《書 評》山野恒一(大阪市大教授・発達小児医学)
本書は「今日の小児治療指針」とペアで企画され,1988年2月に初版が発行された。第4版は5年ぶりの改訂である。これまで本書の編集企画は小児科学会のベテランの先生が携わってこられたが,今回は若さあふれる新進気鋭の先生が担当され,随所に新しい企画が盛り込まれ,新鮮な思いで読ませていただいた。
書名のごとく,本書は臨床の場で小児疾患の診断に役立つ書として世に出された。多くの小児科医は目前におられる患者さんの診断に関する知識を確認するためによく利用されてきたのではないかと思う。確かに,本書第3版は限られたスペースに小児疾患の診断に役立つ項目を的確に選び,明瞭簡潔に記載されているが,実際使用してみると何か不足を感じていたのは私だけではなかったと思う。
第4版の構成は“正常発達の評価”,“バイタルサインの見方・取り方”,“症候編”,“検査編”の4章からなり,小児の139疾患の診断基準,診断の手引きが付録として掲載されている。第4版で特筆すべき点は検査編の中に,各種培養,細菌・ウイルス感染症迅速診断,生理検査,病理検査,心理検査,知能検査の6項目が新たに追加されたことである。これらは小児科臨床の現場で重要な項目であるが,第3版では取り扱われていなかった。第3版で抱いていた物足りなさはこの点であった。
このほか第3版でも取り上げられていた画像診断の項目はページ数が増加し,45ページとなっており,各疾患に特異的画像とその説明がなされている。本書第4版は小児科の臨床現場での知識確認に使用するだけでなく,知識を整理する意味で通読することもお勧めしたい。本書は小児の症候学,臨床検査医学の教科書としての風格を漂わせているように私には感じられた。
《書 評》藤盛孝博(獨協医大教授・病理学)
本書は,世界中の多くの病理学者が診断の礎としている外科病理学の教科書といっても過言ではなく,実用書としての有用性には定評がある。Lauren V Ackerman(1905-1993)による著書として1953年に初版が出版されて以来,すでに50年以上の歴史がある。前回の改訂から8年が経過し,Juan RosaiにとってはAckermanを亡くして2回目の改訂版である。この第9版では4000を超える図がすべてカラーで掲載され,今風の仕様として組織像およびその説明が付属のCD-ROMにも収録されている。CD-ROMはPDFファイルとスライド形式が選択できるようにプログラムされており,選択した画像(スライド)の編集も容易である。序説やマクロ観察,特殊技術の3章を筆頭に,臓器別内容が28章にわたってまとめられている。そのほとんどはAckermanとRosaiの手によるものであるが,肝臓(Valeer J. Desmet),腎臓(Nelson G. Ordonez),骨髄(Richard D. Brunning),中枢神経(Marc K. Rosenblum),末梢神経・骨格筋・下垂体(Juan M. Bilbao, Lee Cyn Ang)はかっこ内に示した各々の専門家が執筆している。また,巻末の“付録”には報告書の書き方や検体の扱い方あるいは臓器の切り出しなどについても簡潔にまとめられている。
1970年代において,炎症から腫瘍までを網羅した外科病理学の教科書は『Ackerman's Surgical Pathology』ひとつといってよい時代であった。まさに,『Ackerman's Surgical Pathology』は病理医を志す医師,病理学に興味を示す医学・医療従事者,さらに病理専門医にとって必読すべき一書であった。その評価は今も変わらない。私自身,書庫には分冊前の旧版1冊,分冊後の3版分(6冊)と今回の第9版2冊が並んでいる。私が医学生から病理医として研鑽した歴史とも一致するものといえる。埼玉医大の病理学教室で御指導賜った吉井隆博教授(旧版)や,毎日通勤電車で本書(分冊後の最初の版,1970年後半)を読み物代わりにしておられた片山勲教授からこの本の素晴らしさを伺ったことが,どれだけその後の病理学を生涯の仕事とするモチベーションを高めてくれたことであろう。
最後に若干手前味噌になるが,2004年5月,筆者は医学書院から単著で『消化管の病理学』を上梓することができた。その製作過程で,この膨大な領域を網羅するRosai and Ackerman's Surgical Pathologyがどれだけの労力と時間を初版の完成に必要としたかを感じることができた。今回の9版は改訂に必要とした8年が決して長過ぎたということはないと思われるくらいの完熟したものである。
以上総論的な書評になったが,各論の1つひとつを評価するのは購読した読者諸氏1人ひとりにお願いしたい。決して損させない本である。すべての医師および医学に従事する方々に推薦したい。
A4変・頁3,036 定価50,610円(税5%込)MOSBY
《書 評》潮見泰藏(国際医療福祉大助教授・理学療法学科)
理学療法における臨床実習では,学生が体験した症例のレポートを完成することで実習が完結することがいつからか常識となっている。その是非はともかくとして,自らの実習体験を整理し,ていねいに書きまとめるという経験は,臨床思考過程を理解し,実際にそれを実践する能力を身につけるうえで不可欠と言える。
よい文章を書くためにはよい文章を読むこと,そして,よいレポートを書くにはよいレポートを読むこと,これが一番の近道である。その意味で,理学療法士をめざし,日々研鑽を積まれている学生の皆さんにとって,本書がよきお手本としておおいに活用されることを心から願っている。
B5・頁152 定価3,360円(税5%込)朝倉書店