第2610号 2004年11月22日


不必要なオムツ使用を一喝

第3回「市民の立場からのオムツ減らし研究学会」シンポジウム


 さる10月2日に,NPO法人「市民の立場からのオムツ減らし研究学会」(理事長=田中とも江氏)による第3回シンポジウム「尊厳ある排泄ケア」が,横浜市の横浜市健康福祉総合センターにおいて開催された。現在施設では,本来オムツが必要でない高齢者でも,1度ベッドを汚してしまっただけでオムツを使用されてしまうといったことが少なくない。また,一度オムツが使われるようになると,その後も漫然と続けられる傾向にある。田中氏はこうした不必要なオムツ使用がいかに高齢者の尊厳を損なっているかを指摘し,各地で「オムツ外し」の指導,講演を行ってきた。

 今回のシンポジウムでは,福島県で行われた高齢者排泄自立支援事業の様子をビデオで紹介するとともに,介護の現場や行政の立場から議論が行われた。

1人ひとりの排泄パターンを把握

 ビデオ「オムツからケアの原点が見えてきた」では,福島県内の4施設において,田中氏の指導のもと「ノム・ダス」(排泄・飲水記録表)による排泄パターンの把握にはじまり,排泄時間を予測したトイレ誘導などに取り組んだ結果,オムツが不要となった高齢者が出てきたことが紹介された。

 施設長を務める五十嵐信子氏(特別養護老人ホーム ハーモニーハウス)は,今回の取り組み以前の同施設について「入居時にオムツ使用であればそのまま継続」,「尿意・便意がわからなければオムツを使用する」といったオムツの利便性に依存した介護を行っていたと振り返り,交換も個人ごとではなくユニットごとの定時交換であったことなど,問題点があったことを述べた。

 また,取り組み中のスタッフの反応について,最初のうちは「事業としてやらされている」といった感覚が強かったが,ケアにおける問題が浮き彫りとなったことで,問題解決へ向けてスタッフ全員が活発なカンファレンスを行うようになり,ケアの質が向上したという。

 続いて小泉修一氏(福島県保健福祉部)は今回の高齢者排泄自立支援事業について,排泄実態調査によって県内施設の寝たきり高齢者の8割がオムツを使用している実態が明らかとなり,排泄自立支援の必要性を感じたと説明。「こうした取り組みを行った施設がすべて改善されるわけではない。より普遍性のある方法論を見つけるために今後も継続していきたい」と述べた。

ケアの改革は現場の声から

 桑野康一氏(シルバーチャンネル主任研究員・カメラマン)は今回カメラマンとしてビデオの製作を担当。事業前と後とでは高齢者の表情が変わったことにふれ,「寝たきりの人が排泄を改善されることによって,生き生きと活動できるようになるのだということを実感した」と述べた。

 川崎初美氏(理学療法士)はこうした活動を今後継続していくには,見学受け入れや学会発表などの情報発信だけでなく,「外部からの評価」が必要であると指摘。評価されることはモチベーションの維持につながり,またこうした過程でいかに人材を育成していくかが課題であるとした。

 最後に登壇した田中氏は,ケアの改革は現場の声を社会に伝えることで実現すると強調したうえで,「今の介護はあまりにも安易にオムツ使用のうえに成り立っている。このことがどれほど高齢者の尊厳を損なっているか,いかに間違ったことなのかを検証していきたい。『まずオムツありき』の常識をなくしたい」と今後の活動への意欲を語った。

「田中とも江の福復5か条」
・食事はなるべく全量摂取する。
・水分は1日1500cc以上飲む。
・出る前に誘導できる心配りを。誘導時には状態をよく見る。
・オムツに排泄しても15分以上は濡れた状態にしない。
・1日6時間以上はベッドから離れて生活する。