第2606号 2004年10月25日


NURSING LIBRARY 看護関連 書籍・雑誌紹介


患者が人生最期の日を迎える時のケアガイド

《総合診療ブックス》
ギア・チェンジ
緩和医療を学ぶ二十一会

池永昌之,木澤義之 編

《書 評》馬場玲子(筑波大病院看護部)

死にゆく患者に対応するすべての医療者に

 この本を読み進めていくなかで著者の方々の,死にゆく患者へのコミュニケーション・ケアリングの実際にどんどん引き込まれていった。「編集のことば」のなかで,本書は緩和医療の専門医だけでなく,プライマリ・ケアの現場から救急病院や老人施設まで,死にゆく患者に対応するすべての医師と医療スタッフを対象としていると述べられている。内容は「重症患者と生の終わりについて話し合いを始める」「進行がん患者に『死にたい』と言われたとき」「救急医療においてCPR(心肺蘇生)の中止を家族にどのように伝えるか」などの21の症例からなり,各項目ともにコミュニケーションのエッセンスが凝縮された内容となっている。

 日々の臨床実践で出会う対応困難な場面で看護者がどのような態度やコミュニケーションのスキルを活用したらよいのか幅広い示唆を与えてくれる1冊である。患者,家族と共に過ごす時間が多い看護者の悩みに対応すべく,「返答に困る質問に答える」「とれない痛みにどう付き添っていくか」「看取りの時の言葉かけ」などの具体的な点にも触れられておりプロセスに寄り添うケアの実践のために役立つ内容が多く盛り込まれている。

 私たちは死にゆく患者から,決して避けて通ることができない人生の終末期,死について多くのことを日々学ばされる。これらの教訓が経験豊富な筆者らの手によって形となったこの1冊を1人でも多くの方々にぜひ読んでいただき,患者が人生最後の日々を迎える時のケアガイドとして活用することをお勧めしたい。

A5・頁232 定価3,885円(税5%込)医学書院


皆さんの施設でも“知恵袋”をつくってみませんか?

糖尿病ケアの知恵袋
よき「治療同盟」をめざして

石井 均 編集

《書 評》八幡和明(新潟県厚生連長岡中央綜合病院内科部長・中央健診センター長)

エンパワーメントアプローチの実践編

 日本糖尿病療養指導士制度が発足して,糖尿病の療養指導にかかわるスタッフの方たちは確実に増え,全国各地の施設で大きな成果をあげています。また療養指導士だけでなく他にも多くの人たちが,医療チームの一員としてそれぞれ活躍の道をさぐっていることでしょう。

 糖尿病の患者さんが将来にわたって悪化せず合併症を起こさないように指導をしていくことはとても面白く充実した業務ですが,時としてその指導が空回りしてしまうことがあります。一生懸命に指導するのに患者さんはなかなか変わってはくれません。どうやって指導すればいいのだろう,どうやったら変わってくれるんだろうと悩むことも少なくありません。

 そんなとき『糖尿病エンパワーメント』(石井均監訳,医歯薬出版,2001)に出会いました。エンパワーメントとは患者さんの中に眠っている問題解決能力を引き出して開花させることにあるという。なんとなくわかったような気がして,さっそく自分でもやってみようとするのですが,個々の人に向かうと具体的にどう対処していけばいいのかとまどうこともしばしばです。そんな悩みを抱いている人は決して少なくなかったのではないでしょうか。

 今回『糖尿病ケアの知恵袋-よき治療同盟をめざして』という本が発刊されました。本書はエンパワーメントアプローチの実践編にあたるといってもいいでしょう。この本では様々な治療困難例,例えば「仕事のつきあいのために食事が守れない人」「高齢で一人で治療をしていくことが困難なのに家族の協力が得られない人」など,いくつかの事例が紹介されます。そう,私たちもきっと出会うような人たちです。そういった人たちにどう接していけばいいのか,どうしたら相手が,また自分が変わることができたのか,そのポイントはなんだったのか考えられるようになっています。

皆で知恵を出しあっていきたい

 この本を読むと今までわれわれは一方的にこちら側の論理で患者さんを評価して,療養指導をしてきたのではないかとあらためて気づかされます。

 どうして食事を守ってくれないのだろう,どうして運動しないんだろう,なぜインスリンを受け入れてくれないんだろう。こちらが焦っていえばいうほど「よくわかっているんですけどね…」とか「食事指導なんてもう何度も聞きましたから…」という拒否的な態度にとまどってしまいます。そしてつい「手こずり症例」というレッテルを安易に貼ってしまっていないでしょうか。

 あるいは一生懸命指導しているのに相手が変わってくれないと,自分たちの指導技術が足りなかったんだと思いこんで,落ち込んでしまったり燃え尽きてしまったり(バーンアウト)するかもしれません。そうならないためにも,まず患者さんの言うことに耳を傾け,お互いに信頼できるよい関係(治療同盟)を作ることからはじめていくことが大切です。

 そして両者で目標を共有しそれに向かって知恵を出し合っていくことが前進につながるのかもしれません。時には焦らず「待つ」勇気も持つことを忘れないように。

 本書をヒントにしてみなさんがそれぞれの患者さんとのよき治療同盟を築いていけたら,この知恵袋はいくつもいくつもできていくことと思います。みなさんの施設でそれぞれの知恵袋を大きくふくらましていきませんか,そして本書の続編,あるいは続々編ができることを願っています。

B5・頁184 定価2,835円(税5%込)医学書院


豊かな思想性と実践に役立つグループ入門

「グループ」という方法
武井麻子 著

《書 評》村山正治(九州大学名誉教授)

 本書は看護師のために書かれたグループ入門書である。しかし,概説調の教科書ではない。現代の看護はもとより教育,グループを考え,生きる,人間とは何か,なぜグループは今必要なのかなど著者の豊かな思想性,学識,体験に裏打ちされた素晴らしい本である。気がつくと,全体を読んでしまっていて,本を持ち歩いている自分がいる。評者にそうさせるものは何か。それは本書全体に基調として流れている著者のグループ観によるものである。あとがきに集約されている。

グループと哲学

 「グループは特別なものでなくご飯と同じように毎日の生活の中にあるものであること,グループをどうとらえるかは,人間とは何か,生きるとはどういうことかといった哲学『考え方』につながっていること」という。これはたいへん新鮮な響きを持って評者の心をとらえた。こんなことを今まで誰か言っただろうか。本書にはグループから見た著者の日本文化論,最近の若者論,看護論,看護教育論,病院論など高い次元からの視点が魅力である。日本の類書に目をやると,グループのやり方とか,「構成エンカウンターと非構成」の比較といった技術論ばかりが花盛りの今日,実にすがすがしい本である。

 かといって具体的な提案などもたくさん盛り込まれていて,グループ実践に役立つ本である。深い内容を盛り込んだ本だが決して難解な用語をちりばめた本ではなく,著者の体験から出てきた言葉で書いているので具体的で実践的である。提案を1つだけ取り上げてみよう。著者は「3点観察法のすすめ」で,グループ全体の雰囲気,1人1人のメンバー,自分自身を観察することの重要性を説いている。これはファシリテイターでも,メンバーにも自分を体験し,感じ取る重要な視点である。

 今度は内容に触れておこう。本書は17章,180頁の中に,グループワークに関する必要で十分な内容がコンパクトに,かつシステマチックにグループに関する必要で十分な情報が整然と収められている。この点も著者の力量を感じさせる。読者のために目次をあげてみよう。グループワークその前に,グループワークとは何か,グループのちから,グループの雰囲気,グループの大きさ,グループのバウンダリー,グループへの参加,グループを観察する,グループのリーダー,グループの沈黙,分裂病者のグループ,グループで語る,グループとしての病棟,グループマインド,グループの記録,グループと家族,グループと教育である。

 巻末には詳細な文献注釈,さらに学習したい読者のために,日本語の参考文献があげられている。しかもその分野で重要なかつ最新の文献があげられている。著者の深い学識と読者への並々ならぬ配慮が感じられる好著である。看護学生や看護師のみならず,臨床心理士,ソーシャルワーカー,福祉関係者,NPO関係者,学校教員など関連領域の専門家にもぜひ読んでもらいたいし,地域で子育て支援,高齢者支援,不登校支援などのボランティア活動に取り組んでいる市民活動家にもぜひお薦めしたい本である。

A5・頁192 定価1,995円(税5%込)医学書院