医学界新聞

 

暗闇で自分が見えてくる

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク2004東京」開催


 視覚障害者に案内されながら,完全な暗闇の中で日常生活の様々な環境を体験するワークショップ形式の展覧会「ダイアログ・イン・ザ・ダーク2004東京」(以下DID)が9月4日まで東京都港区の梅窓院祖師堂ホールにおいて開催される。

 開催前日の7月30日には,発案者であるアンドレアス・ハイネッケ氏(哲学博士)がドイツから来日,東京都港区のTBS放送センターにおいて「五感を研ぎ澄ます」と題し,基調講演を行った。DIDはこれまでに16か国で開催され,およそ300万人が体験している。

見えないところに道を見出す

 氏はラジオ局で勤務していた際に視覚障害者の若いジャーナリストを教育した経験から,視覚に頼らない,見えない世界の素晴らしさについて“目を開かされた”という。そして「目の見える人は映像にもとづいた世界にとらわれがちだが,視覚以外の感覚から人間がいかに多くのことを感じているかを知ってほしい」ということがDIDの主旨であり,単なる視覚障害者のシミュレーションではないことを強調した。

 参加者は数人のグループを組み,森林や街中が再現された会場内を手探りで進んでいく。案内役を務める視力障害者の声に導かれ,お互いに声をかけ合い協力しながら,橋を渡り,階段を上り下りしているうちに,聴覚や触覚が普段に比べて鋭敏になっていくことに気づく。「見える人を暗闇に置くことで視覚障害者の持つ“見えないところに道を見出す”能力を活用してもらう」という氏の言葉どおり,視覚を遮断されても予想以上に行動できることに驚かされる。

しゃべらないと自分は存在しない

 また,暗闇では自ら声をかけない限り,相手に自分の存在を気づいてもらえないというのも日常生活とは異なる大きな特徴と言える。ハイネッケ氏は「DIDにはまず自分の感覚,つまり自分自身との対話という要素があるが,“しゃべらないと自分は存在しない”という他者とのコミュニケーション上の変化も大きな要素」と指摘する。

 講演の最後に氏は,「サポートするべき対象として認知していた視覚障害者が,DIDでは逆に私たちを導いてくれる。社会的に決まっていた秩序が再形成されることにも意義がある」と述べ,今後さらに世界各国の,より多くの人に体験してもらいたいと期待を語った。

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