第2589号 2004年6月21日


寄稿

マッチングサバイバルマニュアル

田村雄一(三井記念病院研修医)


 マッチングの登録も開始され,いよいよ6年生の皆さんはマッチングの季節が到来したと戦々恐々とされていることと思います。いざ準備をはじめてみると,病院見学で重要なことは? とか,就職試験の面接はどうすればいいのか? など,さまざまな疑問や不安が現れてくることでしょう。マッチング初年度であった自分自身や周囲の経験談をふまえ,特に疑問になりやすいことに関して少し書かせていただきました。

病院見学のコツ

 病院見学に行った際に何を心がければよいか。まずは,1分1秒でも多く研修医と話す時間を作ってもらえるよう心がけてください。そうすることで,この病院で研修した際に自分は何をどこまでできるようになるのか,という具体的なイメージが描けるようになります。いくら病院の設備が整っていても,それを活かす機会が研修医に与えられていない病院では,その設備もあなたにとってはまったく無意味になってしまいます。ただし,忙しい研修医に長い時間をとってもらうことは難しいでしょうから,昼食の時間などを利用して,積極的に研修内容や生活環境(これは研修医に聞かなければ決してわかりません!)を聞き出せればよいと思います。

 また,もし研修医用の居室や机などが用意されている病院であれば,そこを見せてもらえるようお願いするとよいでしょう。そこにおいてある本の内容で研修内容が評価できるわけではありませんが,現在研修医が勉強しなければならない事柄を把握すれば,それが自分の考える研修スタイルにマッチするかどうかを推し量ることができるでしょう。

採用願書をどう書く?

 病院の採用試験に応募する場合に頭を悩ますのが,どのようなものを出せばよいかということです。疑問に思いがちな2つのポイントに絞って解説します。

・履歴書
 病院によっては規定の用紙に記入させるところもあります。が,自分で履歴書を調達し,それに記入して送るというスタイルをとる病院も数多いです。その際に重要なのは「いかに履歴書の中に自分を書きこむか」ということです。

 当然のことながら,病院側は採用する医学生のパーソナリティを非常に重視します。しかし採用側にとっても,それを把握する機会は病院実習と採用試験の間の限られた面接時間のみです。もちろん病院実習を必須にして,その期間じっくり学生を評価するという病院もありますが,多くの場合は面接の数分間が勝負です。その際に履歴書は「自分がどういう人間か」ということを理解してもらううえで非常に力強いツールになるのです。

 したがって履歴書の自己PRの欄(学生生活についてなどと書いてある場合もあります)には箇条書きでも構わないので,自分が学生時代に熱心に取り組んで来たこと,初期研修での目標,将来自分がめざすところなどを書いておくとよいでしょう。面接官はそれに沿った質問を(最低でも1回は)してくれるはずです。また履歴書の用紙は,手に入るのであればJIS規格(いわゆる普通の履歴書)のものではなく,大学生協などで扱っている大学生の就職活動用のもの(学生活動や自己PRの欄が大きい,いわゆる企業のエントリーシートのようなもの)を利用した方がよいでしょう。

・推薦状
 採用試験に関して推薦状を必須とするところは,それほど多くありません。ただ,そういった病院に応募する場合(もしくは要求されなくても推薦状を添付した場合)に気をつけることは,「○○君を推薦する」のような文言だけの推薦状は意味をなさないということです。これでは在学証明書と大差ありません。やはり推薦状も,短時間で自分を知ってもらうためのツールとして活用するべきです。

 では具体的にどのようにするかというと,まず部活のOBなど,平素から自分のことを知ってくれている先生に推薦状をお願いします。しかし米国のように,学生時代の評価をもとにしっかりした推薦状を書くというシステムがあるわけではないですから,必然的に世の中の多くでなされているように「推薦状を自分で書く」ということになります。ただしあくまで推薦者があなたについて書いたものですので,内容は客観的な記述にとどめつつ,かつ履歴書で書いたような自分が学生時代に積み重ねてきたことを踏まえて,「△△という理由でこの人物は貴病院での研修を受けるに相応しい人物である」というように記載します。そして推薦者となっていただく先生の校正を受ければ,自分を強くアピールする力のある推薦状が完成するでしょう。

面接で注目されるのは知識量ではなく「人となり」

 面接において面接官が最も注目しているのは,学生の知識量ではなく,その人となりです。病院側にとっては,採用者には来年以降賃金を支払って働いてもらうわけですから,医療現場という職場でうまくやっていけるか,自分たちの職場環境になじめそうな人物かということを非常に重視します。逆に皆さんも来年以降,自分の時間の多くをその職場で過ごすことになるのですから,自分のキャラクターと合わない病院で働くということはものすごいストレスになるでしょう。ですから自分のキャラクターを偽らずに,素直に面接を受けることが大切です(そこで嘘をついてもいつか必ず自分に不利な形でかえって来るでしょう)。

 また,面接で必ず聞かれるのが志望動機ですが,この時に履歴書や推薦状が役に立ってきます。今度は自分がやってきたこと(これまでの自分)と,自分の将来の展望(これからの自分)が,この病院で研修を受けることでどのように繋がるのかというストーリーを意識して話すようにするとよいでしょう。すると面接官にも「うちの病院をこういう風に捉えて,希望しているのだな」と納得して貰え,印象にも残るのです。ただ一方的に「自分はこうしたい」というのを伝えるだけでは,「なぜうちの病院に?」という質問に答えたことにならないので注意してください。

あなたにぴったりな病院は

 ここまで,マッチングに際しての比較的テクニカルな事柄に関して書かせていただきました。多少なりとも疑問が解決すれば幸いです。

 ただこれを読む皆さんに理解していただきたいのは,マッチングとは「自分の将来像と研修プログラムをマッチさせる」ものでもあるということです。初期研修を受けた後に,自分がどのような専門性(generalistでさえ立派なひとつの専門性です)を備えていきたいと考えているか,そして自分が受ける初期研修は,それにどのようにつながっていくのかということを最も重視するようにしてください。

 誰にとっても最高というような研修プログラムは存在しません。逆に,少なくとも自分だけにはぴったりな研修プログラムを捜していくことこそが,マッチングにおける就職活動の本質であると言えるでしょう。世間で言われる「勝ち組・負け組」,すなわち自分のマッチ先がよかったどうかは,マッチデーに決まるのではなく,2年後ひいては数年後にようやく評価できるものとなるでしょう。そのことを心がければ,きっと自分のプランに合致したプログラムにマッチできるのではないかと思います。皆さんの健闘を心からお祈り申し上げます。


田村雄一氏
2004年慶大卒。三井記念病院研修医。在学中は心筋細胞の再生医学研究に携わる一方,ACLS講習会を開催したり(本紙第2570号参照),ケーススタディや医学論文の抄読会を主宰するなど,医学と医療をより幅広くとらえられるよう活動を行う。現在は臨床研修必修化の第1期生として研修を行っている。