医学界新聞

 

第10回家族性腫瘍研究会学術集会開催


 さる6月25-26日,第10回家族性腫瘍研究会学術集会が,数間恵子氏(東大大学院),岩間毅夫氏(杏雲堂病院)の両会長のもと,東京都文京区の東京大学鉄門記念講堂において開催された。「家族性腫瘍とともに生きる人々への支援」をテーマに行われた今回の学術集会では,公開シンポジウム「家族性腫瘍の人々への支援を探る――様々な立場から」が開催されるなど,ゲノム研究から患者家族へのカウンセリングまで,幅広い領域をフォローした議論が交わされた。

医療者・患者・家族をつなぐ

 公開シンポジウムは樋野興夫氏(順大),冨田尚裕氏(関西労災病院)の司会のもと行われた。

 シンポジストの1人として,基礎の立場から発言した樋野氏は,「家族性腫瘍といかに共生していくか」というテーマに基礎研究がどのように貢献できるのかについて,持論を述べた。樋野氏は,近年のゲノム研究の成果から,多くのがんについて標的療法が可能となりつつある,と述べた上で,「遺伝子に異常がある」ことと「病気が発症する」ことは別次元の問題であり,癌となって発現する際にはその病態は1人ひとり異なることを強調。家族性腫瘍にかかわる医療者には「がん哲学」が必要であると述べた。

 一方,レジストラーの立場から発言した首藤茂氏(野口病院)は,医師と患者の間を取り持つレジストラーの仕事を具体的に紹介。レジストラーの役割は,診療情報から遺伝疾患の可能性を吟味し,医師に報告・相談の上,患者本人,あるいは家族への説明,さらには予防的治療の相談をするなど,患者・家族と医師,看護師らの医療スタッフの間の連携をとることである。首藤氏は遺伝カウンセラーが少数ながら誕生しつつある今,職種はともかく,こうした役割を担う人の立場を認め,活用していってほしいと述べた。

 一方,遺伝疾患である家族性腫瘍においては,患者会などの横のつながりや,施設間の情報共有や協力体制が難しい。そんな中,「ハーモニー・ライフ」は,今年で発足6年目を迎え,シンポジウムの中でも,会員からの発言が見られた。

 家族性腫瘍研究会では,今後も学術集会の開催や遺伝カウンセラー養成のセミナーなどを適宜開催していく予定。最新の情報はホームページに掲載される。