第2593号 2004年7月19日


「よりよい人生」を送るお手伝いがしたい

山田康介氏(更別村国民健康保険診療所長)に聞く


健康は幸せに生きるための条件

――家庭医療を実践されて感じていらっしゃる,「喜び」はどんなものですか?

山田 私自身も村民ですし,住民の皆さんといっしょに暮らして,ここに住む方々のつながりを知りながら,日々の診療にあたっていける,そういった「ともに生きていく」感覚が楽しいのかなと思います。

 「健康」はそれ自身が目的なのではなく,それぞれの人々が幸せに生きるための「条件」と考えています。地域が全体として健康になっていくことで,住民のみなさんがそれぞれ「いい人生」を送っていくお手伝いがしたいと思っています。それが,ここでは仕事としてやれそうな気がしていて,そのことが生きがいになっています。

家庭医に対する信頼

――逆に,家庭医療を実践する中で,つらいと思われた経験などはございますか?

山田 つらいなあと思いながら,でもこれは仕方のないことだと受け入れるようにしているのですが,やはり「家庭医」という存在が住民の皆さんに理解されにくいことがあります。患者さんがシンプルにイメージする「専門医」ではないことによる難しさですね。

 例えば,私たちが常々EBMを心がけ,その時点,その時点で間違いない診察,治療をしていて,患者さんが回復に向かっている時でも,ふっと「専門医ならどう治療するんだろう?」と思うと,専門医のところに行ってしまうんですね。よく言われることですが,「後から診た先生は名医」ですから(笑),大差ない診療を受け,回復した患者さんは必ずしも私たちをよく評価してくださるとはかぎりません。それによって診療所の医療は程度の低いものだと思われてしまうことが,特に更別に赴任したばかりの頃の大きな悩みでした。

 そこで,私は常に患者さんを不安にさせないために,治療の「ビジョン」を示すようにしました。治療計画を綿密に話すことで,患者さんからの信頼も得られてきているように思います。

これからの目標

――先生が現在,更別での医療で目標としておられることは何ですか?

山田 今年取り組む予定なのが,救急隊の外傷診療の実力アップを目指した学習会です。現在,すべての救急患者がまず診療所に運ばれてきているのですが,特に外傷患者では帯広の病院に直行したほうが早くてよいケースもあります。救急隊の実力が向上し私たち診療所や受入先の救急病院との間で共通の理解が得られれば,そういったケースの搬送もスムーズになるだろうということで,第1回目はカレスアライアンスから救急部長を呼んで開催し,その後1年間のプロジェクトを組んで取り組むことにしています。

 それから,村の保健・福祉を担う多職種が同じ視点,同じレベルで議論できるようなシステム作りですね。これによって,高齢者の包括評価や,ハイリスク高齢者の拾いあげを図っていきたいです。また,診療所に常勤のPTやOTの方に入ってもらうなどして,リハビリテーションを充実させていくことも課題です。この他にも,手をつけていきたいことはたくさんあります。

――では,最後に家庭医をめざしたい学生にむけたメッセージをお願いします。

山田 現場に出て,家庭医という存在は住民の皆さんから望まれているんだということを実感しています。家庭医療をやっていけることは間違いありません。現在,家庭医をめざそうと考えている学生のみなさんには,ぜひ自信を持って,この道に進んでいってほしいと思います。

――ありがとうございました。