがん治療専門医を求める声が強まったことから,がん治療にかかわる全科を含む最大の学会である同学会が専門医制度を作る必要があったと説明。その目的について,全診療科におけるがん治療の共通基盤となる臨床腫瘍学の知識・技術に習熟することなどと紹介した。最初の専門医認定試験は2005年の10月に行われ,2006年1月にはがん治療専門医の第1号が誕生する予定だ(専門医制度認定要件等の詳細については,同学会のホームページを参照されたい)。
さらに氏は,がん治療専門医制度のめざす姿として,癌学会や腫瘍外科系学会,臨床腫瘍学会などとの連携についても視野に入れた取り組みをしていくことを強調し,締めくくりに,「内科だけでも,外科だけでもできない,すべての科が協力して治療にあたっていくことが,『心あるがん治療』ということではないか」と述べ,がん治療における集学的治療・各科専門医の連携の重要性を示唆した。
氏はさらに,がん治療専門医の必要条件として,すべての治療法を理解し,適切な治療法の選択ができることを第一にあげ,これが最も遅れており,特に正しく放射線治療の適応を理解している医師が少ないと指摘した。
また,私見として,がん治療においての外科療法,薬物療法,放射線療法は別枠であろうこと,また,疾患別・臓器別のがん治療の専門医は治療法の進歩を共有しにくいといった点を指摘。さらに,第三者機関によるがん治療専門医認定が必要になるとの考えを示した。
各施設ごとの報告の後に会場も含めたディスカッションの機会が設けられた。すでに外来化学療法専任の医師が配置されている施設もあるが,議論の中では,外来化学療法の実施については各診療科によって温度差があり,コスト的な意味でも専任は難しく,外来化学療法導入にあたっては,担当医師を兼任で配置するという形が院内のコンセンサスを得やすいのではないか,などといった指摘もあった。また,外来化学療法実施当日の患者の状態によって薬剤の減量を検討しなければならない際の判断はどこがするかという問題については,基本的に主治医が判断するという施設と,外来で判断する場合がある施設とがあることが明らかになった。