第2607号 2004年11月1日


金原一郎記念医学医療振興財団贈呈式開催


 さる9月29日,金原一郎医学医療振興財団(理事長=理化研脳科学総合研究センター所長 伊藤正男氏)による「第19回基礎医学医療研究助成」の交付対象者として34名(助成総額1510万円)が選出され,東京都文京区の医学書院本社において第36回認定証贈呈式が開催された(助成対象者および研究内容)。

 同財団は基礎医学の振興を目的として1986年に設立され,(1)基礎医学医療研究助成,(2)研究交流助成,(3)留学生受け入れ助成,(4)研究出版助成の4つの助成事業を行っている。

 開会に際して,挨拶に立った金原優同財団常任理事(医学書院代表取締役社長)は,「この財団は医学書院を中心として出版・印刷に携わる方々からの寄付によって運営されているため,ささやかなものではあるが,これを機会にさらに研究にご活躍いただきたい」と祝辞を述べた。

 認定証の贈呈の後には,同財団理事で選考委員長の野々村禎昭氏(東大名誉教授・(財)微生物化学研究会理事長)が登壇。今春に国立大学が独立法人化されて以来,非常に応募数が増えたことにふれ,「研究の質も高くなり,各選考委員の間で議論に議論を重ねたうえで,大変な労力を要して決定した」と選考時の苦労を語った。そして「本財団では『生体の科学』という基礎医学系の雑誌を発行しており,これへの投稿を含め,今後も積極的に研究に励んでいただきたい」と激励した。

 最期に受賞者代表として「ブローカ野のより正確な機能同定」を研究テーマとしている幕内充氏(東大)が挨拶に立ち,「ビジネスにつながる研究が重視される昨今,基礎的な研究に理解と支援を惜しまない貴財団に深い感銘を覚えた」と選考委員ならび財団関係者に謝意を述べた。

 また自身の研究について「大脳にあるブローカ野は発話の中枢とされてきたが,言語以外の行為でも活動していることがわかってきている。言語以外のブローカ野の機能を追究し,われわれ人間の特殊な能力である“言語”の一端を明らかにし,新しい言語観を世に問いたい」と抱負を語った。

●金原一郎記念医学医療振興財団
 第19回基礎医学医療研究助成金
 交付対象者とその助成対象(研究内容)

(1)朝日通雄(阪大/生化学・分子生物):筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA)の制御因子の機能解析とその医療応用
(2)石井功(精神神経セ/遺伝子工学):システイン生合成酵素(シスタチオニンガンマライエース)の生理的役割の解析
(3)石川哲也(岡山大/機能解析):神経特異的作用を持つペルキオキシソームタンパク質の同定と作用機序の解明
(4)猪原匡史(京大/脳病態生理):パーキンソン病のトランスジェニックモデルマウスの開発
(5)岡本安雄(香川大/生化):アナンダミドの生合成に関わる新規ホスホリパーゼDの機能解析
(6)加藤将夫(金沢大/創剤):抗癌剤による消化管毒性における薬物トランスポーターの関与と副作用回避の研究
(7)木下和生(京大/進化遺伝):発癌における内在的突然変異誘導因子と外的因子の相互作用解析モデルの機構
(8)河野寛(山梨大/外1):感染症における中鎖脂肪酸の免疫栄養学的有効性の解明と臨床応用目的とした基礎的研究
(9)阪倉長平(京府医大/消化器外):胃癌の新しい癌抑制遺伝子RUNX3の細胞分化・癌化機構の解明と発癌予防・治療への応用
(10)澁谷浩司(東医歯大難治研/分子細胞生物):TGF-βおよびWntシグナルクロストークが関与する新規癌化機構の解明
(11)関賢二(京大/形態形成機構):変形性関節症におけるBone Morphogenetic Proteinの作用点の解明
(12)谷垣健二(滋賀県成人病セ/遺伝子):神経機能におけるNotch/RBP-Jシグナルの役割の解析
(13)田部陽子(順大/臨床病理):レチノイン酸および脱アセチル化阻害剤FK228による前骨髄性白血病細胞への多剤耐性MDR1遺伝子発現とdoxorubicin耐性化誘導の分子生物学的機序
(14)田村充利(東北大/婦人):COX-2選択的阻害薬の腫瘍増殖・浸潤・血管新生に対する抑制効果の分子機構の解明-子宮内膜症実験モデルマウスを用いた検討
(15)筒井正人(産業医大/薬理):一酸化窒素合成酵素遺伝子改変マウスにおける生活習慣病の分子病態解明
(16)中尾光善(熊本大発生セ/器官制御):メチル化DNA結合タンパク質の生理機能と病態関連性に関する分子医学研究
(17)中西真(名市大/代謝細胞生化):染色体DNAを安定して維持するチェックポイント機構
(18)中道一生(感染研/ウイルス1):新規脳疾患治療薬スタチンがミクログリアの活性化シグナリングを抑制する分子メカニズム
(19)西頭英起(東医歯大/21世紀COE):筋萎縮性側索硬化症における運動神経細胞死分子機構の解明
(20)林琢磨(信州大/移植免疫):子宮肉腫の発症機序におけるイムノプロテアソームLMP2の関与
(21)久岡正典(産業医大/病理1):ヒト軟部腫瘍における腫瘍特異的融合遺伝子の機能解析
(22)福嶋伸之(近大/分子神経生物):大脳皮質神経幹細胞の運命決定におけるリゾホスファチジン酸受容体の役割解明
(23)幕内充(東大/音声医学):ブローカ野のより正確な機能同定
(24)松浦勝久(東女医大/循環器内):成体マウス心筋前駆細胞の心筋分化機序の解明と心筋再生能の検討
(25)松川昭博(熊本大/機能病理):CCケモカインリセプター8(CCR8)による自然免疫制御機構の解析
(26)松田正(北大/衛生化学):シグナル伝達分子STAT3修飾酵素の解析
(27)松田守弘(阪大/個体機能):新たな脂肪特異的Cre発現マウスを用いた脂肪特異的SREBP/SCAP欠損マウスの作成および解析
(28)眞部孝幸(奈良医大/解剖2):前脳基底部の神経伝達物質発現を規定する転写因子群の機能解析-移植・再生医療への応用をめざして
(29)水島徹(熊本大/薬学微生物):がん細胞におけるDNA複製制御機構の変化
(30)森下竜一(阪大/臨床遺伝子治療):内皮細胞増殖因子(VEGF)の血球・血管の幹細胞に与える影響-アフリカツメガエルを用いた解析
(31)山下俊英(千葉大/神経生物):中枢神経の軸索再生阻害機構の解明
(32)湯浅健(京大病院/輸血細胞治療):膀胱癌に対する核酸を用いた新規治療法の開発
(33)吉田健一(明大/分子発生):DNA複製因子によるヒトパピローマウイルス複製制御
(34)吉田成孝(旭川医大/解剖1):多発硬化症へのオリゴデンドロサイトの関与に関する研究