第2597号 2004年8月23日


がん検診受診率向上へ課題山積

第12回日本がん検診・診断学会開催


 さる7月22-23日,第12回日本がん検診・診断学会が,金子昌弘会長(国立がんセンター中央病院)のもと,東京の国立がんセンター・国際研究交流会館で開催された。ここでは,がん検診受診率向上の方策について報告・議論のあったパネルディスカッションと,近年注目されているコンピュータによる診断支援(CAD)に関して議論が交わされたシンポジウムのもようを紹介する。


目標高く,受診率向上を目指す

 パネルディスカッション「がん検診の受診率向上を目指して」では,4人のパネリストが,それぞれの地域での取り組みを紹介し,議論を交わした。

 現在,全国有数のがん検診受診率を誇る富山県からは前田昭治氏(富山県健康増進センター)が登壇。1989年に発足した「富山県がん対策推進本部」の活動を紹介しつつ,がん検診普及の必要性とその方策を説いた。富山では上記の対策推進本部を中心に,各市町村に「がん対策推進員」を配置。住民の食生活改善,母子保健,ヘルスボランティア育成などの活動に取り組んでいる。前田氏は,全市町村でのマンモグラフィ実施の実現などを成果の例としてあげ,今後も対策推進本部での活動に取り組んでいきたいと述べた。

 こうした成果をあげる自治体がある一方で,全国規模でのがん検診受診率は,いまだ低い水準にとどまっている。パネルディスカッションの司会として発言した渋谷大助氏(宮城県対がん協会)は,その原因の1つとして,目標水準の設定そのものが低すぎるのではないか,と述べた。「健康日本21」が掲げる2010年におけるがん検診受診率の目標は,胃癌で33%,大腸癌で29%などと,軒並み45%以下の水準にとどめられている。一方で,例えば米国の「ヘルシーピープル2010」がかかげる2010年の受診率目標は大腸癌で50%などと高いものとなっており,日本でもこうした高い目標を掲げることが,受診率向上の第一歩になるだろうと述べた。

医療費削減の流れとがん検診

 しかし,仮に受診率を高くすることができたとしても,財政的な問題と,検診の質維持・向上の問題が残る。相津延美氏(京都がん協会)は,財政的な問題を中心にした,京都でのがん検診の現状と対策を紹介した。近年の医療費抑制政策の中,検診にかけられる市町村の予算には枠組が設定される傾向にある。京都でも,検診施設の選定には入札や合い見積りが導入され,検診価格はこの数年で40-60%下落しているという。

 相津氏は,「がん検診への潤沢な予算投入を求めるのは夢物語」としたうえで,低予算の中でいかに検診の質を低下させないかという質管理の工夫と,スピーディーな検診結果報告など,顧客にとって魅力的な検診企画を提示していくことなしには,検診機関が今後生き残っていくことは難しいだろうという見通しを述べた。

 一方,がん検診の一般財源化を含めた,制度への働きかけにはまとまったデータの裏付けが欠かせない。坪野吉孝氏(東北大)はがん検診に関する全国的・経年的な変化を追った資料が存在しない現状を指摘。単純調査を継続的に積み重ね,全国規模のデータ整備を進めていくことが,財政への働きかけも含めたがん検診受診率向上への第一歩になるのではないか,と述べた。

成果を上げつつある乳がんマンモグラフィのCAD

 シンポジウム「がん検診におけるCADの現状と将来」では,4人のシンポジストが,乳がん画像診断,胃X線,仮想化内視鏡,肺がんCTなどのコンピュータ支援診断(Computer Assisted Diagnosis:以下,CAD)の現状と展望を述べた。

 藤田広志氏(岐阜大)は,乳がん画像診断のCADについて,米国の状況を中心に解説した。乳がん画像診断では,すでに実用化しているマンモグラフィのCADと,開発段階にある乳腺超音波画像のCADが存在する。マンモグラフィのCADについては,米国では98年に最初のFDAの認可が下りて以来,複数の企業が商用化に成功しており,通常の読影のみの場合よりも20%近くの診断率向上をみているデータも存在する。一方,日本では厚労省の認可が下りているものは現在のところ1つだけであり,まだ一般の検診などに利用されるには至っていない。

 藤田氏は,実際のマンモグラフィのCAD使用について,映像を交えながら紹介し,CADの効果と限界について指摘。FDAのガイドラインでも,CADの使用はあくまで,「通常の読影」後に使用することと規定されており,その使用目的はあくまで,人の目を補う役割に限定されたものであることを強調した。

 CADの限界については,胃X線像のCADを紹介した吉永幸靖氏(九大)も同様に,現在のところCADは,医師の診断を補助する役割に限定して使用すべきレベルにとどまっていることを指摘した。

CADの現状は「診断の補助」

 このほか,仮想化内視鏡システムについては森健策氏(名大)が,肺がんCTのCADについては,仁木登氏(徳島大)がそれぞれ,現状を紹介。両者ともまだ商用利用は実現していないが,医師の診断を補助する目的で用いる限りにおいては,十分な力を発揮することを示した。

 会場からは,「現場の放射線科医は,毎日膨大な量の画像を診ることを余儀なくされている。CADは将来的に,放射線科医の読影量を減らすことに貢献するのか」という趣旨の質問が多く寄せられた。これについて吉永氏は,「厚労省もFDAもガイドラインでは,CADに先立つ医師による読影(ファーストリーディング)を要求している」と述べ,将来的にはともかく,少なくとも現在の技術水準では,CADのみによる診断は行えないという見解を示す一方で,乳がんマンモグラフィのCADなどは,医師の見落としをフォローする意味では十分に効果的であり,診断の補助としてのCADは今後普及の方向に向かうのではないかと述べた。