医学界新聞

 

第29回日本精神科看護学会開催

情報開示のあり方を議論


 さる5月26-28日,第29回日本精神科看護学会が,秋田市の秋田県民会館において開催された。精神科領域においてはインフォームドコンセントが成立しない場合や,カルテの開示がためらわれる場合がある。こうした問題を踏まえ,今回の学会では「精神科看護における情報開示」をテーマに,精神科において患者の情報をどう扱うべきか,議論が行われた。

 基調講演に登壇した坂田三允氏(日本精神科看護技術協会第一副会長)は,患者がカルテ開示を求める理由として「自分の病状,病名について納得のいく説明がない」,「自分の訴えが治療に反映されているかを知りたい」という意見が多いことを紹介。「本当の意味でのインフォームドコンセントがなされているのか,もう一度考え直す必要があるのではないか」と問題提起する一方で「情報がありさえすれば患者や家族が幸せになるわけではなく,患者の側には医療の限界や不確実性を理解し,見たくないものに立ち向かう勇気が求められる」と述べ,情報開示には医療者と患者,双方の努力が必要なことを強調した。

カルテはどこまで開示できるか

 シンポジウム「情報開示とインフォームドコンセントの現状と課題」(座長=聖路加看護大 萱間真美氏,久盛会秋田緑ヶ丘病院 工藤正志氏)では,統合失調症の当事者が,急性期であっても処方される薬や処置についてインフォームドコンセントが必要なのではないかと提言した。

 また,樫尾わかな氏(東京リベルテ法律事務所)は「精神障害がある=判断能力がない」というのは誤りであると指摘。患者の同意なく医療行為を行うことが認められるケースとして「緊急な処置が必要」,「他人への危険を回避する」場合をあげた。

 田中富美子氏(敬愛会尾花沢病院)は「地域への情報開示」という視点から精神疾患を持つ患者の,社会とのかかわりについて尾花沢病院での取り組みを紹介。グループホーム設立の際に近隣住民との説明会の場を設けたことが,相互理解に有意義であったことを述べた。

 口演後のディスカッションでは「家族や近所から得た患者の情報が載ったカルテを開示してもよいのか?」という質問があり,樫尾氏は「最初から開示されることを前提に話を聞くべきで,『部分開示』という方向で話を進めるべきではない」と回答。また君島氏も「“あの時に自分が何をしたのか”,“周囲からどう思われていたのか”ということは非常に興味がある反面怖くもあるが,自分を知るうえでは必要なことだと思う」とカルテ開示への期待を述べた。